刺激コントロールと睡眠制限法
【目次】
刺激コントロール
睡眠制限法
集大成!睡眠スケジュールを作る
まとめ
はじめに
不眠への治療プログラムの第4弾です。刺激コントロールと睡眠制限法についてお伝えしていきます。今回が治療の山場、「眠れない癖」を「ぐっすり眠れる癖」に再学習していくプロセスです。
刺激コントロール
刺激コントロールのおさらい
刺激コントロール法では、前回お伝えした通り、以下の3つを忠実に実践していきます。
- 寝床では、睡眠以外の行為をしない
- 途中で15分以上目が覚めてしまったら、寝床を出て静かにリラックスして過ごす。
- 寝床に戻るのは眠くなった時だけ
これによって、「条件付け」を断つ方法でしたね。
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なぜ役に立つのかおさらい
刺激コントロールは、「条件付け」という理論がもとになっています。眠れないからと言って寝室で、本を読んだり、考え事をしたりしていると、寝床に「読書モード」や「考え事モード」が条件づけられてしまい、余計眠れなくなってしまいます。なので、寝床では寝る以外のことをせず、寝床に「睡眠モード」を条件づける必要があるのです。最終目標は、「寝床で横になったら自動的に眠くなるようにする事」です。
寝床を出た時の過ごし方
夜中に目が覚めた後に、寝床から出て、何をすればいいでしょうか。
もちろん、仕事や勉強など、自分を活動モードにする事はNGです。
基本的にはリラックスできて、静かに過ごせることなら何でもよいです。
ただし、ソファに寝そべるのはNGです。そのまま眠ってしまっては、ソファと睡眠が条件づけられてしまいます。つまり。脳が「寝床は、寝る場所ではない」と覚えてしまうのです。昼寝などは、本来、寝床での睡眠力を大きく奪ってしまいます。昼寝は夜の睡眠を3割も奪うという研究もあります。
眠くなったら、もう一度寝室に戻ります。寝室に戻ってもなかなか眠ることができなかった際は、また、別室に戻って、同じように過ごします。最初のうちは、寝床と別室を行ったり来たりすることになるかもしれません。これが、一番つらい。でも、ご安心ください。プログラムを進めるうちに効果が表れて、その回数は必ず減っていきます。
睡眠制限法
睡眠制限法のおさらい
睡眠制限法では以下の4つを忠実に実践していきます。
- 寝床の中にいる時間を決める(平均睡眠時間+30分)
- 起床時間を決める
- 1と2から逆算して寝床に入る時間を決める
- 睡眠効率が85%以上になったら、入床時間を30分早める
これによって、「寝床に長時間いる事」を断つ方法でしたね。
なぜ役に立つのかおさらい
この際、入床時間前に眠くなったとしても、絶対に寝床に入ってはいけません。疲れ(眠気)を貯めて、入床時間になったらすぐに、深い睡眠に入れるようにします。また、入床・起床時間をきっちり決めることで、生体リズムが整い、決まった時間に自然と眠くなるようにします。
時間設定のポイント
平均睡眠時間+30分だと、普段より入床時間が遅くなる人が多いと思います。でも、それでよいのです。寝床にいて、眠れず過ごすよりは、眠らずに疲れ(眠気)を貯めて、寝床に入ったらすぐに眠ってしまったほうが良いのです。
入床時間より先に、起床時間を決めるのは、「入眠はコントロールできない」ですが「目覚めはコントロールできる」からです。
睡眠効率が85%を超えた時は、起床時間を30分伸ばすのではなく、入床時間を30分早めます。
集大成!睡眠スケジュールを作る
睡眠日誌のデータと、刺激コントロール・睡眠制限法の手順をもとにして、睡眠スケジュール(床に入ってから起きるまでの過ごし方)を作っていきます。今まで学んできたことの集大成です。ではやってみましょう!
入床時間と起床時間を決める(睡眠日誌)
ここで、睡眠日誌のデータが活きます。
- まず、「実際に眠っている時間の合計」に30分足して、「寝床の中で過ごす時間」を決めます。
- 次に、「起床時間」を決めます。
- そして、「起床時間」から、「寝床の中で過ごす時間」を引いて、「入床時間」を決めます。
夜中に目が覚めた時の過ごし方(睡眠制限法・刺激コントロール)
ここが、睡眠制限法・刺激コントロールのパートです。夜中の過ごし方についてのルールになります。
- まず、「入床時間」になるまで、絶対に寝床に入ってはいけません
- 「入床時間」になったらいったん寝床に入り、「起床時間」にアラームをセットします。
- 寝床では、眠る以外のことはしません。寝室は暗く静かに保ちます。
- 入床して15分経っても眠れなければ、別の部屋で静かにリラックスできるようなことをして過ごし、眠くなったらまた寝室に戻ります。
- 眠れなかったり、起きたりしたときは、同じことを繰り返します。
入床時間時間の再設定
- 1週間の睡眠効率が85%以上なら、次の週は寝床に入る時間を30分早めます。
そのほか、決まり事
二度寝はしない。起床時間には必ず寝床を離れる。
夜中に目が覚めても、時間の確認は一切見ない。
昼寝は絶対しない。
平日・休日問わず毎日続ける。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、刺激コントロールと睡眠制限法についてお伝えし、今までのお話の集大成として、睡眠スケジュールの作り方をご説明しました。
毎日、記録をつけ、睡眠スケジュールに沿って過ごして行くうちに、眠っていられる時間が徐々に増えていきます。そして、寝床に入る時間を徐々に早めていき、希望する時間の間、眠って過ごせるようになり、日中も元気に活動できるようになります。
なお、この記事を読むだけで、自分で不眠の治療を完遂できる人は少ないかと思います。あらたまこころのクリニックでは、心や体の病気が原因でない不眠症の患者様(もしくは、心の病気がよくなったのに不眠症だけが残っている患者様)に対して、スタッフがついてこのプログラムを実施しています。
関心のある方は、一度、医師にご相談ください。
関連する情報
監修
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【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。
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