うつ病はどんな病気?症状や回復過程の特徴についてわかりやすく解説。
うつ病は、誰にでも発症し得る病気で、日本人の15人に1人は一生のうちに一度はうつ病を経験するといわれています。女性は男性の約2倍の方がうつ病に悩んでおり、うつ病の種類もさまざまです。
今回はその中でも代表的な、抑うつ状態だけが起こるうつ病(大うつ病性障害)を中心に解説していきます。うつ病でお悩みの方の参考になれば嬉しいです。
うつ病はどんな病気?
うつ病は、気分が落ち込む、憂うつ、などの強い抑うつ状態が長く続き、日常生活に支障をきたしてしまう病気です。”一時的で、日常生活に支障をきたさない気分の落ち込み”は、うつ病とは言いません。
うつ病での「うつ状態」というのは、“物事に対する関心や取り組む意欲が失せて、何もする気が起こらない状態が一日中ずっと、ほとんど毎日、2時間以上にわたって続いた状態”をさします。
うつ病にはさまざまなタイプがあり、一般的なうつ病の他に、女性ホルモンの影響やライフイベントを通じてのストレスからくる女性のうつ病や、従来の典型的なうつ病とは外見的な症状が異なる新型うつ病などがあります。
うつ病の症状とは
うつ病の症状は精神的な症状と、身体的な症状の2種類があります。ここでは、それぞれの症状について具体例を出しながら解説していきます。
うつ病の精神症状
うつ病の精神症状では、気分の落ち込み、意欲の低下など、不快感などのこころの症状があらわれます。物事の捉え方が否定的になり、イライラするだけでなく、いつもと違う行動も増えてきます。具体的には、以下のような症状がよく見られます。
- 気が沈む。気が重い。
- 今まで好きだったことが楽しめない。
- テレビを見ても、音楽を聴いても楽しくない。
- 特に朝方は無気力で、何もする気が起こらない。
- 仕事の効率が上がらず、何をするのもおっくう。
- 人との会話・議論に集中できない。
- イライラしてじっとしていられない。
- お酒の量が増える。
- ボーっとして事故やケガをしやすい。
- 自分の人生がつまらなく感じる。このまま消えていなくなりたいと感じる。
うつ病の身体的症状
うつ病は精神症状が注目されがちですが、精神症状より先に、体の不調が現れることもあります。よくある身体症状としては、不眠などが挙げられます。その他具体的な、身体症状は以下です。
- 夜ぐっすり眠れず、朝早く目が覚める。
- 食事が進まず、美味しいと感じられない。
- 疲れやすく、身体がだるい。
- 首すじや肩がこって仕方がない。
- 頭が重いと感じる。
- 頭が痛い。
- 息がつまって、胸が苦しい。
- ノドの奥に物がつかえている感じがする。
- 性的な関心がうすれ、性欲が低下する。
また、うつ病の身体症状は、あまり知られていないため心療内科・精神科などの専門医を受診しないとうつ病だと気付きにくいのも特徴です。うつ病患者であっても医師に症状を訴えず、症状が悪化してしまう場合があるため注意が必要です。
うつ病と痛みについては、別の記事で解説しておりますのでぜひこちらも合わせてご覧ください。
関連記事:うつ病と痛み
当院に相談いただいた、うつ病の方の症例
主婦Aさんの場合(うつ病にあがり症(社交不安障害)が合併していた例
Aさんはうつ病にあがり症(社交不安障害)が合併していました。①「朝起きて」、②「家事をしないといけない」と思い、家事をすることに対して、③「おっくう」になり、おっくうな気持ちから、④「からだが重くなり」、⑤「横になりました」。だらだらしている自分に対し、⑥「私はダメな人間だ」という思いに駆られました。
結局、⑦「家事ができない」ため、また②「家事をしなければならず」、③「おっくう」になるという悪循環が生じます。主婦Aさんの場合、薬物療法と治療プログラムとの相性がいいでしょう。
会社員Bさんの場合(うつ病にパニック障害が合併していた例)
会社員Bさんは、パニック障害が合併していました。①「朝起きて」、②「仕事に行きたくない」と思い、③「憂うつ」になり、④「頭やお腹が痛くなり」、⑤「会社を休みました」。会社を休んだことで、⑥「こんな自分は情けない」という気持ちが生じました。
⑦「上司から怒られ」、また②「仕事に行きたくない」と思い、③「憂うつになる」という悪循環が生じます。会社員Bさんの場合、薬物療法と通常のプログラムに加え、 復職支援プログラム などが有効になりそうです。
うつ病の回復過程について
うつ病は病初期(病気の初期段階)→回復期→維持期(安定期)と段階を追って徐々に回復していきます。それぞれの段階や症状の状態に応じて適切な治療も異なるため、自分がどの段階にいるのかを知り、落ち着いて治療に向き合うことが、一日も早い回復に繋がります。
ここでは、それぞれの回復過程について解説していきます。
病初期(急性期)
うつ病の症状が最も強く出ている時期で、十分な休養と薬物療法が基本となります。治療を始めると、多くの患者さんはまずイライラや不安といった症状がとれ、次に憂うつな気分が和らいでいきます。回復の過程で症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すこともありますが、服薬を続けることで症状が徐々に改善していくため、焦らずに治療を続けることが大切です。
回復期
さらに治療を続けると、次第に物事に対する興味や楽しみ、生きがいも再び感じられるようになります。うつ病は、一度にすべての症状がなくなるわけではなく、ひとつずつ段階的に改善し時間をかけて徐々に消えていくものです。最終的には元の状態にまで回復していきます。
しかし、回復期になって安心し服薬などをやめてしまうと、考え方や行動、生活パターンが悪循環に陥り、自力で抜け出せなくなることもあります。そのためには、専門医による適切な薬物療法や、治療プログラムが必要です。
維持期(安定期)
この時期にはうつ病の症状もだいぶ落ち着き、ある程度普段の生活に戻ることができます。ただし、うつ病は一度よくなっても再び症状が出現したり、しばらく経ってからまたぶりかえしたりすることのある病気です。
このため、症状が改善してからも再発を防ぐために、抗うつ薬の量を加減しながら薬物療法を続ける必要があります。社会復帰を果たし、「やっと治った!」と思っても油断は禁物です。一度再発すると更に再発のリスクが高まるためここで完全寛解(症状が完全になくなる状態)を目指す必要があります。
薬をやめるタイミングは医師の指示に従い、自己判断で薬を減らしたりやめたりしないことが大切です。うつ病は再発リスクのある病気です。再発リスクや再発しないために必要なことは以下のブログで解説しています。
関連記事:うつ病の治療経過と再発リスクとは?
それぞれの回復過程でうつ病患者さんに接する際のポイント
うつ病患者さんに接する方は、励ましたり、心配する気持ちもわかります。ただし、過剰な励ましや心配は返って逆効果になることもあるため、患者さん本人のペースを尊重してあげましょう。
それぞれの回復過程でのポイントを以下にまとめました。家族の方は友人の方はぜひ参考にしてみてくださいね。
病初期(急性期)
何より休養が大切な時期です。やたらに励ましたりせず、患者さんがゆっくり休める環境づくりに協力してあげてください。患者さんの不安に巻き込まれたり、周囲からの不適切な忠告に惑わされないことも大切です。
回復期
患者さんや、普段から接する方自身も焦りが出る時期です。接する人が焦らないことはもちろん、患者さんが焦っている時にはブレーキをかけたり、患者さんの様子を客観的にみて伝えてみましょう。
維持期(安定期)
回復が見えてきたら、日常の生活に少しずつ少しずつ慣れていけるようにサポートしてあげてください。ここでも、本人のペースを尊重し、できなくても否定したり非難せず協力者であることを伝え、支えてあげてください。
うつ病の回復に向けて心がけること
ここでは、うつ病の人が回復していくために必要なことを紹介します。具体的には、以下の3点が非常に重要になります。
- 症状の変動に一喜一憂しない、病気と気長につきあう
- 絶対に自殺をしない
- 回復するまでには人生の大決断をしない
1.症状の変動に一喜一憂しない、病気と気長につきあう
うつ病の治療期間は最短でも3ヶ月程度はかかるといわれています。治療中は症状がよくなったり、悪くなったりと、一進一退の状態を繰り返しながら、非常にゆっくりとしたペースで回復に向かっていきます。
回復までの過程で再発するリスクもあるため、まずは焦らずじっくり治療に取り組みましょう。
2.絶対に自殺をしない
うつ病になると「死にたい」「消えてなくなってしまいたい」という気持ちが強くなることがあります。しかし、「死にたい」という思いに駆られるというのも、実はうつ病の症状のひとつなのです。
このため、うつ病が回復すると「死ななくてよかった」という気持ちにみなさん変わります。そのため、どんなことがあっても絶対に自殺をしないでください。
3.回復するまでに人生の大きな決断をしない
うつ病になると、判断能力も含めてあらゆる機能・能力が低下します。また不安が強まり、悲観的な考えから抜け出せなくなるため、いくら考えても自分が進むべき道が見だせなくなります。
そのため、このような時に人生における大きな決断(転職、結婚など)をしてはいけません。うつ病の時は、悩み事を一度棚に上げ、まずは回復を目指しましょう。いい判断をするためにも大きな決断はしっかり回復できてから行いましょう。
まとめ
うつ病は「何事にも興味や関心を持てなくなった」「疲れているのに寝付けない」など、強い抑うつ状態が長く続き、日常生活に支障をきたしてしまう病気です。回復に向かう治療の中で、大事なことは自己判断で薬をやめないことです。
うつ病では考え方や行動、生活パターンが悪循環に陥っているため、適切な薬物療法や治療プログラムが必ず必要です。自分で治ったと思っても実は治っておらず、再発してしまうことも多々あります。
あらたまこころのクリニックでは、うつ病患者様を薬漬けにせず、薬に頼り切らない治療を心がけています。症状が少し落ち着いてから治療プログラムを加えることで、最小限の薬で最大限の治療効果につながって再発を抑えることができます。
うつ病の症状や治療について気になることがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
合わせて読みたい:初めての方へ、あらたまこころのクリニックのご紹介
関連ページ:うつ病のよくある質問
関連記事:うつ病の診断テスト(チェックリスト)
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監修
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【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。
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