高齢者のうつ病を予防しよう
【目次】
まずは、心の健康度をチェック
心と体が疲れてきたと感じたら
まとめ
はじめに
高齢期は配偶者や友人との死別、退職により役割がなくなるなど、喪失感を抱きやすく、うつ状態になりやすい時期です。
うつ病によって意欲が低下すると、何事にもおっくうになります。おっくうだからと、何もしないでいると、体力や認知機能の低下を引き起こし、様々なリスクにつながるため、注意が必要です。
よって今回は、高齢者のうつ病を予防していく方法についてお伝えします。
(※高齢者のうつ病についてはこちらをご参照ください。)
まずは、心の健康度をチェック
心の健康度をチェックしてみましょう。下の5項目の質問のうち、最近2週間の様子に当てはまるものにチェックをつけてください。
- 毎日の生活に充実感がない
- これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなった
- 以前は楽にできていたことがおっくうに感じられる
- 自分は役に立たない人間だと思う
- 疲れが取れない・何かしたわけでもないのに疲れている
2項目以上当てはまり、毎日の生活に支障が出ている場合は、うつの可能性があります。医療機関などに相談しましょう。
先ほどお伝えした通り、うつ病によって活動性が低下することは、高齢者にとって心身の健康上大きなリスクとなります。うつ病を予防and治療することは、高齢者の方々のこれからの人生にとても大切なことです。
気になる点があったら、医療機関や地域の相談窓口にご相談されることを強くお勧めします。
心と体が疲れてきたと感じたら
先ほどのチェックには当てはまらなかったけど、「疲れが気になる」「少し意欲が下がっている」と感じられた方は、以下に示すポイントに気を付けながら、疲れた心身を休めていきましょう。
「ちょっと気になる」段階で予防することがなにより大切です。自身の状態に繊細に気付いて、自分をいたわってあげてください。
生活リズム~生活ルーティンを決める~
できるだけ決まった時間に起床し、決まった時間に床に就くようにして、生活リズムを整えましょう。生活のリズム(ルーティン)が決まることで、「やる気が起きない」「眠れない」といった症状を予防します。
睡眠~質の良い眠りのために~
質の良い睡眠のためには、
- 決まった時間に就寝・起床する
- 朝日を浴びる。
- 夕方に、体をほぐす軽い体操(ヨガやストレッチなど)をするのもおすすめです。
- 夕食は腹八分目
- アルコールやカフェインなどの刺激物は控える
- ぬるめのお風呂にゆっくりつかる
- 寝床であれこれ考えない
といった、工夫をするとよいでしょう。
※ちなみに、睡眠時間が短いから不眠というわけではありません。日中元気に活動できていたら、短くても質の良い睡眠がとれているということです。年齢を重ねると睡眠時間は短くなるのが普通です。
食事~1日3食バランスよく~
栄養バランスの良い食事を心がけます。1日3食、規則正しくとるようにしましょう。朝食は一日体に活動のサインを与えます。夕食は腹八分目にしておくと、睡眠の質を妨げません。
趣味~無理にすることはない~
無理に何かを始めたり、再開したりする必要はありません。精神的に疲れているときはそれが負担になってしまう時があります。心が落ち込んでいるときは逆に、「何かしなきゃ」と焦ってしまいがちですが、何もしないで落ち着けるようになることが実は大切です。
(※元気が出てきたときには、趣味の時間を持つことはとても大切です)
交流~地域の活動に参加してみよう~
地域の健康教室やクラブ活動などの活動に参加してみましょう。同年代との交流や健康づくりを通して、生活をよりよくするきっかけになります。
相談~つらい気持ちを少し話してみる~
ゆっくり少ずつ、悩み・ストレス・つらさを口に出してみてください。信頼できる人や専門家に話をすることが解決の糸口になったり、気持ちを和らげたりします。
休養~落ち着ける場所でゆったりと~
「疲れやすい」「なにをするのもおっくう」など、いつもと違う感じがしてきたら、自分をゆっくり休ませてあげましょう。心と体の疲れをいやしてあげます。無理に仕事や会合にもいきません。「休むぞ!!体の疲れをとるぞ!!」と頑張らないようにしましょう。慣れ親しんだ、落ち着ける場所を選んでゆっくりします。
頑張りすぎない~何とかしようとしすぎない~
精神的に疲れてくると、「食べられない」「寝られない」と、「○○できない」ことに焦ります。眠れなくても、「寝たくなったら寝よう」、食べられなくても「おなかがすくまで待とう」、悩み事は「一度寝てから考えよう」。今日できなくても、明日やってみればいいのです。
まとめ
高齢期は様々な出来事が重なり、うつ病になりやすい時期です。
うつ病による意欲低下・活動性の低下は、心身の健康を害する様々なリスクとなる為(寝たきり・認知症など)、うつ病を治療と予防することは高齢期においてとても重要になります。
そのため、心身の不調(高齢者のうつ病は、疲労感・痛み・病気の心配など体に出やすい)を感じたら、医療機関などに相談することを強くお勧めします。
また、おっくう感・疲労感などを軽く感じた際は、無理をせずに、自分をいたわって差し上げることが、うつ病の予防につながります。
関連する情報
監修
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【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。
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