不眠とは?-不眠の治療プログラム①
【目次】
不眠とは
不眠の原因はいろいろ
体や心の病気が原因で起こる不眠(本シリーズの治療プログラムに適さない不眠)
原発性不眠(本シリーズの治療プログラムに適した不眠)
まとめ
はじめに
あらたまこころのクリニックには、様々な症状や悩みを抱えた方々が来院されますが、多くの患者様に共通してみられる悩みがあります。
それが不眠です。一口に不眠といっても、ストレス、心配事、お酒やコーヒーなどの刺激物、交代勤務や夜勤による昼夜逆転などなど、原因は様々です。
眠るということは人間にとってとても大切なことで、眠れない日が続くと、心も体もつらくなってしまいます。
不眠症の治療には、薬物療法と行動療法があります。不眠への治療は当院では不眠の症状がある患者様一人一人に合わせた、睡眠をサポートするお薬を処方しています(薬物療法)。それと並行して、質の良い眠りのための生活習慣作りをサポートする取り組み(行動療法)をしております。
このシリーズでは、不眠症に対する行動療法についてご説明いたします。第一回は「不眠症とは?」です。
※睡眠薬は基本的に安全なお薬ですが、使い方を間違えると依存性の問題が生じることがあり、医師のきちんとした処方が不可欠です。当院の院長である加藤正は、睡眠薬の依存を防止する啓蒙活動を行い、名古屋市医師会において、患者様が薬を手放すための医師向け講演や論文執筆を行なっています。
不眠と睡眠薬の悪循環
不眠症とは
寝つきが悪い・夜中に目が覚める・朝早くに目が覚める・眠れたけどぐっすり眠れた感じがしない・昼間も疲れが取れず、眠気が残る・集中力や注意力、記憶力が落ちる・昼間イライラする・眠れないことに不安になるなど。
睡眠が、質や量において十分でなく、昼間も眠気が残って仕事などに支障が出る状態です。
大別すると①眠るまでに時間がかかるタイプ②途中で目が覚めるタイプ③朝早くに目が覚めるタイプ④ぐっすり眠れた感じがしないタイプの4つに分けられます。
ストレスなどで一時的に不眠になることもあるし、長期間続きこともあります。日本人の成人の3人に1人は、少なくとも時々は不眠になり、10-15%は慢性的な不眠と言われています。
不眠の原因はいろいろ
不眠は3種類
不眠はまず原因によって3種類に分けられます。①心の病気が原因で起こる不眠と②体の病気が原因で起こる不眠、③そのような原因がない原発性不眠です。それぞれについてご説明します。
①心の病気が原因で起こる不眠
不安障害
不安が強すぎて、人前に出ることを避ける、何度も戸締りを確認する、苦手な場所を避けるなど生活に支障が出ている方は、不安障害と呼ばれる状態かもしれません。このような方は、夜間にも慢性的な不安・緊張状態が続いていて、眠れなくなったり、途中で目が覚めたりすることが多いです。考え込みや反すうなどがあります。
うつ病
憂うつな気分が続き、やる気がなくなって活動性が低下し、疲れやすく、そんな自分に焦りや罪悪感を抱いている。そのような方はうつ病かもしれません。不眠はうつ病の症状の早期に現れ、持続するつらい症状です。また、不眠が治りきっていないと、せっかく治ったはずのうつ病が再発することが多い。不眠をきちんと治しておくことが,うつ病の治療にも,再発予防にも重要です。
②体の病気が原因で起こる不眠
痛みのある病気
慢性疼痛症や関節炎などの痛みによって眠れなくなることもあります。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠中に呼吸が停止する病気です。あらたまこころのクリニックでは睡眠時無呼吸症候群の生活習慣などを含めた内科や耳鼻咽喉科治療の専門医療機関と連携しております。
- いびきの大きさを指摘されたことがある
- 息を切らし足りして、目が覚める事がある
- 「寝ているときに息が止まっている」と言われたことがある
- 起床時に疲れが残っている。休めた感じがしない
- 朝起きた時、頭痛や口の渇きを感じる
むずむず足症候群
じっと座ったり横になったりすると、脚にむずむずする、 ぴりぴりする、かゆみ、痛みなどの強い不快感が現れ、脚を動かしていないといられなくなります。特に夕方から夜間に多く見られます。脳のA10こちらも、睡眠障害を招くため、睡眠障害を専門とする医療機関の受診をお勧めします。
- 脚の中を、虫が這うような・チクチクするような・引っ張られるような感じがして、脚を動かしたくなるようなことはしょっちゅうある
- その症状は、脚を動かしたり歩いたりするとすぐ無くなる
- 何もしないでいると、このような症状が悪化する
- 午後の遅い時間や夜に、脚を動かしたくなったり、落ち着かない感じが出ることが多い
- 脚が落ち着かなくて、寝つきが悪かったり、目が覚めたりする
そのほか
更年期障害・依存症(アルコールや薬物)などで不眠が起こることがあります。
また、高齢の男性は前立腺肥大などで夜のトイレが多くなり、不眠の原因となります。
抗うつ薬の一部や高血圧の薬、ステロイドなどでも不眠が起こります。カフェインなどの刺激物でも不眠はおこります。
このような、心や体の病気や薬物が不眠の背景にある場合は、まずそちらの治療を優先させてください。このシリーズでお伝えする不眠の治療プログラム(行動療法)は、上記のような病気を抱えている方には適用外になります。
※うつ病の不眠に対しても効果があるという研究もありますが、研究の対象となった患者様はすでに、うつ病の治療を開始している方々でした。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、
不眠の定義(質や量において十分でなく、昼間も眠気が残って仕事などに支障が出る状態)
不眠のタイプ(①眠るまでに時間がかかるタイプ②途中で目が覚めるタイプ③朝早くに目が覚めるタイプ④ぐっすり眠れた感じがしないタイプ)
不眠の原因(心や体の病気が原因の不眠と原発性不眠)
についてご説明しました。
そして、「眠れない癖」がついてしまう不眠(原発性不眠)に対しては、「ぐっすり眠る癖」に再学習していく治療プログラム(行動療法)が有効であることをお伝えしました。
次回からは、そのプログラムについて詳しくご説明していきます。
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<不眠症についての記事はこちら>
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関連する情報
監修
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【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。
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