社交不安障害(あがり症)
SOCIAL ANXIETY DISORDERSOCIAL ANXIETY DISORDER
人前での緊張・震え・発汗などが
極度に不安になり
その場面を避け、つらくなる病気です
社交不安障害は、人前で過剰に緊張したり不安になり、その後一人になってもつらい体験を思い出して悩んでしまうこと(反すう)で、また同じような場面に遭遇することを避けたり苦痛に感じます。日本では、人口全体の1.4%(男性1.7%・女性1.0%)にみられる病気です。
以前は「内向的」「恥ずかしがり」「自意識過剰」などと性格的な問題として考えられており、多くの方は長年治療を受けず一人で耐え忍んで悩んでいる人が多いのも、社交不安障害の特徴です。通常の「あがる」とは、まったく違い、社交不安障害が重度になると、不登校や引きこもりがちになったり、不安で会社を休んだり職場に復帰してもまた休んでしまうということを繰り返すことがあります。
社交不安障害は、パニック障害や双極性障害、不眠、適応障害、うつ病、アルコール依存症、摂食障害、非定型うつ病、高齢者のうつ病、発達障害などが合併することがあるため、自覚症状がある場合や、家族や周囲の人が気づいた場合は、早期に専門的な治療を受けることが大切です。
社交不安障害(あがり症)の流れ FLOW
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01
発症
学校や会社で恥ずかしい思いをし、トラウマとなって発症
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02
回避
「内向的」「恥ずかしがり」など、性格的な問題と判断してしのぐ
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03
再発
人付き合い、就職、プレゼンなどの緊張する場で発症
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04
反すう
終わった後になってショックで落ち込んだり自分を責める
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05
不安
次も同じことが起きるのではないかと不安と苦痛が増大
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06
回避
苦痛から人とコミュニケーションを取ることを避ける
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07
不安増大
さらに不安とつらさが大きくなる
こんなお悩み
ありませんか?
次のような症状は、
社交不安障害(あがり症)の
可能性があります
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人前で話すと緊張で手が震えて、頭が真っ白になる
注目されると、緊張して顔が赤くなったり発汗する
人前で電話をかけるときに恐怖を感じる
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人前で食事をすることに恐怖を感じる
人前で文字を書くときに緊張して手が震える
知らない人は平気だが、知人と話すことが苦痛
当院での治療法 -TREATMENT-
社交不安障害には、スピーチ恐怖や視線恐怖、震え恐怖、赤面恐怖、嘔吐恐怖など、様々な症状のタイプがあり、重症度によっても治療が異なるため最初の診断が重要です。また、うつ病やパニック障害、アルコール依存症、発達障害、双極性障害などの合併症の有無も、しっかりと見極める必要があります。
当院では、薬物療法と精神療法を組み合わせながら、最大限の効果と最小限の投薬量を目指し、再発リスクの少ない治療を行います。治療を行うことで、「相手は自分が思っているほど自分のことを悪く思っていない」と確かめて気づき、人前で失敗しても良いと思えることで、諦めていた社交を楽しめることを目指します。
当院には、同じ社交不安障害(あがり症)の悩みを持つ患者様が集まるグループ療法があり、2006年から500人以上の方が参加され、多くの方が回復しています。薬に頼らず、再発も少ないとされる認知行動療法やマインドフルネス、アサーションなどの治療法をもとに、社交不安障害(あがり症)に特化したプログラムを同じ悩みを抱えた仲間と一緒に実践・体験することは非常に心強く、高い治療効果があります。患者様一人ひとりに役立つ最適なプログラムを組み合わせて、治療をお勧めしています。
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薬物療法
薬物療法
当院の薬物療法では、SSRIを主として治療します。注意点としては、社交不安障害は、アルコールや処方薬に依存しやすい傾向があります。人前で緊張したりあがったりすることがつらいため、安定剤を処方してもらい、お守りとして持ち歩いたり服用される方が多くいますが、お守り薬に依存している状態では社交不安障害は治りません。
当院では、薬物療法と精神療法を組み合わせながら、お守り薬などを必要としない薬物療法を実践していきます。 -
精神療法
精神療法
当院では、社交不安障害に特化した、専門の治療プログラムを提案しています。社交不安障害の認知行動療法では、まず病気や症状について理解を深め、不安な場面やその時の安全行動や回避の悪循環を整理します。その後、自分の不安な様子に向いてしまいがちな意識を周りに転換する練習を行い、考え方の幅を広げ、段階的に苦手な場面に取り組む行動実験を続けて回復に進みます。
詳しくは「認知行動療法とは」をご覧ください。
ご家族・周囲の方へ -FAMILY-
社交不安障害は、家では不安に感じたり緊張する場面がないため、「なぜ会社や人の集まりが苦手になるのか」が患者様や周りの人にはなかなか理解できません。緊張や不安のために、声が小さくなったり話す内容が分かりにくい、視線を合わさないなどコミュニケーションに支障が出たりすると、家族や周囲は「気持ちを強く持ちなさい」などと気の持ちようのようについつい言ってしまいたくなります。しかし、社交不安障害は性格の問題ではなく一つの病気であるということを理解することが大切です。
社交不安障害は、時間が経てば自然に治るものではないため、周囲の方が病気や治療法などを理解した上で、本人が不安と戦いながら社会的な場面に向かっていくチャレンジをサポートする姿勢が大切です。大切なのは、本人を苦手な場面から遠ざけるのではなく、周囲の人が一緒に寄り添いながら何が苦手なのかを理解し、社会の中で一緒に成功体験を作ることです。
また、早期発見・早期対応により、早期の回復につながるため、身近なご家族や周囲の方がいち早く変化に気づき、受診を促すことが大切です。
社交不安障害(あがり症)の人が発するサイン
- 話すときに目を合わせなくなった
- 人前に出たり、人前で何かをすることを避けるようになった
- マスクをするなど、人前で自分を隠すための行動をとるようになった
- 混雑する場所を避けるようになった
- 人と話した後、疲れたり落ち込んだり、悩むようになった
- 汗を隠すために、黒っぽい服を着るようになった