不安とは?
パニック障害の方は、苦手な状況や身体感覚(例えば、動悸、発汗など)で、自分をコントロールできなくなったり、パニックになったり、気を失ったりするのではないかと不安になります。そもそも不安とは何でしょうか?
●不安は身の危険を知らせる信号です
地震が起こって津波がすぐ近くまで迫ってきた状況を想像してみてください。あなたは、驚き、高台へ向かって走って逃げようとするでしょう。
このとき、あなたの脳は危険を察知し、不安が発生します。不安は、危険を知らせる危険警報なのです。危険警報が発令されると、直ちにアドレナリンが放出され、交感神経が活発になります。交感神経が活発になると、呼吸数が増え、心拍数や血圧が上昇し、筋肉が緊張します。こうした体の反応が生じることで、酸素が素早く体に取り入れられ、より多くの血液が全身に送られ、何かあったときにすぐに動くことができるようになります。これにより、あなたはより速く動き、怪我を避け、危険を逃れることができるのです。
これを、逃げるか闘うか反応といいます。
●逃げるか闘うか反応
逃げるか闘うか反応で起こる体の変化には、以下のようなものがあります。
こういった一連の体の変化は、無駄に症状が出ているわけではなく、どれも最大限に速く動き、怪我を避け、危険から逃れるためのものです。
例えば、呼吸が速くなり、心拍数・血圧が上がると、より走りやすくなります。筋肉が緊張すると、すばやい反応が可能になります。発汗して体が冷えると、冷静な判断がしやすくなります。また、危険な状況のとき、大切なのは筋肉です。体は筋肉に血液を送ることを優先し、消化器官や脳に行くはずの血液も二の次になると、はきけやめまいの症状が起こります。
●間違い警報
パニック障害の方は、危険信号に敏感になり、本来は危険でない状況でも誤って警報が鳴り、逃げるか戦うか反応が起こるのです。つまり、他の人なら不安を覚えないような状況で不安を感じ、様々な身体反応が生じるようになるのです。例えば、地下鉄に乗るだけで不安になり、動悸、息苦しさ、めまいが起こってしまいます。
●不安は有益なものです
不安になることが悪いということでは決してありません。適度な不安は、私たちが生きていく上で、大切な意味や役割を持っているのです。
不安は集中力・注意力を高めてくれます。適度な不安を感じているときのほうが、集中力が上がり、生産性が上がったりします。一方、不安を強く感じすぎると物事に集中して取り組むことが難しくなり、パフォーマンス能力は落ちます。不安が全くないと、力が抜けてしまい、いろいろなことに取り組めなくなります。
また、不安は自分を守るためにも大切です。雨の強い日に車に乗るとき、ブレーキが効きにくい、ハンドルもとられやすいだろうと不安を感じると、いつもよりスピードを控えて慎重に運転できます。一方、まったく心配しないで、大丈夫、大丈夫といつもどおりに運転するほうがよほど危険です。
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パニック障害を正しく知って治療を計画的に進める 治療ガイダンス(入門記事の目次あり)
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監修
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【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。
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