うつ病のケースで学ぶ!薬に頼り切らない治療。
【目次】
会社員Aさんが“うつ病”と診断されるまで
薬を最後には止めたい!“薬に頼り切らない治療”の選択と実践
職場へ戻ってから
今回のまとめ
はじめに
あらたまこころのクリニックでは、うつ病の患者様に対して“薬に頼り切らない治療”を専門的に実施しています(うつ病に関しては、当院のホームページやコラムをご参照ください。)。
患者様の中には「うつ病に対する“薬に頼り切らない治療”といっても、具体的に何をするんだ!?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、今回は、会社員をモデルとした架空のうつ病のケースを用いて、具体的に“薬に頼り切らない治療”について、解説していきます。
会社員Aさんが“うつ病”と診断されるまで
架空ケースのAさんは、働き盛りの30代。
勤続10年目、部下もでき、仕事のまとめ役を任されるようになりました。順調に仕事を進めていたAさんですが、徐々に体調に異変が現れるようになりました。その理由は、業務量と人間関係です。
もともと仕事をきっちりこなすタイプのAさんは、「○○の仕事は部下に任せると負担だ。自分でやろう」「本当は頼みたいけど、部下も忙しそうだ…」「仕事が、いっぱいいっぱいだけれども、上司の期待にこたえなければならない」と考え、大量の仕事を一人で抱え込むようになりました。
残業時間が増え、家でも仕事のことを考える日々。週末も仕事に追われ、仕事が片付いたら後は寝るだけ。家族と会話をする時間、息抜きをする時間、趣味を楽しむ時間が失われていきました。
そのうちに、夜何度も目が覚めるようになり、自宅でもボーとしている時間が増えました。
異変を感じた妻が心配しましたが、「家族に心配をかけてはいけない。夫としてしっかりしなきゃ」とAさんは考え、「大丈夫」と返答しました。
会社に出勤するも、集中力が続かず、今までできていた仕事上の判断もできなくなってきました。見かねた上司から自社の産業医への面談を指示され、面談したところ、医療機関の受診を強く勧められました。
薬を最後には止めたい!“薬に頼り切らない治療”の選択と実践
不安な気持ちになりつつも、心療内科を受診しました。医師からは“うつ病”と診断を受け、一定期間の休養(可能であれば休職)、薬物療法を勧められました。薬に対して良いイメージが無かったAさんは、勇気を出して医師にその旨を伝えたところ、“薬に頼り切らない治療”について説明を受けました。
その内容とは、
①うつ病には、薬が効くタイプと効かないタイプのものがあるということ。
②現在はかなり症状が強く出ている状態なので、治療の初期は症状を和らげるために、薬の治療を行うこと。
③そして、同時に専門スタッフと一緒に自分で症状を克服する方法を身に付けていくこと。
④ただし、自分で症状を克服する方法を身に付けるには時間がかかり、自分で練習していくことが重要であること。
⑤一度、身に付ければ再発のリスクを下げることもできること、などでした。
定期的に通院することは大変だけれども、それ以上に再発のリスクを少しでも下げ、薬に依存せず、通常の生活へ戻りたいと考えたAさんは家族と相談し、“薬に頼り切らない治療”を選択しました。
専門のスタッフと自分の苦しかった時の状況を整理していく中で、
「人の期待を裏切ってはいけない」
職場では「まとめ役としてしっかりしなければならない」
家では「夫として毅然としていなければならない」
という考えが自然と出てきやすく、そうなれるように努力してきたものの、結果的に自分が辛くなっているという悪循環を見つけることができました。
そこで、自分で克服する方法として、“考え方の幅を広げる訓練”や“人に物事を頼む訓練”を繰り返し行いました。
職場へ戻ってから
症状がやわらぎ、生活リズムも整い、考え方の幅を広げる方法や人に物事を頼む方法を身に着けたAさんは、いよいよ復職することとなりました。
医師や専門のスタッフから【職場へ戻ってからが本番】と言われていたので、学んだことを実践し、“しっかりしなければ”と考えて無理をしたり、一人で仕事を抱え込んだりしないように注意しました。
自分の体調にも、気を遣うようになりました。
まだ“人の期待を裏切ってはいけない”“仕事のまとめ役として”と言った考えが出現し、仕事を抱え込むことがたまには起こりますが、依然と比べると仕事を部下や上司へお願いすることが出来るようになりました。
今回のまとめ
みなさんいかがでしょうか?今回はうつ病に対する“薬に頼り切らない治療”について、架空の会社員のケースを用いて解説しました。ここでご紹介したのは、あくまで一例です。実際には、お一人お一人のお困りごとは異なります。コラムを通して“薬に頼り切らない治療”へご関心を持った方は、まずは医師にご相談いただくことをおすすめします。
(上記のような治療を実施するかどうかは、医学的な見地から、医師が判断いたします。病気の種類やその方の生活状況などによっては、実施が難しい場合もございます。あらかじめご了承ください。)
関連する情報
監修
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【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。
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