あらたまこころのクリニック「治療法について」ページ

公開日: |更新日: 社交不安障害専門療法

あがり症・社交不安障害の治療の仕上げ 行動実験

あがり症・社交不安障害の治療の仕上げ 行動実験

【目次】
はじめに

行動実験の重要性をもう一度、強調します
まとめ

はじめに

 今回は、あがり症、社交不安障害、社会不安障害の治療についての後編をお届けします。あがり症・社交不安障害の治療の仕上げです。

前回は(あがり症・社交不安障害の治療の下ごしらえ)、あがり症、社交不安障害の裏にある、「人が好きで、認められたい気持ち」や「誠実さ、やさしさ、まじめさ」についてお伝えしました。

 そのような強みを生かした人生を送っていくためには、「行動実験」を日々の生活の中で繰り返すことが大切です。

今回の後編では、行動実験について、詳しく・わかりやすくお伝えしていきます。

行動実験の重要性をもう一度、強調します。

 あがり症、社交不安障害の治療のポイントは「他人は自分が予想したほどには,悪く思っていない」ことを行動実験で確認することを繰り返していきます

自分だけで行動実験するのは難しいのですが、プログラムの手順通りにやっていけば、治療進んでいきます。が、どうしても乗り越えないといけない壁があります。

それは、安全保障行動自己注目(自意識過剰)バリアです。

上の図をご覧ください。

「震えている」「ドキドキしている」「顔が赤くなっている」(自己注目、自意識過剰)と自分の状態に敏感になり、「こぶしを強く握る」「うつむいて表情を隠す」「声が小さい」などして震えや緊張を見せまいと振舞います(安全保障行動)。その結果、周りの状況に意識が向けることができなくなります。これが安全保障行動と自己注目のバリアです。

 バリアの外の現実には気が付きません。でも本当は上の図のように、周りからの暖かいまなざしを向けられているかもしれないのです

周りの人の表情などを見ずに、「きっと周りの人は,こんな、しどろもどろになっている自分を馬鹿にしているだろう」とますますその場にいるのがつらくなります。自分の頭の中で惨めな自己イメージを作ってしまっているのです)

行動実験をしてみると

上の図をご覧ください。

 あがり症、社交不安障害のグループ認知行動療法を継続していくことで、安全保障行動+自己注目のバリアが外れ、自分の体(震え・赤面・汗)や自分の頭の中(挙動不審にみられる・頭が真っ白)に過度に意識が集中することを軽くします

 そして、プレゼンや周囲の反応に意識を向ける余裕が出て、周りが実は好意的な表情でプレゼンを聞いていることにも気付くことができています。

ある患者さんは,「本当は晴れているのに、自分では台風が来ていると思って,家の雨戸を閉めて家の中にこもっているようなものだ」と話されていました。
「人気アニメ新世紀エヴァン●●の、ATフィールドのようなものだ(注 ATフィールドは人間ならば誰しもが持つ「心の壁」)。」とおっしゃる患者さんもいました。治療が進むと「イヤー、今までのプレゼンでは、汗も出たり緊張しました。ATフィールド全開でした。でも、今度のプレゼンは自己注目と安全保障行動をしないようにしたら、けっこうできました周りの人を見たら皆笑っていたし、そんなに悪くなかったようです」と。バリアを解いて周りの人を観察することができていました。これを繰り返していけば改善します

 このように、行動実験を繰り返すことで、頭の中での周りの反応(挙動不審だと見られた、プレゼンもできない無能だと思われる)と現実の周りの反応(よく頑張っているね・ちゃんとできているね)のギャップに気付いていきます

そうすることで、バリア(ATフィールド)がさらに外れていきます。

まとめ

 いかがでしたでしょうか? この後編では、行動実験について詳しくお伝えしました。
行動実験は、あがり症、社交不安障害社交不安障害の集団認知行動療法の集大成ともいえるものです。
それまでの回で、社交不安障害の様々な要素(考え・自己注目・回避など)を一つ一つ解きほぐし、安全保障行動自己注目のバリア(ATフィールド)を突破していきます。
その状態で、苦手な場面にチャレンジし、頭の中の周りの反応と現実の周りの反応のギャップに気付いていきます。
 あがり症、社交不安障害社交不安障害の症状から解放され、「誠実さやまじめさやさしさ」などの自分らしい強みを生かして、より良い生活を送れるようになることを願っております。
 あがり症、社交不安障害社交不安障害のグループ認知行動療法にご興味がある方は、一度、医師にご相談ください。

関連する情報

監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。