人前であがるのは病気?社交不安障害との違い
目次
人前で「あがる」ということと「あがり症(社交不安障害・社会不安障害))」の違い
あがり症(社交不安障害・社会不安障害))は治療をすれば良くなる⁉
まとめ
人前で「あがる」ということと「あがり症(社交不安障害・社会不安障害)」の違い
「あがり症」という言葉、どこかで聞かれたことがある方は多いのではないでしょうか。「あがり症」は、人前で発表する場面などで緊張や不安が強くなり、時に話せなくなってしまったり、顔が赤くなってしまったりすることです。
そもそも、人前で「あがる」ということは、多くの人が経験する自然なことです。こうした緊張や不安があるから、準備をしたり、より良くするための努力ができるのです。
しかし、緊張や不安が強すぎて、例えば、電話に出られない、挨拶ができない・・・ひどくなると、外出が困難な状態になってしまうことがあります。このように日常生活や社会生活に支障をきたしている状態の時、「あがり症(社交不安障害・社会不安障害)」の可能性があります。「あがり症」という言葉は、正式には学術用語ではありませんが、「あがる」ことによって“日常生活に支障をきたしている”状態であれば、それは通常の「あがる」というのではなく、「あがり症(社交不安障害・社会不安障害)」であると言えるのです。
あがり症(社交不安障害・社会不安障害)では、以下のような症状が見られます。
・人前で話すときに緊張する
職場の会議や朝礼、プレゼンテーション、PTAの集まりなどで発言する際に、言葉につまってしまったり、声や体が震えてしまうのが気になる・職場や近所の人との雑談が苦手
何を話せばいいか分からなくなってしまい緊張する・電話に出るのが怖い
職場等で電話の応対をする際に、電話の相手や周りの人に変に思われないか不安になる・人ごみが怖い
混んでいる電車や人がたくさんあつまる場所で、自分の視線・匂いや言動、周りの視線が気になる・人前で字を書くときに手が震える
記帳やサインなど、人前で字を書くことに緊張し、手に力が入って震えてしまう・他人に見られている感じがして怖い
いつも否定的に見られているように感じ、他人の目に自分がどう映っているのか気になってしまう・人と一緒に食事をするのが怖い
食べ方が汚いと思われないか気になったり、全部残さず食べられないと不安になる
こうした症状は、自分にとって大事にしている領域で強く出る傾向にあります(どうでもいいような場面では、人はあまり緊張しません)。つまり、緊張したり不安になるということは、それだけその状況や相手を大事に思っているということなのです。しかし、それだけ大事な場面で、緊張や不安が強すぎて日常生活に支障をきたしている状態は、「あがり症(社交不安障害・社会不安障害)」といえます。
といっても、“ここからはあがり症(社交不安障害・社会不安障害)”というような、一律の明確な基準を設定することは難しく、その方の日常生活を考慮した診断が必要になります。
あがり症(社交不安障害・社会不安障害)は治療をすれば良くなる⁉
「あがり症は性格だ」と思われている方は多く、どうしても、「性格だから治らないのではないか」と感じられて、受診をためらわれる方も多いようです。というのも、あがり症(社交不安障害・社会不安障害)は、思春期、つまり人生の早い段階で発症することが多く、そのために、「昔からこうだから今さら治らない」と感じられることも自然なことかもしれません。
また、「こんな風に悩んでいるのは私だけだ」と孤独感を感じたり、ただただひたすら耐えてきた、という方も多いです。「こんなことを相談しても良くならない」と思って、治療を諦めてしまう方もいるかもしれません。
しかし、対人場面での過度の緊張や不安によって日常生活に支障をきたしている状態は、単に「あがる」のではなく、治療が必要な病気、つまり「あがり症(社交不安障害・社会不安障害)」の可能性があり、この「あがり症(社交不安障害・社会不安障害)」は、薬物療法や認知行動療法などの治療をしっかりと行うことによって良くなることが期待されます。正しい知識を持って、きちんと治療を受けることが大切です。
まとめ
人前で緊張したり不安になって「あがる」ことは、多くの方が経験する自然なことです。こうした緊張や不安があるから、準備をしたり、より良くするための努力ができますし、緊張したり不安になるということは、それだけその状況や相手を大事に思っているということでもあります。
しかし、これらの症状によって日常生活に支障をきたす状態は、通常の「あがる」というのは違い、「あがり症(社交不安障害・社会不安障害)」の可能性があります。
「あがり症(社交不安障害・社会不安障害)は、治療をきちんと行えば改善する病気ですので、是非一度ご相談ください。
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<社交不安障害(あがり症)についての記事はこちら>
社交不安障害・社会不安障害・あがり症から考える、薬に頼り切らない治療。
【ガイダンス】あがり症・社交不安障害を正しく知って治療を計画的に進めましょう(入門記事の目次あり)
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監修
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【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。
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