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公開日: |更新日: パニック障害

パニック・パニック発作・パニック障害はどう違う?

パニック・パニック発作・パニック障害はどう違う?

はじめに

 パニック障害(Panic disorder)の語源は、ギリシア神話の神、Pan(パン)に由来すると言われています。Panは山羊に似た角と足をもつ牧神で、昼寝を妨げられたPan(パン)が人や家畜に突然の恐怖を与えたと言われています。

  パニック・パニック発作・パニック障害……どれも似かよった名前ですが、実はすべて別物です。では、どう違うのでしょうか?
今回は、それぞれの違いについて解説していきます。

心の状態を表す言葉であるパニック

 仕事が立て込んでくると、「パニックになりそう」、試験で知らない問題ばかりが出題されると、「パニックになった」など、私たちは日常の中で、パニックという言葉を訳が分からなくなって混乱したとき、よく口にします。パニックという言葉は、一般的に、不安や恐怖で、頭が混乱したときに使われる心の状態を表す言葉です。
皆さんもパニックになった時には、「とりあえず落ち着こう」と言い聞かせると思います。時間と問題の整理をすることで、パニックは自然と落ち着きます。

急に生じる身体症状であるパニック発作

 パニック発作とは、あるとき突然、激しい不安・恐怖感とともに、心臓がドキドキ、過呼吸、発汗、震え、呼吸困難、胸の圧迫感、吐き気、めまい、ふらつき、手足のしびれなどの身体症状が起こる症状のことをいいます。パニック発作は突然に起こり、10分以内にピーク達して、通常、20~30分くらいで治まります。
 パニック発作は、一生のうち、10%から30%の人が経験します。そのまま何もしなくてもすむ人もいれば、少しの期間だけ薬を飲んで治る人もいます。
 そしてその中で、病名であるパニック障害へと進んでいく人もいます。

病名としてのパニック障害

 パニック発作を繰り返し起こすと、多くの場合、「またパニック発作が起きるのではないか」「パニック発作のせいでコントロールを失ってしまうのではないか」などと不安になります。これを、予期不安といいます。
この予期不安が出てきた場合に、パニック障害が診断されます。つまり、パニック障害は病名ということになります。パニック発作だけなら、パニック障害と診断されません
 また、パニック発作には広場恐怖という症状を伴う方もいます。広場恐怖とは、広い場所が怖いということではなく、「パニック発作と関連がある」「もしここでパニック発作が起こると、すぐに逃げ出せない」と思える場所や状況が怖くなり、避けるようになることです。パニック障害の全ての方に広場恐怖があるわけではなく、広場恐怖を伴わない方もいらっしゃいます。
 さらに、パニック障害の方の中には、抑うつ状態うつ病が合併されている方もいらっしゃいます。これは、広場恐怖により生活や行動に制限が生じ、「自分のせいで家族と旅行ができない」「出張を断らなければならなくなり、会社に迷惑をかけた」など、自分を責め落ち込むことから起こることが多く、本来のうつ病とは違って、パニックの症状が改善するにつれて抑うつ状態も改善していきます。

図:パニック発作からパニック障害、抑うつ状態へ進む場合
(※パニック障害の人が、全員この経過になるわけではありません)

 パニック障害と診断された場合には、定期的な薬物療法や、認知行動療法などの専門的な治療に取り組むと有効であるケースが多いです。

今回のまとめ

 日常の中で自然と使われる、心の状態を表す言葉であるパニック
あるとき突然、激しい不安・恐怖感とともに、心臓がドキドキ、過呼吸、吐き気、めまい、ふらつき、手足のしびれなどの身体症状を指す言葉であるパニック発作
 パニック発作に加え、「またパニック発作が起きるのではないか」という予期不安が伴った場合に診断される、病名としての言葉であるパニック障害
それぞれの違いを知った上で、状態を見極め、慎重に治療を選択していくことが、とても重要です。

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<パニック障害についての記事はこちら>

パニック障害のグループ療法のご案内

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パニック障害治療を妨げる3つの誤解について

パニック障害を正しく知って治療を計画的に進める 治療ガイダンス(入門記事の目次あり)

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監修

加藤 正
加藤 正医療法人和心会 あらたまこころのクリニック 院長
【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。