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エゴグラム   3つの私について知る心理検査

エゴグラム   3つの私について知る心理検査

【目次】
こころの中にいる3つの私
3つの内、1つが強く表れる
エゴグラム 心の中の私を測る心理検査
おわりに

はじめに

 あらたまこころのクリニックでは、患者様が自分の考え方や人とのお付き合いでのクセを知って、自分の治療の進め方、設計図やどんな治療法が役立つのか?などの治療方針を決めるために心理検査を実施しています。

目的は様々で、

①症状の有無を調べる

②症状の程度を調べる

③患者様の人となりを調べる

④患者様の認知機能を調べる などなど。

 患者様が自分の強みと苦手を知ることで、ご自分で、工夫しながら、前よりも楽に暮らしていける

ようになることを目的に、その方の状態に合わせた検査を医師や心理士が選んで実施しています。

 今回はその中の一つであるエゴグラムについてお伝えします。

エゴグラムは、その人の対人パターンを知る簡便な検査です。

「自分はいつも、人と関わるとき、同じ失敗を繰り返してしまう」と思ったら、自分のパターンやどのポイントでつまづくのか?を知ることが、今後の治療の重要な手がかりになります。

対人パターンを調べる検査にもいろいろあり、見ていくポイントはそれぞれです。

 エゴグラムで心の中にいる3つの私について調べていきます。

まずは、その3つの私についてお伝えします。

心の中にいる3つの私

3つの私

 人は状況に合わせていろんな顔を持っていることは、皆様ご存じの通りだと思います。例えば、会社では頼れる上司の一方で、家では妻に甘えている男性。例えば、皆にかわいがられている妹キャラの女性が家に帰ると家のことを取り仕切る一番のしっかり者だった、などなど。それは、状況によって出てくる私が違うからです。

 エゴグラムでは、誰でも心の中に3つの私を持つと考えています。

その3つとは、P親ParentA大人AdultC子どもChildです。それぞれご説明していきます。

P  親役をする私

 親の役をするな考えや行動をする私です。父性的な私と母性的な私がいます。幼少期から周りの大人を見る中で身につけてきた、価値観や倫理観の部分と言えます。命令(~しなさい、~してはいけません)や援助(~してあげる、~しましょうか)など、親が子供に接するときのような状況で表れてくる私です。

父性的な私 CP

 批判や厳しさなど、父性的な面を司ります。倫理観、責任感、リーダーシップなどとして現れます。一方で、頑固、融通が利かないなどの面があります。

母性的なわたし NP

 献身や保護など、母性的な面を司ります。やさしさや思いやりなどとして現れます。一方で、おせっかいや過保護といった面があります。

A 大人の私

 客観的・理論歴にに判断・認識する私です。Aは人が社会で生きていくためにとても重要です。

自分をコントロールし、感情に流されず、冷静に行動できるのは、この私がいるからです。

一方で、冷たくてドライで親密な関係を築きにくい面もあります。

C 子供のような私

 私たちの童心の部分です。天真爛漫な私と従順でいい子な私がいます。

生活の中でふと出てくる子供の部分、レクリエーションで羽目を外して思いっきり楽しんだり、恋人の前で甘えん坊だったりする、そういった時に現れているのが、この私です。

天真爛漫な私 FC

 自由さや積極性や創造性の部分です。一方で無責任、衝動的、ガマンができないといった面もあります。

従順でいい子な私 AC

 相手の顔色や周りの雰囲気に合わせる素直さや協調性の部分です。強すぎると、気にしすぎて、ガマンしてため込みすぎたり、

主体性がない面もあります。

3つのうち、1つが強く表れる

 私たちの行動や考えの背後には、先ほどの3つのうち、どれか一つが強く表れてきます。

例えば、公園で楽しそうに駆け回る子供たちを見ても、抱く感想は人それぞれです。

Pが強く出たら「前を見ては知らないと転んでしまうよ。心配だわ。」親のような保護的で評価的な視点

Aが強く出たら「走る速さに大きな差があるな、いずれあの子は追いつかれてしまうだろう」と冷静に理論的に分析する視点

 Cが強く出たら「楽しそうで、子どものころ思い出すなぁ。一緒に混ざりたいくらいだ。」子供のような心で直観的な反応

 となるでしょう。

このように、3つの私の中でどれが強まるかによって、行動や考えが方向づけられます。

このように、心の中にはP親A大人C子どもという3つの私がいて、私達はそれらを上手に使い分けてバランスをとっています。

 例えば、パーティーに参加して子どものように楽しみ、さりとてスピーチを求められたら大人の顔でそつなくこなし、連れてきた子供に対しては親の顔で面倒を見ます。

エゴグラム~“心の中のわたし”を測る心理検査

何が分かるの?

 このような3つの私を測る検査としてエゴグラムがあり、あらたまこころのクリニックでも使われています。

どの私をよく使っているかが分かります。それは、つまるところ、自分の対人関係のパターンに気づくことになります。

こんな結果が出ます

 様々な質問に「はい」「いいえ」「どちらでもない」で答えます。回答を集計して、点数化したものが下のグラフになります。平均値からの差が大きいほど、その特徴が際立っていることになります。

 重要なのは、得点の高い低い≠良し悪しということです。それぞれの尺度が見方によって長所になったり、短所になったりします。

何ができるの?

 そのような自分の特徴に気づくことができれば、自分の強みを生かす・自分の行動パターンを変えるなど、自分の特徴に対する取り組みを考えることができるのです。

次回は、エゴグラムの結果に対応した“あらたまこころのクリニックでの取り組み”をお伝えしますね。

おわりに

いかがでしたでしょうか?

 今回はあらたまこころのクリニックで行っているエゴグラムという心理検査についてご説明しました。

私たちの心には、P親A大人C子どもという3つの私がいて、それぞれの状況に合わせた私が現れてきます。

エゴグラムでは、どの私 をよく使っているか測定します。そして同じ失敗を繰り返すと思ったら、このパターンを見直してみると

役に立つかもしれません。

 次回は、エゴグラムから得られた結果と、あらたまこころのクリニックで行われている薬に頼り切らない治療との関係についてお伝えします。

関連する情報

監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。