大人の発達障害(adhdやasd)の診断方法とは?どんな検査や治療を行うのかを解説
はじめに
前回に引き続き、知っているようで知らない発達障害のあれこれ第二弾です。
今回は、発達障害の診断と治療についてお伝えしていきます。
どうやって診断するの?
発達障害は児童精神科、精神科、心療内科、そのほか子供の発達を専門とする医療機関などで①診察や②検査をして③診断が下されまてきました。
近年は、大人になってから発達障害ではないかと気づく人も増えて、大人の発達障害の診断も重要になってきています。
①診察
生育歴
特に重要なのは、「今までの育ちの過程(生育歴)」です。前述した通り、発達障害は幼少期から一貫した特徴であるからです。
乳幼児期の様子、就園・就学など成長の過程でそれらがどのように変化したか、周囲とのトラブルなどが見られたかなどを詳細に聞いていきます。
幼少期の頃の出来事なので、養育者などご本人の小さなころをよく知る人物からの聴取が必要になります。母子手帳・学校の通知表・家族の日記などもかなり貴重な情報になります。
生活歴/現病歴
大人になってから、どのような生活を送ってきたか、大学や会社での適応はどうであったか(生活歴)。
現在の困りごと(不眠や抑うつなどの精神症状や会社(学校)にいけない、上司とうまくいかないなどの行動)の経過や、昔にも似たようなことがあったかどうか(現病歴)。
これらを聞いて、発達障害の特徴が見られるかどうか、これらは後天的でほかの精神症状が背景にあるかどうかなどを調べていきます。
既往歴
今までかかった身体疾患・精神疾患の中に現在の症状の原因が見られるかどうか。
などを見ていきます。
②検査
以上のような聴取を行った後、検査を行います。検査には、様々な種類があり、それぞれに役割が異なります。大別して、⑴スクリーニング検査⑵評価・診断の検査⑶認知機能検査があります。以下に特徴をまとめました。
③診断
以上、診断と検査によって、医師が総合的に判断し、発達障害の診断がなされます。なので、「ネットのチェックリストでたくさん当てはまったから。発達障害」ということにはならないということです。上述した通り、発達障害のように見えるほかの疾患も存在します。診断
診断の難しさに加えて、一度、発達障害の診断がつけば、その患者様の人生に大きな影響を与えることは言うまでもありません。
ゆえに、発達障害の診断は医師にとって非常にセンシティブな作業であるということをご理解ください。
発達障害は治るの? 発達障害の治療
まず結論から
発達障害は、生まれ持った脳の機能の「特徴」です。ゆえに、発達障害の治療は「治す」ではなく、その特徴に合わせて「生活しやすくしていく」事になります。
ただし、上述した通り、発達障害の患者様はその育ちの中で、様々な傷つきを抱えていることがあり、それが、抑うつなどの精神症状として現れていることがあります(二次障害)。これは、精神科治療の対象となります。
生活しやすくしていくとは?
まずは、ご自身の特性について学んでいく事です。専門スタッフと面接をしながら、日々の困りごとの背後にある「特徴」についての理解を深めていきます(心理教育)。
次に、生活上の工夫を考えていきます。例えば、忘れっぽいADHDの方でしたら、頻繁にメモを取ってもいいように上司に相談する・家族からのお願いなどはリマインドしてもらうなどが有効でしょう。このように、自身の特性に合わせて、周囲の人に配慮や許可をもらう環境調整は発達障害の治療では非常に重要になります。
このほか、生活場面での行動の仕方について学ぶ「スキルトレーニング」も行われています。
また、3歳児検診などで早期に発達障害が発見されたお子さんでしたら、特性に合わせた「療育」を受けることもできます。
ADHDには治療薬がある
発達障害の治療は「生活しやすくしていくこと」と述べましたが、ADHDには4つの治療薬があります。メチルフェニデート(コンサータ)・アトモキセチン(ストラテラ)・グアンファシン(インチュニブ)、ビバンセです。
ADHDの症状には、神経伝達物質(脳を動かす物質)のドパミンとノルアドレナリンが関与していることが知られています。3つのお薬は脳がそれらの物質を利用しやすくしてくれます。
二次障害への治療
大人の発達障害など二次障害によって、様々な精神症状が現れている場合は、その症状に合わせた治療薬を処方します。
眠れない場合は睡眠薬。抑うつ症状や不安症状にはSSRI。過剰な興奮や幻覚幻聴が見られる場合は抗精神病薬。などが処方されます。
二次障害が重い場合には、上述したような「心理教育」や「スキルトレーニング」が難しい場合があります。まずは薬物療法で二次障害の症状を落ち着けてから、「生活しやすくしていく」治療に取り掛かるのが一般的です。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
今回は、知ってるようで知らない発達障害のあれこれと称して、発達障害の概念・原因・診断・治療について見ていきました。
先ほどお伝えした通り、発達障害は生まれ持った特徴です。さらに、育ちの過程で、様々な困難を抱えやすく、ある程度、成長してからはかなり複雑な状態像を見せることがあります。ゆえに、医師は非常に慎重な判断が求められます。
「自分は発達障害かもしれない」と思った時も注意が必要です。
発達障害の診断はプロでもやすやすと出来る事ではないのです。
その背後に、心や体の病が隠れていることもあります。一度、専門医に相談することをお勧めします。
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監修
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【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。
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