AUDITで知ろう あなたのお酒のリスク
【目次】
AUDITとは
AUDITの基準
まとめ
はじめに
WHO(世界保健機関)の報告によると、アルコールは200以上の疾患、けがの原因であるとされています。
また、様々な健康問題の背景に、アルコールの問題が隠れていることがあります。
前回の記事では、飲酒量の目安は、男性では1日平均20g、女性ではその10g以下(節度のある適度な飲酒)とされ、それ以上になると様々な疾患のリスクが高まることをお伝えしました。
しかし、アルコールは依存性の薬物であり、飲酒量はどんどん増えていく傾向があります。お酒に強い体質の人ほどその傾向があります。
飲み会の時だけの嗜みが毎日の日課になり、耐性が形成されてたくさん飲まないと酔えなくなり、次第に、酔いつぶれたり、記憶をなくしたりなど、強い酩酊状態になるまで飲むようになります。
朝も昼も飲んでいるわけではないけど、仕事が終わったら、すぐにコンビニに直行してチューハイを1缶。
そのあと家に帰って、ビールを3-5本。アルコールが入っていないと落ち着かないのです。軽い離脱症状が起こっている可能性があります。平日は仕事があるので、飲まないでいられますが、週末や連休に気が緩んで一度お酒を口にすると、飲みたい気持ちが止められなくなり、また酔いつぶれるまで飲んでしまいます。
連休であれば、「泥酔するまで飲んで眠り、目が覚めたらまた、泥酔するまで飲んで眠り…」を繰り返すことも。自分の意志では飲酒がコントロールできなくなりつつあります。最終的にはありとあらゆるものが(仕事・家族・生きがい・社会的信用など)が飲酒に塗りつぶされてしまいます。アルコール依存症の完成です。
アルコール依存症になると、あらゆるがん、高血圧、高脂血症、糖尿病、高尿酸血症、肝臓の病気、脳の器質的・機能的変化、不眠症、うつ病など様々な精神疾患などの様々なリスクが上昇します。
「命にかかわるから」と、医者にきつく止められても、家族が泣いてお願いしても、その場では「もうやめよう」と決心するのですが、飲みたい渇望に対して、その決心は無力です。脳に変化が起こり、自分では飲酒をコントロールできなくなっているのです。アルコール依存症は放っておけば、死を招く病気です。
私たちは、自分の飲酒を顧みる必要があります。飲酒を続ける限り、依存症のリスクはついて回るのです。
よって、今回は、現在の飲酒習慣が「適切か、健康や日常生活に影響が出るほどか」をチェックするAUDIT(The Alcohol Use Disorders Identification Test)というテストについてお伝えします。
AUDITとは
WHOにより作られた、お酒の飲み方をチェックする検査です。国際的に広く使用されています。早速やってみましょう。
(Q2の1ドリンクとは、純アルコール換算で10gです。たとえば、ビールロング缶1本=2ドリンク、日本酒1合=2ドリンク、チューハイレギュラー缶1本2ドリンク、ワイングラス1杯=1ドリンク、焼酎ロック1杯=2ドリンク)
AUDITの基準
8点を超えると、問題飲酒となります。
8-14点の場合は、アルコール依存症のリスクが高い人たちです。最近は、減酒外来(最近、開発された“減酒薬”ナルメフェン(セリンクロ)による治療)やプレアルコホリック外来(生活習慣病予防や酒害再発予防のための治療)なども存在します。専門機関に相談してみましょう。
15点を超えると、アルコール依存症の可能性が高い人たちです。直ちに、専門機関に相談しましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか? 本人にとっても、周囲にとっても、自分の飲み方が“問題飲酒”なのか、“酒好きの嗜み”なのかをはっきり分けることは難しいです。
また、お酒を飲んでいる本人は、飲酒をコントロール出来ているつもりになっていることも多い(ex「朝や昼は飲んでいないからアルコール依存症じゃない」と言って、深夜まで次の日にもアルコールが残る量の飲酒を繰り返す。など)ですし、酔っ払って記憶をなくしていたりして、自身の飲酒行動の問題性を自覚しづらいものです。
このような、チェックリストを利用して、自分の飲酒行動を客観的に調べてみることはとても大切です。
あらたまこころのクリニックでは、アルコールの問題に対して、薬物療法をはじめ、グループ療法(グループミーティング・SMARRP・断酒会やAAなど自助グループの紹介)、デイケア、個別面接などを行っております。詳細はこちらをご覧ください。
関心のある方は、一度、医師にご相談ください。
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<アルコール依存症についての記事はこちら>
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関連する情報
監修
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【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。
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