コロナウイルスによる3つの危機(Mental Health Pandemic)~大野裕先生の講義を受講しました~
【目次】
新型コロナウイルスCOVID-19によって3つの危機が起きている (Mental Health Pandemic)
新型コロナウイルスCOVID-19の3つの顔を知る
まとめ
はじめに
2020年7月22日(水)に、webセミナー、「新型コロナウイルスCOVID-19とこころの健康」をスタッフ一同で受講しました。
講師は、一般社団法人認知行動療法研修開発センター理事長・ストレスマネジメントネットワーク代表の大野裕先生でした。
大野先生は、日本の認知療法のパイオニアであり、ご著書も多く、講演ではいつもわかりやすくて、日常の臨床に役立つお話をして頂けますので、私たちも受講をとても楽しみにしていました。あらたまこころのクリニックの加藤正は、厚労省認知行動療法研修事業でご指導を頂いたこともあります。
今回は、セミナーで学んだ有益な情報を、三回に分けて、ページをご覧の皆様にもお伝えしたいと思います。
新型コロナウイルスCOVID-19によって3つの危機が起きている (Mental Health Pandemic)
3つの危機
セミナーでは、コロナウイルスCOVID-19の感染拡大によって、3つの危機が起こっていることが示されました。その3つとは、①生存の危機②人間関係の危機③次世代の危機です。
①生存の危機
感染の危険・経済的困窮など、私たちの生存が脅かされています。
②人間関係の危機
外出自粛や在宅勤務などによって、家から外に出ることが出来ず、人とつながる機会が制限されてしまっています。
③次世代の危機
休校によって教育機会が失われること、コロナウイルスCOVID-19の感染、虐待件数の増加など、子供たちも様々な困難にさらされています。
これら3つの危機にさらされることが、「人々のこころの健康の悪化のリスクとなっている(Mental Health Pandemic)」と説かれています。
新型コロナウイルスCOVID-19の3つの顔を知る
この3つの危機についてのお話を聞いて、私は新型コロナウイルスの3つの顔(3つの感染症)について、思い出していました。
「新型コロナウイルスCOVID-19の3つの顔」とは、日本赤十字社の先生方が、新型コロナウイルス感染拡大下における、体・心・社会への影響を、「3つの感染症」と称して、説明してくださったものです。先ほどの「3つの危機」は感染拡大による環境の変化が強調されておりますが、こちらは人への影響を強調したものになっています。詳しくはこちらの本サイトをご覧いただきたいのですが、本記事でも簡単に概要をご説明したいと思います。
3つの顔とは
新型コロナウイルスCOVID-19の3つの顔とは、①病気、②不安、③差別です。この3つが悪循環になり、感染が拡大していくのです。詳しく見ていきましょう。
①病気
まず、第一はウイルスによって生じる病気そのものです。このウイルスは、感染者との接触によって移り、風症状や肺炎を引き起こします。また、症状が現れない人もおり、感染が水面下で拡大する点も特徴です。
②不安
そのような特性上、いつウイルスに感染するかがわからない状況です。加えて、ワクチンや薬も開発されておらず、私たちは強い不安を感じています。
③差別
不安は人を、自己防衛モードにします。なにがなんでも生き残ろうとするモードです。このモードの時、人は危険なもの、自分を脅かすものを排除しようとします。ウイルス感染拡大下では、少しでも疑わしいと思われる人(感染の多い地域の人・感染者の援助にかかわる人・抵抗力の弱い人・咳をしている人など)への差別につながります。
3つの顔の悪循環
未知のウイルスの感染が拡大し→不安が生まれ→自己防衛モードによる差別が生まれ→差別を恐れて、受診や相談をためらい→感染が拡大し、→不安が生まれ…。といった悪循環が起こることが想定されます。
3つの顔に対処する
では、私たちは①病気②不安③差別にどうやって対応すればいいのでしょうか?
病気
病気に対しては、手洗い・咳エチケット・人込みを避けるなどの対策をしっかりと行うことです。
不安
不安に対しては、気づく力(自分の状況を冷静に整理し、検討する)・聴く力(悪い情報にばかり目を向けて、不安になっている自分を見つめる)・自分を支える力(日々の生活を変わらずにこなす)を高めることが大切です。
差別
差別に対しては、不確かな情報を広めない、差別的な言動に同調しない、この事態に対応しているすべての人たちに「ねぎらいと敬意を払う」ことを心がけましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、大野裕先生のwebセミナーの中から、「新型コロナウイルスCOVID-19による3つの危機(Mental Health Pandemic)」についてまとめました。
そのことに関連して、「新型コロナウイルスCOVID-19の3つの顔」とその対策について、日本赤十字社の記事を参照しながらお伝えしました。
新型コロナウイルスCOVID-19の感染が拡大し、私たちの生活は大きく変わりました。
それにより、生存・人間関係・次世代が危機にさらされ、そのことによって、私たちの心の健康は大きく脅かされています(Mental Health Pandemic)。
次回は、「認知行動療法的なMental Health Pandemicへの対応」について、お伝えいたします。
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<行動活性化についての記事はこちら>
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関連する情報
監修
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【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。
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