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薬物療法の勉強会を行いました

薬物療法の勉強会

薬物療法の勉強会

平成26年12月3日(水)に、睡眠薬の新薬「スボレキサント」の説明を、製薬会社のMRの方からお聞きしました。
院長・スタッフが参加し、従来の薬との違いを学びました。

私たちの眠りは、「覚醒」と「睡眠」の2つのモードの切り替えによってコントロールされています。
その切り替えは、脳幹にある「覚醒システム」と、視床下部視索前野にある「睡眠システム」が関わっています。

睡眠システムに関与しているのは、GABAという脳内に最も広く分布している神経伝達物質です。従来の睡眠薬は、ベンゾジアゼピン系というGABAに作用するもの、つまり、「睡眠システム」に影響をする薬です。

しかし、この薬による眠りは、睡眠に関する機能だけでなく、筋緊張、記憶、運動能力などの機能も下げ、脳全体を鎮静させることでもたらされていました。そのため、翌日に影響する副作用が課題になっていました。

また依存が生じることや、服薬中断後にリバウンドの不眠が出現する(反跳性不眠)可能性もあるなどの問題点もあり、当院ではいつも処方には注意しています。

オレキシンによる覚醒と睡眠の制御

オレキシンによる覚醒と睡眠の制御

今回説明をお聞きしたスボレキサントは、「覚醒システム」のみを抑制する、という効果を持った薬ということです。

「覚醒システム」には、「オレキシン」という覚醒を促進する神経伝達物質が大きく関わっています。覚醒時には脳内に多く分泌され、覚醒システムを活性化させます。

スボレキサイトは、オレキシンの脳内への取り込みを阻害する作用があります。これにより、オレキシンによる覚醒システムの活性化を抑え、脳全体を鎮静化させることなく覚醒から睡眠へと切り替わり、生理的な睡眠に近い効果を得ることができる、ということでした。

睡眠薬の処方における、新しい選択肢が増えたことになります。まだ発売して間もない新薬であるため、すぐに飛びつかず、周囲の評価を参考にしながら慎重に処方を検討して行きます。

当院では、「薬だけに頼らない治療」を理念としています。しかし、それは薬を全く使わないと言うことではありません。

薬物療法の有効性を理解し、患者様の治療の役立つような、適切、最小限、依存になりにくい薬の処方を行うよう努力しております。
このような勉強の機会を大切にし、薬について最新の情報を集めて行きたいと存じます。

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監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。