復職するにはどうしたらいいの?
〈Aさん(40代・男性)の場合〉
Aさんは主任に昇進した頃から仕事量が増え、残業や休日出勤することが多くなりました。また、部下のミスを上司から怒られることもたびたびあり、気分が落ち込み、眠れない日も。それでも何とか仕事をこなしていましたが、徐々に朝起きられないようになり、仕事に行けない日が出てきました。
「何だかおかしいな」と感じたAさん、産業医に相談したところ、「うつ病」と診断され、1ヶ月休職するよう言われました。2週間ほど休むと体調が回復したので、会社に連絡して復職することになりましたが、仕事に戻ると気分が落ち込み、やる気が出ず、結局仕事に行けなくなってしまいました。
その後Aさんは休職と復職を2回繰り返しましたが、段々症状が悪くなってきたため、再び休職して当院を受診し、デイケアに参加しながらリワークプログラムを受けることになりました。
プログラム参加当初は職場復帰への焦りが強く、「早く仕事に復帰したい」と医師やスタッフに訴えることがありましたが、デイケアで過ごしていく中で、他のリワークプログラム参加者から「自分も焦って復帰しようと思ったけどうまくいかなかったことがある」、「うつ病を克服しようとして頑張っていたら余計状態が悪くなった。
今は自分と向き合って、時間をかけて治療に取り組んでいる」といった体験談を聞くことで、焦らず時間をかけて治療に取り組む重要性に気づき、半年ほどリワークプログラムを受けた後復職されました。
「今思うと、少し休んで体調が良くなったことを『治った』と勘違いしていた。うつ病で休むなんて意志が弱いからだとばかり思っていたが、色んな悩みを誰にも話せず抱え込んでしまってパンクしてしまったんですね」とAさんは過去を振り返っていました。
休職してから一人で頑張ってうつ病を克服して職場復帰をするというのは、とても難しい作業です。うつ病になった事実を受け止め、同じ悩みを抱えた方と一緒に復職に向けての治療に取り組むことが、回復への早道になります。
また、復職は「ゴール」ではなく「スタート」です。復職した後、再発せずに安定して仕事を続けていくことが一番の目標です。少し時間をかけてこれまでの自分を振り返ることが、再発の予防にもつながってきます。
復職支援のページ
https://www.mentalclinic.com/program/
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監修
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【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。
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