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公開日: |更新日: 睡眠障害・不眠症

わかりやすい不眠症治療入門

わかりやすい不眠症治療入門

【目次】

不眠症4つのタイプ
不眠症の原因は様々だけどメカニズムは共通
不眠症の治療①~生活習慣の改善~
不眠症の治療②~薬物療法~
不眠症の治療プロセス
おわりに

睡眠の健康週間(春と秋) 自分の睡眠を見直そう

 皆さん、毎晩ぐっすり眠れていますか?

夜眠れないとお悩みの方は多いと思います。

毎年9月3日は「「秋の睡眠の日」で、8月27日から9月10日は、秋の睡眠健康週間です。

 世界睡眠医学協会は、3月18日を「世界睡眠デー」と定めて、睡眠に関する知識普及や啓発活動を行っています。日本では、日本睡眠学会などが9月3日も、「秋の睡眠の日」として加えています。

「良質の睡眠は子供の心身の成長に重要であり、生活習慣病を予防し、高齢者の生活の質を高める」として、睡眠に関する正しい知識の普及・啓発を行うために前後1週間を睡眠健康週間として定めているのです。

日本人は、外国と比べ、どの年代も睡眠時間が短いのですが、特に女性は短い、また最近では子供も短くなって来て、健康に悪影響が出ないか懸念されています。

 不眠は「眠れない」という夜間の症状だけではありません。不眠症は24時間病です。

日中の眠気、だるさ、集中困難など、こころとからだに様々な影響を及ぼします。

また、長く続く不眠症は、うつ病(2倍)・高血圧(2倍)・糖尿病(2-3倍)などのリスクが高まるという報告があります。

このように、不眠症は皆さんの日常生活や心身の健康に大きな影響を及ぼします。たかが「不眠」と侮ることはできません。

今回は不眠症の概略を知り、不眠症の可能性がある方々に、必要な治療や対処法へアクセスしてもらうための知識をお伝えします。

不眠症4つのタイプ

「不眠」と聞くと、夜なかなか寝付くことが出来ない状態を想像する方が多いと思いますが、それは不眠症の1タイプでしかありません。

不眠症は、

  1. なかなか寝付けない(入眠困難)
  2. 夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)
  3. 朝早く目覚めて眠れなくなってしまう(早朝覚醒)
  4. ぐっすり眠れた感じがしない(熟眠困難)

の4タイプに分類されます。当てはまる症状はおありでしょうか??

不眠症の原因は様々だけどメカニズムは共通

不眠症の原因は様々です。

睡眠リズムの乱れ・ストレス・精神疾患・生活習慣病・脳神経疾患・呼吸器疾患・アルコール・お薬の影響などがあります。

が、その結果起こるメカニズムは非常にシンプルです。

それは、“睡眠と覚醒のバランスの乱れ”です。

眠りたいときに何らかの理由で、“身体を覚醒させる機能”が“睡眠を誘う機能”よりも上回ってしまった場合、眠れなくなるのです。

不眠症の治療①~生活習慣の改善~

まずは生活習慣の改善

不眠症の治療には、お薬を使わず生活習慣を見直すなどして改善する「行動療法」と、お薬を使って改善する「薬物療法」があります。

まずは、不眠の原因となる生活習慣を見直し、それらを改善するセルフケアを行うことから始めます。

質のいい睡眠のための生活習慣(の一例)

上の図をご覧ください、質の良い睡眠のための生活習慣の一例です。

このほかにも、

同じ時刻に起床し、朝の光を浴びる

昼寝をするなら20分程度

夕食前に軽い運動をする

就寝4-5時間前からはカフェインやアルコール、胃にもたれる食事はとらないようにする

就寝前に熱いお風呂は避ける。スマホ、動画、SNS、タバコは避ける。

就寝時間にこだわりすぎずに眠くなってから布団に入る。

寝室の環境を整え、寝る以外のことに使用しない

睡眠中は騒音、光、極端な温度変化を避ける

等を生活習慣に組み入れることで質の良い睡眠が期待できます。

不眠症の治療②~薬物療法~

服薬は一時的なもの

生活習慣を整えても症状が改善されず、医師が必要と判断した場合はお薬による治療をお勧めする場合があります。「薬には頼りたくない」「薬なしで眠れなくなりそうで怖い」など薬にあまりよくないイメージを持つ方も多いかもしれません。懸念はごもっともですが、医師の正しい処方のもとで正しく服用していれば、睡眠薬は安全なお薬です。また、眠れるようになってからは、医師と相談しながら、徐々に薬を減らして、最終的にはお薬なしで眠れるようになっていく事を目指す治療が主流になってきています。

3つの不眠症治療薬

不眠症治療薬の種類には

①GABA(ギャバ)受容体作動薬

脳全体の活動を鎮静化させて眠りに導く。

②メラトニン受容体作動薬

体内時計の働きをつかさどるメラトニンの作用を高めて、睡眠リズムを整えて眠りに導く。ロゼレムと言う名前で処方されます。

③オレキシン受容体拮抗薬

起きている状態を保とうとする物質「オレキシン」の働きを弱め、脳を眠りの状態に切り替える。

の3つがあります。ベルソムラ、デエビゴと言う名前の薬です。

自己判断で服用を中止したりなどせず、医師の指導のもとで、適切に使用することでお薬はより安心して使用することが出来ます。

不眠症の治療プロセス

では、さいごにこれまでのおさらいをしましょう。不眠症は以下の4つのプロセスで進んでいきます。

①日常生活を見直し、不眠の原因となる生活習慣を改善する

不眠の症状や状態を医師に伝え、医師からの睡眠衛生指導をもとに、不眠の原因となる生活習慣を改善する。

②症状に合わせてお薬を服用する

生活習慣の改善と同時に、必要に応じてお薬を使って治療する。

③生活習慣が是正され、症状が改善したら、お薬を減らす

良い睡眠のための生活習慣が定着し、症状が安定して、4~8週間ほど続いたら、医師と相談して、薬を減らしていく。

④お薬をやめても状態が安定していることを確認し、治療を終了する

医師の指示に従って、治療を終了する。良い睡眠のための生活習慣は続ける。

このようなプロセスで、安全に不眠症は治療することが出来ます。

あらたまこころのクリニックの治療理念である、薬に頼り切らない治療(詳しくはこちら)と同じようなプロセスをたどっていきます。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

今回は、不眠の症状とメカニズム・質の良い睡眠のための生活習慣・不眠症の薬物療法についてご説明しました。

あらたまこころのクリニックでも、これらをパッケージ化した短期睡眠行動療法と医師による薬物療法の2本柱で治療を行っております。詳しくはこちら()をご参照ください。

本記事を読んで、ご自身の不眠症が気になる方は、一度、医療機関に受診し、医師にご相談くださいますようお願いします。

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<不眠症についての記事はこちら>

不眠症治療プログラムの概略

不眠に対する行動療法カウンセリング

薬に頼り切らない不眠症治療

睡眠日誌と睡眠衛生教育

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関連する情報

監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。