パニック症状の代表的な症状から考えられる4つの中核症状や治療方法を解説
目次
1.パニック障害とは
2.パニック障害の4つの中核症状
3.当院でのパニック障害の中核症状に対する治療法
1.パニック障害とは
パニック障害の悩みは、急に突然起きるパニック発作と慢性に続く広場強恐怖(電車や美容院など苦手な場所ができる)と何か体の調子が悪い(自律神経失調症)の2つがあります。薬物療法は急性のパニック発作には、とても効果がありますが、慢性の症状には効果が不十分で、長期間続いたり、こじれることがあります。ベンゾジアゼピンなどの抗不安薬の使用にも十分に注意しけなければいけません。「パニック発作が薬で起きなくなったら治った」ことにならないことがあります。パニック発作は薬で押さえ込んだが、パニック障害は悪化しているという患者様が、なんともならなくなって、私どものあらたまこころのクリニックを訪れることも多々あります。やはり、パニック障害という病気の知識が必要です。
「突然、心臓がドキドキしたり、息苦しくなったり、めまいなどの症状が現れる」と言われますが、実は、パニック発作や過換気が起こる前には、暮らしの中でストレスがかかっていることが多いのです。仕事や家庭でストレスを感じていたり、不眠、風邪やコロナウイルス感染の不安、大量の飲酒など体の不調がきっかけとなることもあります。本当にリラックスしてストレスのない状態の時に最初のパニック発作が起きることは非常にまれです。ですから、パニック障害は、急激なパニック発作をおこす背景には何かストレス状態が続いてます。火山が噴火(パニック発作)する前後に地下でマグマが活動していて、感じられないほど小さな地震が続いている状態(体の不調)に例えられます。
過換気やパニック発作などの症状が何度も起きると、「また息ができなくなったらどうしよう、胸がドキドキしたらどうしよう、めまいが起きたらどうしようか」や「ふらつきやめまいで今度は倒れてしまうかも」と心配になります。
さらに、まだ起きてはいない発作のことや他の体の症状にも不安が広がり、常に「今日は、体調は大丈夫だろうか」と体のことを症状が起きる前から心配して不安になってしまいます。不安が広がっていくのです。これを予期不安と呼びます。
症状が同じ場所で何度も起きると、症状だけでなく、その場所も怖くなります。電車や高速道路が怖い人もいます。広場恐怖(空間恐怖)です。広場と言っても狭い場所でも怖くなることがあります。そして、その場所を避けるようになると、さらにその場所が怖くなってしまうという悪循環ができてしまいます。
2.パニック障害4つの症状
パニック障害には、大きく分けて4つの症状があります。
①パニック発作 ②予期不安 ③広場恐怖 ④身体感覚過敏の4つです。
①パニック発作
パニック発作とは、あるとき突然、激しい不安・恐怖感とともに、心臓がドキドキ、過呼吸、発汗、震え、呼吸困難、胸の圧迫感、吐き気、めまい、ふらつき、手足のしびれなどの身体症状が起こる症状のことをいいます。パニック発作は突然に起こり、10分以内にピーク達して、通常、20~30分くらいで治まります。
②予期不安(また苦しくなったらどうしよう?)
パニック発作を繰り返し起こすと、多くの場合、「またパニック発作が起きるのではないか」「パニック発作のせいでコントロールを失ってしまうのではないか」などと不安になります。これを、予期不安といいます。
③広場恐怖
広場恐怖とは、「広い場所が怖い」ということではなく、「パニック発作と関連がある」「もしここでパニック発作が起こると、すぐに逃げ出せない」と思う場所や状況が怖くなり、避けるようになることです。「ここで発作が起きたら逃げられないぞ」と感じる場所や状況が怖いのです。他の人が見ると大したことじゃないと思える状況でも、本人は怖くなることがあります。傍目には、オープンな状況でも、パチンコの好きな人で「当たった」時、買い物で行列に並んでいる時などでも、「ここで逃げられない」と考えてしまうと広場恐怖やパニック発作が起きます。
パニック障害の全ての方に広場恐怖があるわけではなく、広場恐怖を伴わない方もいらっしゃいます。
④身体感覚過敏
心臓のドキドキや息苦しさといった症状は、人間が危険を察知すると生じる誰にでも起きる自然な体の症状です。
ところが、パニック発作を繰り返すうちに、これが逆転し、自分の気になっている体の症状を危険だと感じるようになってしまします。このような身体症状に過敏になってしまう症状を身体感覚過敏といいます。
3.当院での中核症状に対する治療法
パニック障害は、「パニック発作が起きても大丈夫」と自信が持てるようになることが治療の目標です。
あらたまこころのクリニックでは、薬物療法に加えてパニック障害を対象とした認知行動療法をグループ療法で行っています。
①パニック発作
・呼吸を整える練習(呼吸法)
・身体の緊張を和らげる練習(リラクゼーション)
②予期不安
・予期不安を整理し、考え方の幅を広げる練習(コラム法)
・予期不安が生じても、気づき、のみ込まれないようにする練習(マインドフルネス)
③広場恐怖
①、②に対する治療に踏まえ、苦手な状況に行き、不安を克服する練習(状況曝露療法)
④身体感覚過敏
・苦手な身体感覚を作り出し、身体感覚が生じても大丈夫という体験を学ぶことで、
身体感覚に対する苦手さを克服する練習(身体感覚曝露療法)
まとめ
パニック障害とは、体の病気がないのに突然、動悸、発汗、震え、呼吸困難、胸の圧迫感、吐き気、めまい、手足のしびれなど、体の自律神経症状を伴うパニック発作が出現することから始まります。
発作が起こった後、「また起きるのではないか」と不安になり、活動範囲が狭まり、日常生活にも影響が生じます。
パニック障害の治療では薬物療法で症状を安定させ、認知行動療法などの心理療法を用いて自分で克服する力を身に着けていくことが大切になります。パニック障害のメカニズムに対応した対処法を身につけながら、苦手な状況や感覚を避けないで繰り返し練習していくことが大切です。
気になる症状があるという方は、まずは一度ご相談ください。
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監修
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【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。
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