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復職に向けて考え方の幅を広げよう

復職に向けて考え方の幅を広げよう

【目次】
考え方の“クセ(パターン)”とは?
考え方の幅を広げる練習 ~自分のパターンを知る~
今回のまとめ

はじめに

うつ病や不安障害の時は、症状に引きずられて、「きっとうまくいかない」と悲観的な考えになったり、「周りから嫌われている」と被害的に考えたり、「自分はダメな人間だ」と自責的になったりします。

うつ病や不安障害の症状が落ち着くと同時に、そのような考えもきれいになくなってくれればいいのですが、不眠や緊張や意欲の低下など体の症状は落ち着いても、考え方といった心の症状は「考え方や感じ方のクセ(パターン)」として残ってしまうことがあります。

また、もともとの「考え方のクセ(パターン)」が、発症ともに強まることもあります。

あらたまこころのクリニックに来院される患者様にも、そういった「考え方のクセ(パターン)」を自覚して、困っていらっしゃる方が多く見られます。

そこで、今回は、考え方の幅を広げる練習について解説していきたいと思います。

考え方のクセ(パターン)とは?

「自分の能力不足が原因だ」「自分は周りから嫌われている」「目立つようなことをしても、いいことはない」「また失敗したのかな」など、人には浮かんできやすい考え方があります。こと対人場面においては、ちょっとした相手の反応から、同じような考え方が繰り返し起こり、どんどん気持ちがつらくなっていくことがあります。特に、心の不調を抱えている時期はその傾向が強まります。これを、考え方のクセ(パターン)と呼ばせていただきます。

具体例を挙げて考えていきましょう。

人前で話すことが苦手な方が、30名程度の前でプレゼンすることになりました。このとき、どのようなことを考えるでしょうか?

「よし、頑張ろう」「自分のアピールをする絶好のチャンスだ」と考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、人前で話すことが苦手な方は、「変なことを言ったらどうしよう」「つまらないと思われてしまうかもしれない」と考える方の方が多いかもしれませんね。

そう考えることで、入念に準備をして、本番では見事にプレゼンを成し遂げるのであれば、それは役に立つ考え方です。

しかし、本番中も「変なことを言ったらどうしよう」「つまらないと思われてしまうかもしれない」といった考えにとらわれて、身体が震え、冷や汗をかき、身体がこわばり、頭が真っ白になって、うまく喋ることが出来なくなってしまうのなら、困ってしまいますね。

このように、考え方のクセ(パターン)によって、やるべきことができない、楽しみたいことが楽しめない、やりたいことができない場合には、何らかの対処が必要になってきます。

考え方の幅を広げる練習 ~自分のパターンを知る~

今回お伝えするのは、考え方の幅を広げる練習です。考え方の手数を増やしていくイメージでしょうか。

先ほどの例の場合、人前で話す際に「変なことを言ったらどうしよう」「つまらないと思われてしまうかもしれない」と、いつもの考えが浮かんできます。
その時に、「今までに一度も変なことを言ったことは無い」「つまらないと言われたことは無い」といった考えも一緒に浮かんでくるように練習するのです。
複数の考え方が浮かぶ(=考え方の幅が広がる)ようになれば、ネガティブな考えにとらわれて、辛くなったり、不安や緊張が強まったりすることが少なくなっていきます。

なぜ考え方の幅を広げるのか?

上の図をご覧ください。左は「Aという考え」しか浮かんでいない状態です。このような状態では、「Aという考え」に対応した体の反応が起こってきます。
先ほどの例でいえば、“「変なことを言ったらどうしよう」→緊張・震え・冷や汗など”となりますね。

しかし、右の図のように、Aだけでなく、BやCやD…といった考えからが浮かぶことが出来たらどうでしょうか?

それでも、体の反応が多少は起こってきますが、「Aという考え」しか浮かんでこなかったときに比べたらかなり軽減されているはずです。

ここで大切なことが一つあります。それは、A以外の考え方を自分に言い聞かせるわけではないということです。

AもBもCもDも…、いろんな考え方が同時に浮かんでくる状態を作っていくのです。一つの考えでコチコチになっていた頭を柔らかくするのです。

それは、一つの物事や状況に対して、いろんな見方や考え方をする練習をしていく中で自然と身についていきます

考え方の幅を広げる練習をしてみよう

さて、このような考え方の幅を広げるときに、最初に行っていくことがあります。

それは、自分の考え方のクセ(パターン)を知ることです。1週間の生活の中で、自分はどのような時に、どのような考え方のクセ(パターン)が出現するのか、振り返り見つけてみましょう。

先ほどの例を使うと、他にも、1対1でご飯を食べる時に、「手が震えてて変な人と思われるんじゃないか」という考え方が良く出てきました。電車で座っているときに目の前に人がいると、「ダサいと思われるんじゃないか」などの考え方も出てきました。

もしも、パターンが見つかれば、あとは専門的な訓練を行い、そのような状況で今までとは別の考え方も一緒に浮かんでくるようにしていきます

今回のまとめ

みなさんいかがでしょうか?今回は、復職対策の一環として、考え方の幅を広げる練習について解説をしました。考え方の幅を広げる練習を行う際には、自分の考え方のクセ(パターン)を振り返ることが大切です。 

また、すべての考え方のクセ(パターン)に対処する必要はありません。その考え方のクセ(パターン)によって、日常生活で困りごとが生じている際に、練習することが大切です。

解説することは簡単ですが、「難しそう」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。コラムを読んでいただき、ご興味がございましたら、お一人で悩まず、是非、医師にご相談ください。

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監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。