心理検査(WAIS)の結果から考えるADHD
前回のブログでは、働く方のADHDへの当院の取り組みについてご説明しました。今回は、実際にADHDの診断が下りた患者様に当院がどのような治療を行っていくのかを具体例を挙げてご紹介していきます。
「仕事でのミスが多く、仕事が長続きしない」Aさんの場合
(よく見られる一例で特定の患者さんではありません)
Aさんは仕事が長続きしません。一生懸命取り組んでいるつもりですが、上司や同僚からミスを指摘されることが多く、自信をなくし、抑うつ症状から仕事を続けることが難しくなった結果、辞めてしまうということが続いていました。
医師との診察の中でADHDを思わせるエピソードがいくつか出てきたため、WAIS(知能検査)を実施してみることになりました。WAISの結果、全体的な知能に遅れはありませんでしたが、著しく苦手な領域がいくつか見られました。
その領域はいわゆる忘れっぽさやケアレスミスに関連するものでしたので、仕事や日常生活で「言われたことを忘れてしまうことは多くないか。計算ミスや書類の記入ミスなどはしがちでないか」ということをお聞きすると、
「そうなんです。いつもそういったミスで怒られ続けてきました。自分では気を付けているつもりなのだけど、全然直らなくて…。元々こういうことが苦手だったのですね。」と非常に納得された様子でした。他の心理検査や心理士との面談も踏まえたうえで、AさんにはADHDの診断がなされました。
生活の工夫を身に付けよう!
WAISで明らかになった苦手なことの多くは、ちょっとした工夫でカバーできることが多いです。Aさんには、
といった特徴がありました。そこで、↓
といった工夫を提案させていただきました。
Aさんはその後、日常生活で常にメモを持ち歩くようにし、大事なことは毎回メモを取るよう習慣付けました。
また、玄関の壁には「財布、携帯、車のキー、いるもの袋」というチェックリストを貼り、外出時にチェックするようにしました。
「いるもの袋」とはAさんが考えたアイディアで、次の日持ち出すもの(書類など)は前日からその袋にまとめて入れておくことにしました。
このような工夫を身に付けたことで、Aさんは大事なことを忘れてしまったり、不注意によるミスをしてしまうことが減り、自分に自信が持てるようになりました。
また、これを機に、Aさん自身が自分の特徴を理解し、自分に合った工夫を考えられるようにもなっています。
*上記のように当院では治療の一貫して医師との相談の元にWAISを実施しております。そのため、WAISを受ける事のみを目的とした受診はお受けできませんのでご了承ください。
関連記事:ADHD(注意欠如・多動症)とは?具体的な症状や特徴、診断の流れなど網羅的にご紹介
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監修
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【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。
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