サマータイム制度で睡眠障害も
日本睡眠学会が『サマータイム―健康に与える影響―』を公表
東日本大震災をきっかけに、電力供給のピークをずらすために、多くの工場を持つ大企業などが積極的なサマータイム導入に乗り出しています。
しかし、日本睡眠学会は、以前からサマータイム制度の導入に反対をしています。今年7月23日には、小冊子『サマータイム―健康に与える影響―』を公表ました。サマータイム制度に伴う睡眠や健康への影響について書かれたもので、、一般の人への理解を得るのが狙いということです。
そこで指摘してされているのは、以下の3つです。
(1)生体リズムへの影響
(2)眠りの質への影響
(3)眠りの量への影響
欧米に比べて日本人は睡眠時間が短く・夜型の人が多いのですが、サマータイム制度を導入した場合、早寝が伴わず早起きのみが促されるため、睡眠や生体リズムに影響し、健康を害する可能性があるのです。
ヨーロッパの導入国で健康障害が起きている
フィンランドでは、サマータイムに移行後、睡眠効率の低下や体重増加が認められ、通常の睡眠時間が8時間以下の短睡眠者では日中の行動が分断されることが報告されてます。
昨年ロシアがサマータイム制度を撤廃しましたが、その理由は移行期に心筋梗塞患者が増加するなどの健康障害が生じたためです。
また、移行期に生じる生体リズムの急激な変化がもたらす身体への影響が小児、高齢者などの健康弱者では特に大きいことがフランスの欧州連合(EU)上院議員団レポートの中で報告されています。
睡眠軽視傾向にある日本人、睡眠不足に拍車がかかる心配
また、ヨーロッパとは違い、日本の夏は、夜の早い時刻では気温がまだ高く、早寝をするのが難しいことも大きな問題です。もしサマータイム制度を導入すれば、こういった理由から睡眠不足になる可能性が高い上に、日本人は睡眠軽視傾向にあるので、さらに睡眠不足に拍車がかかると考えられます。
ちなみに厚生労働省の「人口動態推計2010」に上げられた日本人の死因10のうち、悪性新生物、心疾患、脳血管疾患、肺炎、不慮の事故(窒息,転倒,転落,水死など)、自殺の6つは睡眠不足と関係があると言われています。そういった面からも睡眠不足は、単純に昼間眠いだけの問題ではないと言えるのです。
これらのことから、サマータイム制度の導入にはまだまだ問題点があり、また、日本人が軽視しがちな睡眠を、もう一度見直す必要があると思われます。
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監修
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【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。
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