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公開日: |更新日: 自律神経失調症パニック障害

自律神経失調症の正体 パニック障害が関係していることもある

自律神経失調症の正体 パニック障害が関係していることもある

自律神経失調症不安との関係

 自律神経失調症は慢性的に続き、時に突然に悪化し不安になってくる病気ですが、自律神経失調症の患者さんとたくさんお会いしていると、季節の移り変わりの時期や雨など天候の変動が大きいときなどとも関係するように思えてきます。

6月も後半になりました。天気の移り変わりも激しいこの季節、朝晩の気温差や気圧の変化が大きく、日が長くなり、朝早くに目が覚めたり、体調を崩しがちになりやすいですよね。

 では、皆さんの「体調を崩す」にはどのようなものがあるでしょうか?。

 胸がドキドキする、手が震える、はきけがする、喉が詰める、頭が痛い、なんだか息苦しい、胸が苦しい、軽いめまい、手先が冷たい感じ、しびれる、顔のほてり、いつもより汗をかきやすいなどによって様々な症状があると思います。自律神経失調症ではないかと悩む人もいます。

 どの症状をとっても不快な感覚だと思いますが、これらは、日々刻々と、気温や湿度、気圧などが変化する環境で、暮らしていく限り、時々は体験する自然な体の症状です。

しかし、このような不快な体の感覚が、不安感や発作を引き起こすことがあります

それは、自律神経失調症と呼ばれる症状です。もともと自律神経は、交感神経と副交感神経の2つで体の調節をしているのですが、ストレスなど不安が強いと影響を受けます。心のアクセルと呼ばれる交感神経が強くなり、慢性のパニック障害の身体症状(弱いパニック発作が常時起きてアイドリング状態)になる場合が考えられます。

自律神経失調症にはいろんな病態が含まれている

 また、これとは別に、発達障害などの場合、特に自閉スペクトラム症では、外部からの感覚が過敏な一方で体の内部感覚には鈍感になったりと、胃腸などの調整がうまく行かず不調が生じ、そこに、こだわっててしまい、悪循環に陥いることあります。また元々不安が強いので、上記のように不安から身体症状が生じたりします。このように自律神経失調症と一口に言っても、いろんな病態が含まれています。

 しかし、なんと言っても、不安→交感神経が過剰に活動といった流れが大きく関わっています。パニック障害とのも関係してきます。

自律神経失調症とパニック障害の慢性症状の関係

 体の感覚、特に皮膚などの感覚から不安を起こし、そのことで皮膚の感覚に意識が集中し、ちょっとの皮膚の変化でも、敏感に反応します。そことで、また不安になるので、いつも小さな不安が続いている状態が続きます。時に、何かの拍子に急変すると自律神経失調症の交感神経症状が強く出てきます。ドキドキする、めまい、のどが詰まるなどの症状です。ここで死んでまうような恐怖が出ると、パニック発作と呼ばれる体の症状と恐怖です。この「突然」というのが、つらいところです。パニック障害の人は、発作が起きているときには「心臓や脳の重い病気だったらどうしよう?」と不安になります。発作が起きていないときには「また発作が起きるのではないか?」という予期不安に脅えて暮らします。電車に乗れない、車で渋滞、高速道路、ショッピングモールに入ると怖いなど避けるてしまう苦手な場所ができて日常生活に支障をきたすこともあります。

何回も、パニック発作がおきると、起きていないときの体の症状に意識が集中します。体の異変が気になって仕方がなくなります。

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パニック発作と慢性的に続く体の症状の例(自律神経失調症)

 心臓が、ドキドキする

□ 汗をかく

□ 体や手足が震える

□ 足が、ぐらぐらする

□ びれ、うずき感

□ 寒気、ほてり

□ 息苦しい、息ぎれ

□ のどがつまる

□  胸の痛みまたは不快感

□ はき気、腹部のいやな感じ

  めまい、ふらつき

  気が遠くなる感じ、気を失って倒れるのではないか?と心配

  目がぼやける、ゆがむ

 周りの人や物、風景の現実感がなくなる、自分が自分でない感じ

 コントロールを失うことや、気が狂ってしまうのではないか?という心配

□   胃がムカムカする、そわそわする

 胃が、しめつけられる

 自分の身体から遊離している感じ、部分的にしか存在していない感じ

  死ぬのではないか?と怖くなる

 

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 この状態が続くと、パニック障害の人は、ささいな身体の状態の変化、異変に対して過敏になり、過剰に心配されます。

ドキドキする、心臓の病気ではないか」

「息苦しい、過呼吸の前兆かも」

「はき気がする、このままだと吐いちゃうかも」

「朝からめまいがする、発作になって倒れてしまうかも」

 

 本来、心臓のドキドキや息苦しさといった体の症状は、人間が危険を察知すると生じる誰にでも起きる自然な体の症状です。

ところが、パニック発作を繰り返すうちに、これが逆転し、自分の気になっている体の症状を危険だと感じるようになってしまいます。

このような、身体症状に過敏になってしまう症状を、身体感覚過敏といいます。

これは、お薬だけの治療では、なかなか改善しないことが多いようです。

この身体感覚過敏に対して、あらたまこころのクリニックでは身体感覚曝露という治療を定期的にグループ療法の中で行っています。

身体感覚曝露は、苦手な身体感覚を計画的に引き起こし、体験やグループでのメンバーとの共感、励ましを通して、「息苦しい、喉のづまり、ドキドキなど発作に似た身体感覚が起きても安全なんだ」ということを体験的に学ぶ治療法です。

この治療を通して、自律神経失調症と呼ばれる、身体感覚過敏慢性的な体の不調不安感から開放されることを願っています。

まとめ

天候の変動が大きい時、梅雨や夏は不快な皮膚の感覚や体の状態になることが多く、パニック障害のきっかけになりやすい。

パニック発作のような急激な発作ではなく、小さな体の不調が続き、そのことばかりに注意が向いてしまい、

漠然とした不安、モヤモヤが頭から離れない。

自律神経失調症ではないか?と悩んでいる。

それらの悩みはパニック障害が、奥に隠れているかもしれません。

ご興味のある方は、まずは医師にご相談いただければと存じます。

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<パニック障害についての記事はこちら>

パニック障害のグループ療法のご案内

パニック障害のケースで学ぶ!薬に頼り切らない治療。

パニック障害治療を妨げる3つの誤解について

パニック障害を正しく知って治療を計画的に進める 治療ガイダンス(入門記事の目次あり)

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関連する情報

監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。