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うつ病の再発のサインとは?回復経過の特徴やぶり返しリスクについて

うつ病の再発のサインとは?回復経過の特徴やぶり返しリスクについて

うつ病は、つらい憂うつな気分、やる気が起こらないのに何かしなければいけないと焦る気持ち、眠れないなどさまざまな症状があり、患者さまに大きな苦痛を与える病気です。また、うつ病には以下のようにいろいろなタイプ(種類)があり、それぞれ治療のポイントが違ってきます。

  • 急性or慢性のうつ病
  • 単極性or双極性のうつ病
  • 発達障害のうつ病
  • 幼少期からのうつ病
  • 不安障害と合併して起こるうつ病
  • 産後うつ病
  • PMDD(月経前不快気分障害)

今回は、そんなうつ病の治療においてどのような経過を辿ってうつ病を治療していくのか、またうつ病の再発リスクなどについても解説していきます。

うつ病はどんな経過をたどる?

うつ病の経過は「急性期」「継続期」「維持期」の3つの時期に分かれます。

うつ病の経過

「うつ病は再発しやすい病気」と言われていますが、適切な治療をすれば十分に防ぐことができます。うつ病の経過には、専門的な用語ですが以下の5つの状態を表す用語がよく出てきます。これらの治療の経過を事前に知っておくことで落ち着いて治療に向かうことができるため、ぜひ覚えておきましょう。

経過に関する用語 用語の意味
反応 うつ病の症状が50%以下に改善すること。
寛解 うつ病の症状がほとんど消えること。
再燃 治療中に症状がぶり返すこと。
回復 寛解の状態が2ヶ月以上続いた状態のこと。
再発 回復状態からまたうつ病が発症した状態のこと。

次に、うつ病の経過状態の時期別の治療方法について解説をしていきます。うつ病の回復を目指す上で、英語の頭文字を取って、5つのRと呼ばれ、重要視されています。

急性期

急性期の治療はうつ病の薬と休養が基本となります。特に初期の3週間は完全寛解(症状がほぼ完全に消えている状態)を目指すにあたってうつ病治療においてとても大切な期間です。急性期ではゆっくりと症状が回復していきますが、ここで服薬を中断したり、焦って復職を早めたりしてはいけません。焦ると再燃してしまう可能性があるので注意が必要です。

この時期に最も大切なことは、服薬をやめないこととあせらない事です。

大切なこと1:服薬をやめないこと

しかし、うつ病の薬には副作用が現れる患者さんもいらっしゃいます。眠気・めまい・むかつき・下痢/便秘などの症状が、厄介なことに抗うつ薬の効果より先に現れてしまうのです。この時期では抗うつ薬の効果よりも薬の副作用が現れてしまうこともあります。この際、大事なことは辛くても自己判断で服薬を中止しないことです。相談してください。

継続することで薬の効果が表れ、不安や憂うつな気持ちが軽くなっていき、副作用も徐々になくなっていきます。

大切なこと2:焦らないこと

また、うつ病は治療反応の過程で、①イライラや不安感→②憂うつ感→③生活への興味→④簡単な家事や外出→⑤生活の楽しみ、活力といった順に回復していくと言われています。

意欲などが戻るには時間がかかりますし、家事などの日常生活機能が十分に回復するのは、急性期の後半です。仕事ができない事で周りへの申し訳なさを感じる方も多いですが、まずは治すことに専念し、焦らずに休養を続けましょう。

継続期

症状が落ち着き、生活が楽しめるようになってくると、継続期に入ります。継続期では良くなった状態を維持し、寛解(病前の状態にもどること)→回復を目指します。ただし、良くなってきたからといって服薬をやめるのは危険です。ここでも、自己判断で服薬を中断したりすると、再燃のリスクが高まりますので注意が必要です。

うつ病の薬は症状を改善するだけでなく、再燃を予防する効果もあるため、症状が改善されても薬を飲み続ける必要があります

維持期

症状が安定してきたら、維持期に移行します。治ったかのように思われますが、油断は禁物です。また、この時期に服薬をやめると再発リスクが高まります。医師が寛解と判断してもしばらくは同じ量の薬を飲み続け、その後、徐々に薬を減らしていきます。

薬の減らし方、やめるタイミングにも専門的な判断を要するので、自己判断で薬を減らしたり、やめないことが大切です。特に再発経験のある患者さんに対しては、この時期を長くとる場合もあります。

例えば、過去3回うつ病を経験している方は1年以内の再発リスクは、薬物療法のみだと90%と言われています。該当する方は、主治医と相談し認知行動療法や対人関係療法なども併行することがおすすめです。認知行動療法とは?という方は合わせて以下の記事も読んでいただけると理解が深まると思います。実際に、3回以上再発した患者さんで、マインドフルネスに取り組まれ、驚くほど、とても上手に乗り切っている方もいらっしゃいます。

関連記事:認知行動療法とは

上記の例のように再発を繰り返すほど、再発リスクが高くなり薬が手放せなくなり、治りにくくなります。そのため、いかに1回目の急性期に治せるかが大切になります。双極性うつなどに代表される、長く続く慢性的なうつ病ではまた別のアプローチで回復過程をたどりますので適切な診断と治療計画が必要です。

うつ病の再発率は?

抑うつエピソードの回数と再発リスクとの関連

抑うつエピソードの回数と再発リスクを表す上記のグラフからは、再発を繰り返すほどに再発しやすくなっていくことが示されています。うつ病の5年以内の再発率は、1回目では30%。3回目では50%、10回目では90%という研究結果もあります。

このようにうつ病は、再発を繰り返すことで、再発しやすくなる悪循環に陥ってしまいます。また、治ったと思っても症状が残りやすくなり再発を繰り返してしまいます。実際に私の参加したSUN☺D研究では、多くの研究がそうであるように、日本の第1戦のうつ病治療をもってしても、服薬9週間までにうまく寛解しても、7人に1人は25週以内にうつ病が再発することが確認されました。ここが、工夫が必要なところです。認知行動療法やアサーション、マインドフルネスなどを組み合わせることが良いと多く報告されています。長期で見れば、マインドフルネスは単体でも、薬物療法以上の効果があるという世界的な論文もあり、日本でもマインドフルネス認知療法など広がってきています。

うつ病の再発の原因と予防策

うつ病は症状が回復しても一部の症状が残る残遺症状というものが存在し、それによって再発することが多くあります。残遺症状としては、不眠や活力の低下が残りやすいと言われています。

こちらのグラフは、残遺症状があるかどうかで、再発のしやすさを比較したものです。残遺症状がない方(黒い線)が、再発率が、オレンジの線よりも明らかに低いことが分かります。

残遺症状の有無別にみたうつ病の再発リスク

このグラフは、残遺症状があるかどうかで、再発のしやすさを比較したものです。よくある残遺症状とは、不眠や活力の低下です。残遺症状がない方(黒い線)が、残遺症状ありのオレンジの線よりも明らかに再発率が低いことが分かります。つまり、うつ病の治療では、残遺症状がなくスッキリと治る状態(完全寛解)を目指すことが重要です。

うつ病の薬を継続して飲んでいれば、3年間は再発を1/3に抑えるとされています。急性期には適切な薬物療法をおこない、できるだけ早く寛解を目指し、再発リスクを抑えることが大原則です。

また、環境の変化やストレス、身体的な疾患も再発の引き金となる場合があります。ストレスを感じたら休むこと、規則正しい生活習慣をすることがうつ病対策では重要です。

見逃していない?再発のサイン

うつ病の再発サインは、うつ病初期の状態と変わりません。具体的には、食欲不信、不眠、意欲の減退など身体的や精神的な症状があります。そのため、様子がおかしいと感じたら速やかに医師に相談をしましょう。

「自分はうつ病かも?」と思った方は、うつ病の診断テストを「うつ病の診断テスト(チェックリスト)」から行うことができます。ぜひ試してみてください。

【まとめ】うつ病の治療で大切なこと

ここまで、うつ病の薬物療法にお話を絞って治療の経過とうつ病の治療において大切なことや患者様に守って頂きたいことをお伝えしてきました。うつ病の治療において大切なことは、以下の5点です。

  • しっかりと休養すること
  • 焦らずに継続して治療(服薬)をすること
  • 完全寛解を目指すこと
  • 再発することなく一定期間維持すること
  • 薬物療法以外の認知行動療法などの精神療法も併行することがお勧め(他のコラムをご参照ください)

また、うつ病は再発しやすく、再発を繰り返すごとに再発リスクが高くなってしまうため自己判断で治療を中断しないことが大事になります。特に、1~3週間での早期改善が、完全寛解において有効なため、最初にどのお薬を、どれだけ処方するかが、うつ病の治療では大切です。

あらたまこころのクリニックでは、うつ病の方に対して適切な薬物療法と薬に頼り切らない認知行動療法や対人関係療法などの精神療法を行っております。うつ病は最初が肝心。もしうつ病でおこなりの方がいらっしゃいましたら一度当院までご相談ください。

初めてご来院される方は当院の特徴のページもぜひ参考にしてみてくださいね。

関連ページ:はじめての方へ・当院の特徴

関連ページ:うつ病のよくある質問

 

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監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。