パニック障害が起きた初期の時のポイント
パニック障害の2つの顔
パニック障害は、慢性の病気になることもあります。パニック発作が強烈に表に現れるので意識されるので、自分も周りも病気のことを「分かっている」つもりになりがちですが、その一方で、気づかず正体不明で進行するという2つの顔を持っています。パニック障害は、パニック発作だけが症状ではないのです。と言うのは、パニック発作などの症状が治ったりぶり返したり、または別の目立たない症状が出てきたりと慢性の経過を辿ることがあります。これは、つらいのですが、初めて発作が起きた直後は別として、この段階にいると、なかなか自分がどんな状態か?、何に気をつけたら良いのか?分からないことがあります。
強烈なパニック発作だけを心配し、「パニック発作が起きてないから大丈夫」と身の回りの日常生活が、不自由になったりしているのに気がつかないか、訳が分からず漠然と不安なまま日々を送っていることがあります。つまり、パニック障害の慢性化です。パニック障害の慢性化というのは、ずっと強烈なパニック発作が続いていくのではなくて他の形をとっていくこともあります。
今回、パニック障害の2つの顔をお伝えするとともに、パニック障害の患者様に気を付けてもらいたいポイントを5つにまとめました。初期の急性期とその後に続く「慢性期」後半に2回に分けてポイントをお伝えします。お役に立てば、幸いです。
1:急性のパニック発作→突然の恐怖
パニック障害は、突然、心臓がドキドキし、息ができなくなり、呼吸困難、胸の痛み、めまい、はき気、震え、手足のしびれなどの身体症状が出現し、「自分は、どうなってしまうのか分からない」「死んでしまうではないか?」と恐怖、不安に襲われるといったパニック発作が起きます。パニック発作は15分以内にピークに達し、通常、数十分程度で自然と収まるため、救急車で救急病院を受診しても、ほとんどの場合、そのまま帰されます。心電図など身体的検査をしても、特に異常は見当たらず、「どこも悪くない」「気にしすぎ」「これ以上どうしようもない」といった説明だけで終わるか、自律神経失調症などの診断を受け、心療内科、こころのクリニック、精神科に受診するように勧められたりします。 パニック発作は本来は、大昔から私たちが持っている危険から身を守るための安全装置なのですが、誤作動をおこすとパニック発作になります。ですから死んでしまうような体の病気ではありません。パニック発作は、けっこう多くの人に見られ、10人に1人くらいです。パニック発作が繰り返し起きて、予期不安や広場恐怖が加わるとパニック障害で、100人に3人くらいです。
2:パニック発作の予期不安 脳に恐怖が刻まれ体に現れる
突然起こるパニック発作の恐怖が脳に刻み込まれているので、また「同じようなパニック発作症状が起こったらどうしようか?」と言う予期不安が強くなってきます。
「症状が起きたら大変なことになる、死んでしまうかも」というのは破局的認知と呼びます。特にパニック発作と似た体の感覚も怖くなり敏感になります。動悸や息苦しさ、のどのつまり、手の寒気や熱感、ほてりなどは、日常生活で、しょっちゅうあることですが、パニック発作と似ているので、ささいな体の感覚にも過剰に怖くなります。その結果、発作が起こりそうな場所を避ける回避行動(広場恐怖、空間恐怖)が現れ、中には、やる気が出ない・気持ちが沈むなどの抑うつ症状を呈する方もおられます。
急性のパニック発作だけでなく、ちょっと体の具合が悪くなると、それが、真夏、会社でクーラーの冷たい風が体に当たった時や、梅雨時、蒸し暑い満員電車でムア-と感じた瞬間でも、「それが引き金でパニック発作が起きるのではないか?」と怖くなります。するとパニック発作が起きやすくなり、会社や電車の中で、急に心臓がドキドキして、息苦しくなり、めまい、気が遠くなり、死ぬかもしれないと恐怖になります。職場から離れたり、電車を降りると落ち着いてきます。職場の人が驚いて救急車を呼んで病院に付く頃には落ちついています。
ちょっとしたことでパニック発作がおきるのは身体感覚過敏ということが起きているのです。
これは「弱いパニック発作が、常に起きている状態」です。
「またパニック発作が起きたらどうしよう?」と、パニック発作の予兆らしき体の異変に注意が集中して、危険に対して脳が身構え、交感神経がアイドリング状態になっています。
ですから、ちょっとしたことで反応してしまいます。
重要なポイントは、本来は、危険な体の病気ではなく、ドキドキ,生き苦しさなどのパニック発作は、本来は危険から身を守るための交感神経(自律神経)反応です。それを危険と間違えて脳が学習して、様々な悪循環が起きているのです。ここを正しく治療するとパニック障害は良くなってきます。
川柳で「オバケが怖いと思っていると、柳を見ても、オバケに見えて怖くなる」とありますが、似た感じです。オバケに見えたものは、柳です。オバケなんて居ません。
まとめ
1 パニック発作では、突然、心臓がドキドキし、息ができなくなり、呼吸困難、胸の痛み、めまい、はき気、震え、手足のしびれなどの身体症状が出現し、「自分は、どうなってしまうのか分からない」「死んでしまうではないか?」と恐怖、不安に襲われます。発作は数十分程度で自然と収まります。
2 パニック発作の時の恐怖は、とてつもないものです。その記憶が脳に刻み込まれ、「同じようなパニック発作症状が起こったらどうしようか?」と言う予期不安が強くなってきます。予期不安により、常に発作に身構えている状態が作られ、それがさらに発作を起こりやすくします。身体感覚に過敏になり、ちょっとした体の変化で不安が高まります。
3あらたまこころのクリニックでは薬に加え認知行動療法やグループ療法で、パニック障害の対処法を身に付け、自己効力感を持って生活が送ることを目標にしています。発症年齢20から30歳女性に多いので、妊娠、出産を望まれる年代に重なってくるので、薬を減らす意味でも、認知行動療法などがお勧めです。
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<パニック障害についての記事はこちら>
パニック障害の
パニック障害を正しく知って治療を計画的に進める 治療ガイダンス(入門記事の目次あり)
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関連する情報
監修
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【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。
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