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公開日: |更新日: パニック障害

パニック障害を治したいと思ったら最初に読んで下さい。治療法や治し方から治療プログラムの流れまで

パニック障害を治したいと思ったら最初に読んで下さい。治療法や治し方から治療プログラムの流れまで

このブログは、パニック障害にお困りの方に最初に読んでいただきたいと思い、パニック障害の病気と治療法についてまとめました。あらたまこころのクリニックで実際に行われている、パニック障害専門治療プログラムについても触れていますので、ぜひ参考になさってください。

パニック障害についての正しい知識と治療法を知ることは、パニック障害を治すことにとても役立ちます。パニック障害でお困りの方のお力になれると嬉しいです。

知っておきたいパニック障害の2つの顔

パニック障害には2つの顔があります。

  1. パニック発作
  2. 慢性で進行する病気

突然、めまいや動悸、呼吸困難などの身体症状があらわれる“パニック発作”と、「また起きたらどうしよう」と苦手な場所を避け、生活が楽しめなくなってしまう“不安と慢性の生活の不自由”です。

パニック発作そのものは非常にありふれたもので、日本人の10人に1〜3人が、一生に一度はパニック発作を経験すると言われています。このパニック発作が進行すると、「また発作がが起こるのではないか」と恐れながら過ごす予期不安や、苦手な場所を回避する行動があらわれ、パニック障害と呼ばれます。

一言でパニック障害といっても、実に様々な段階や症状があります。パニック発作のある人でも、普段の生活を続けることのできる人がいる一方で、パニック発作を繰り返し、苦手な場所が増えてくる人もいます。パニック発作を怖れてパニック発作に関係しそうな状況を避けるようになり、生活が不自由になることもあります。体の不調、めまい、胸のドキドキなどが続く人もいます。

また自律神経失調症、身体表現性障害のような体の慢性的な不調の陰に潜んでいることもあるため、注意が必要です。

1.パニック発作

パニック障害で最初に来るのがパニック発作と恐怖です。

パニック発作は突然、めまい、頭がふらふらする、手や足がピリピリする、足の力が抜ける、心臓がドキドキする、胸がつまったり痛くなったりする、などの身体症状があらわれます。本来これらの症状は、危険な病気の兆候ではなく、もともと私たちの命を危険から身を守るための安全装置です。パニック発作は、脳の働きが誤作動しているだけなのです。

しかし、パニック発作は本当に恐ろしいもので、「また起きたらどうしよう」「発作で死んでしまうかも」といった恐怖が脳に刻まれてしまい、パニック発作だけに意識が集中してしまいます。こうなるとこじれていってしまうのです。よく、アルプラゾラムなどのベンゾジアゼピンの安定剤を飲むと、一時的にパニック発作は抑えられるため、治ったかのように思う人がいらっしゃいますが、実は治っておらず一時しのぎにすぎません。頓服薬に頼らなくても自分でできる良い対処法を覚えましょう。

具体的な対策は、パニック障害になりやすい人の特徴の記事の「パニック発作が起きた時の対処法」で解説していますので合わせて確認してみてください。

2.慢性で進行する病気

パニック発作を繰り返していくと、広場恐怖、回避、安全保障行動があらわれ、気づかないうちに日常生活が不自由になっていきます。また、慢性の自律神経失調症や身体表現性障害などもあり、体の不調が続くため、日常生活に大きな支障を起こします。より詳細な症状については「パニック障害の症状とは?」の記事で紹介しているため、合わせて読んでみてください。

広場恐怖

「この場所でパニック発作が起きたら怖い」と思う状況を避けるようになります。

例えば、パニック発作がしばしばショッピングセンターで起こると、そういう場所を回避するようになるかもしれません。もしパニックが起こると安全に運転することができないと恐れる人は、高速道路や渋滞しそうな道路で車の運転を避けるようになるかもしれません。大勢に人がいて、「気を失う」ことを恐れる人は、そんな「正気を失った状態」を人に見られ恥ずかしい思いをする場所を避けるようになるかもしれません。

コントロール不能

「さらに怖いことが起き、どうにもできない」と不安がどんどん広がって、自分ではパニック発作をコントロールできないと感じてしまいます。これがパニック障害を悪化させます。ここをパニック障害グループで治していきます。

回避

回避の問題点は、さらなる回避によって苦手な場所が広がり、ついには1人で外出ができなくなることです。

安全保障行動

恐怖を少しでも軽くしようとする何気ない行動です。一見、パニック発作を乗り切るのに役に立っているように思えますが、実はパニック障害が治ることを邪魔しています。日常生活で漠然とした不安が続き、パニック発作が起きやすくもなります。これを丁寧に見つけて治療していくことがポイントです。

慢性的な自律神経失調症や身体表現性障害

体がフワフワする、めまい、はきけ、胸のドキドキなど、体の不調が慢性的に続きます。弱いパニック発作が常に起きている状態です。また何かあるとパニック発作を起こします。

パニック障害は治るの?

パニック障害は、放っておいても良くなることはあまり期待できません。適切な治療をすることで改善することができます。早期に治療をすれば短い期間で完治することも期待できるため、早めに精神科や心療内科などの専門機関を受診することをおすすめします。

治療期間は症状によってさまざまですが、焦らず根気強く治療を続けることが重要なポイントです。

パニック障害の治療法とは

パニック障害の治療法は、「薬物療法」と「精神療法」があります。パニック障害はパニック発作ばかりに目を向けられますが、「パニック発作が起きても大丈夫」と自信が持てるようになることで、パニック障害の悪循環を改善していくことができます

はじめは薬物療法で発作の対策を行いますが、精神療法を組み合わせていくことで、危険を知らせる脳のアラームの誤作動や、悪循環を引き起こしている誤った認知を修正していきます。

薬物療法

パニック障害の薬物療法は、主にSSRIを使用します。即効性はなく、効果が出るまでに3週間ほどかかりますが、この時期を乗り越えると治療がスムーズに進みます。パニック障害は体の変化に敏感なため、薬が体になじむまでに副作用が出る場合があります。「副作用で大変なことになる」と不安が大きくなってしまう方もいらっしゃいますが、この時期がとても大切ですので自己判断で薬を中断することは避けてください。

一方で、飲むとたちまち効果がある「発作止め」「お守り薬」と称されるベンゾジアゼピンなどの安定剤があります。以前はよく使われていましたが、発作を抑えるための頓服であり、根本的な治療にはなりません。それだけでなく、パニック障害の長期化や慢性化など、かえって悪化させることもあります。

パニック障害の治療は、「薬がなくても自分の力で対処できる」という自己効力感を持てるようになる治療を行うことが大切です。

抗不安薬については「パニック障害が治るのを抗不安薬(ベンゾジアゼピンの頓服)が邪魔をする」で詳しく解説しています。合わせて読んでみてください。

精神療法

パニック障害の精神療法は、薬物療法で発作をコントロールしながら併用することが一般的です。認知行動療法によって、パニック障害を正しく理解し、パニック障害を引き起こす考え方や行動を変化させていきます。精神療法は時間がかかるものではありますが、対処法を身につけることで、再発防止にも役立ちます。

当院でのパニック障害専門の治療プログラムの流れ

あらたまこころのクリニックでは、次の流れでパニック障害専門の治療プログラムを進めています。

  1. 不安とパニック発作をコントロールするテクニックを身につける
  2. パニック発作と状況恐怖の悪循環を切る

パニック障害の正体を知り、不安に対処する技法を身につけることができれば、パニック障害の症状は、プログラム終了後も不安に対処できるようになります。自動車教習所に例える人もいます。始めは車の運転を教習所の中で練習して、仮免をとって外の道路で練習する。そのうち自分の力で、どこでも好きな所に行けるといったイメージです。

1.不安とパニック発作をコントロールするテクニックを身につける

もしパニック発作が起きても大丈夫なように、治療教育や呼吸コントロール法を、自分でいつでも使えるようにグループで練習します。

2.パニック発作と状況恐怖の悪循環を切る

パニック障害は、本来ならさほど危険ではない状況や場所が、広場恐怖の対象や体の不調を引き起こすものとなっています

「ここでパニック発作が起きたら怖いから避ける」という、脳に刻まれた状況回避との結びつきの悪循環を、崩すことが治療の目標になります。実はパニック障害の治療で難しいのは、この段階なのです。

曝露療法といって、あえて苦手な場所に行く、状況を作るなどをして、不安に慣れる練習を行います。最初は「そんな怖いことはできない」と不安になるのが当然ですが、実際にやってみると「スモールステップで、クリアすることから取り組んでいくうちに楽しくなってきた」と話されます。今まで「できなかったこと」が、できようになるのは嬉しいことです。

このように、パニック障害のプログラムは順番に積み上げていきます。グループ治療のため、プログラムを受けるためにスケジュールを合わせる必要がありますが、グループ治療のメリットとして大きいのが「パニック障害で悩んでいるのは自分だけではない」「うまくやっている人の真似っこをしよう」と、治療効果が格段に上がることです。集中的にやることで、効率も良いのです。

メリット・デメリットとそれぞれありますが、パニック障害の治療をしようと思い立ったら、とりあえずできることから始めることをお勧めします。「治りたい」「自分の反応を変えたい」という気持ちが最も大事です。

パニック障害を治すためにに日常生活でこころがけること

パニック障害は、良くなったり悪くなったりと、一進一退を繰り返しながら治っていく病気です。治療が長期に渡って長引くこともあるため、日常生活の過ごし方が症状の改善のためにとても重要です。パニック障害の日常生活でこころがけることを紹介しますので、参考にしてみてください。

ストレスを溜めない

パニック発作はストレスが引き金となりやすいため、心や体に負担をかけないよう、ゆとりのある生活を心がけましょう。仕事や人間関係といった精神的ストレスだけでなく、睡眠不足や過労も身体的ストレスとなるため注意が必要です。

回復を焦らない

薬の効果が思ったより早くあらわれなかったり、治療が長引いたとしても回復を焦らないようにしましょう。パニック障害は、時間がかかっても適切に治療を続ければ克服できる病気です。不安がある時は医師に相談し、一緒に対処法を見つけていきましょう。

規則正しい生活を送る

体調不良や睡眠不足の状態では、パニック発作が出やすくなります。睡眠リズムを整えるなどの規則正しい生活や適度な運動は、自律神経を整え症状の改善に働きます。

カフェインやアルコールは避ける

パニック障害の患者さんは、カフェインを摂ると発作を起こしやすくなることが分かっています。カフェインが脳を刺激し、パニック発作を誘発するためです。また、アルコールも同じく不安を誘発するため、カフェインやアルコールはなるべく避けましょう。

家族に協力してもらう

パニック障害は、身体症状が強く、不安や恐怖が大きいため、周囲のサポートが必要です。家族や周囲の方にパニック障害について理解してもらうことで、気持ちが楽になります。

まとめ

パニック障害は、適切な治療をすることで克服することができます。何もしなくて治る病気ではないため、精神科や心療内科などの専門機関で治療が必要になります。

パニック障害の治療は、一般的に薬物治療と精神療法を並行して行います。薬物療法で発作をコントロールし、精神療法でパニック発作と状況恐怖の悪循環を切り、薬がなくても自分の力で対処できる力を身につけていきます。パニック障害の治療をしようと思い立ったら、とりあえずできることから始めることをお勧めします。

私加藤の私見で恐縮ですが、パニック障害などの不安障害が「治るかどうか」は、必ずしも重症度や年齢などで決めるのではなく、どれだけ状況曝露や身体感覚曝露に取り組めるか、日常生活での練習量です。

2006年から、パニック障害認知行動療法グループを始めて回復していく患者様をみていると、その思いは強くなります。一緒に頑張ってきましょう!!

関連記事:パニック障害の診断方法とは?チェックリストを活用した診断テストをご紹介

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監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。