行動活性化療法の講演を聞いてきました
行動活性化療法の講演を聞いてきました
平成27年11月28日(土) 東海地区Depressionフォーラム
(ウェスティンナゴヤキャッスルにて)
「価値の明確化を取り入れた行動活性化療法」
名古屋市立大学大学院 医学研究科 精神・認知・行動医学分野 助教 小川成 先生
うつ病に対し、効果が確立されている治療法の1つに行動活性化療法があります。今回の講演では、この行動活性化療法に、「価値」の観点が導入されており、研究が進んでいるというお話でした。
この「価値」とは、人がそれぞれ重要と考える人生の領域のことで、価値の目指す方向に沿った行動をとることで気分が良くなったり、元気が出て、うつ病の改善につながると考えられます。
しかし、私たちは普段、なかなか自分の価値について考える機会は多くないものです。価値について考えたり言葉にしてみることで、“やってみよう”と思えるということもあります。
この「価値」という概念は、どんな治療でも非常に大切な概念ですが、最近では、アクセプタンス・コミットメント・セラピー(ACT)の中で非常に重要視され、注目されています。
このアクセプタンス・コミットメント・セラピーは、行動分析学に基づく治療方で、新世代の認知行動療法の1つともいわれています。
「アクセプタンス」とは、思考、身体感覚、感情など、「今、ここ」で体験しているものを、良い悪いなどの判断を介さず受け入れることをいいます。また、「コミットメント」とは、自分の「価値」に沿った行動をすることをいいます。
うつ病や不安障害が続くと、いろんな症状に悩まされます。いろんな思考が頭に浮かび、時には過去のことをぐるぐる考えたり、将来について悲観的になり、考え込んでしまうこともあります。また、不快な身体感覚や感情が続き、つらくなってしまうこともあります。
こうした症状により、本来やりたいこと、やるべきことに手がつかず、余計に自分に自信がなくなってしまう(自己肯定感が持てない)という悪循環に陥ってしまうことが、うつ病や不安障害の維持につながってしまうことがあるのです。
アクセプタンス・コミットメント・セラピーでは、こうした苦痛と戦うことを一旦手放し、良い悪いの判断をせずに、「今、ここ」で自分が体験していることを感じ、受け止め、そして自分自身の「価値」に沿った行動を増やしていくことを目指します。
この「価値」を明確化することは、アクセプタンス・コミットメント・セラピーで大切なことなのです。
講演では、社交不安障害の方の症例もご紹介いただき、「価値」を取り入れた治療について学ぶ非常に貴重な機会となりました。
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監修
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【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。
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