脱力感はストレスと関係があるの?脱力感の原因と関連する疾患を解説
「力が入らずなかなか起き上がれない」
「脱力感に襲われ何もする気が起こらない」
「一日中体が重い」
原因不明の脱力感が続くと、何か病気ではないかと不安になるものですが、実はストレスが関係していることも少なくありません。今回の記事では、脱力感の原因と対策、関連する疾患について解説します。
脱力感とは
脱力感とは、体に力が入らなかったり力が抜けたような感覚をあらわします。脱力感があると、何もする気が起こらないなどやる気にも影響するため、仕事のパフォーマンスの低下や家事、食事など普段の生活もできなくなることがあります。脱力感を感じる場面は人によってさまざまですが、主に以下のような症状があります。
- 寝起きに力が入らず起きられない
- 体が重いと感じる
- 体に力が入らず何もしたくなくなる
- 体が思うように動かず物を落としやすくなる
脱力感の原因と対策
脱力感から何もできずにいると、「自分は怠けているだけではないか」と自分を責めてしまうことがあります。脱力感は気力の問題だけでなく、重大な病気が隠れていることもあるため、どんな原因があるかを知っておくことは大切です。脱力感の原因は人によってさまざまですが、以下の4つの主な原因をご紹介します。
- 脳神経伝達の異常
- 血流の低下
- ストレスなどによる自律神経の乱れ
- 栄養不足
脳神経伝達の異常
脱力感の原因のひとつに脳神経伝達の異常が考えられます。人の体は脳から発生した信号が神経を通って筋肉を動かしますが、この脳神経伝達の経路で何らかの障害があると、筋肉に十分に信号が伝わらず体に力が入らなくなります。瞬間的な脱力感や、手足のしびれを伴う場合は、脳梗塞や脳卒中、てんかんなど脳の疾患の可能性があるため、内科や脳神経外科など早めに専門医を受診しましょう。
血流の低下
血流の低下も脱力感の原因のひとつです。血流の低下によって筋肉の血流が不足していると、正常に筋肉が収縮せず思うように体を動かすことができなくなります。血流の低下は睡眠不足や疲労によっても起こるため、脱力感を感じた時は十分な休息や睡眠をとりましょう。運動不足も血行不良の原因となるため、運動不足と感じる人は、適度な運動で筋肉を動かし血液の循環を良くすることが大切です。
ストレスなどによる自律神経の乱れ
脱力感はストレスなどによる自律神経の乱れによってもあらわれます。自律神経は、人が無意識のうちに体の臓器の働きをコントロールしてくれる神経です。自律神経はストレスの影響を受けやすく、ストレスを受けると交感神経が活発になるため、血流の低下を引き起こし脱力感を感じることがあります。自律神経の乱れはストレス以外にも生活習慣の乱れが影響します。生活習慣を見直し、自分に合ったストレス解消法やリラック方法でストレスを溜め込まないことが大切です。
栄養不足
筋肉を動かすための栄養が不足していると、脱力感を感じる原因になります。忙しくて食事が十分に摂れていなかったり、偏食で栄養が偏っている人は食生活から見直してみると良いでしょう。また、カリウムが不足すると脱力感の症状があらわれやすくなります。通常の食事をしている場合には基本的に不足することはありませんが、野菜や果物をあまり食べない人は注意が必要です。カリウムは生野菜のサラダや生の果物を食べることで、効率よく摂取できます。
ストレスによる脱力感は心の疾患のケースも!関連する疾患とは
ストレスなど心の疲労が溜まっていると、意欲の低下とともに脱力感の症状があらわれやすくなります。「何もする気が起きない」と気分の落ち込みが続くようであれば、以下のような心の疾患の可能性が考えられるため注意が必要です。
- 自律神経失調症
- うつ病
自律神経失調症
自律神経失調症は、ストレスや生活習慣の乱れによって自律神経が乱れ、体や心にさまざまな不調があらわれます。症状は脱力感以外にも、倦怠感、慢性的な疲労、頭痛、不安感、焦り、意欲の低下などの症状があり他の精神疾患の症状と似ていますが、検査によって考えられる病気が除外された時に診断されます。
自律神経失調症について詳しく知りたい方は「自律神経失調症」をご覧ください。
うつ病
うつ病は、強く気分が落ち込み何もやる気が出ない状態が続くことで、日常生活に支障が出る病気です。症状は自律神経失調症とよく似ているため、初期症状では判断することが難しいとされていますが、早期に発見し適切に対処することが大切です。一般的に気分の落ち込みや抑うつ、意欲の低下、不眠や食欲不振、疲れやすいなどの症状がほとんど毎日、2週間以上続いた場合はうつ病の可能性があるとされています。
うつ病かも?と悩まれている方は「うつ病の診断テスト(チェックリスト)」も合わせて御覧ください。
精神的な疾患による脱力感の治療方法について
脱力感がうつ病や自律神経失調症など、精神的な疾患による症状と診断されると、薬物療法と以下のような心理療法を組み合わせて治療を行います。患者の症状や程度にあわせて選択されますが、どのような治療法があるかを解説します。
- 認知行動療法
- 対人関係療法
- マインドフルネス
認知行動療法
認知行動療法は、認知の歪みを修正する治療法です。うつ病の場合は何事においても悲観的に考えてしまう特徴があり、自分を責めたり落ち込んだりを繰り返して悪循環を生み出してしまいます。この悪循環を断ち切るために、認知行動療法で柔軟な考え方や問題解決力などを習得します。物事の考え方や行動が変わると、何か問題や困りごとが起きた時に「自分の力で乗り越えていける」という自己効力感を養うことができます。
認知行動療法について詳しく知りたい方は「治療法について – 認知行動療法」を御覧ください。
対人関係療法
対人関係療法は、人間関係に存在する4つのテーマのうち、どの領域に問題があるかを明確にして人間関係の改善を目指します。自分にとって重要な他者と、どのような対人関係にあり、どのような感情があるのかを分析しながら対策法を考え実践していきます。
マインドフルネス
マインドフルネスは、過去の失敗や未来の不安に向いてしまう意識を「今」の感覚に戻し、評価や判断をしない安定した心理状態を保つことに役立ちます。自分が感じる「今」の感覚と丁寧に向き合うことで、ストレスとうまく付き合う力を養います。
マインドフルネスについて詳しく知りたい方は「治療法について – マインドフルネス」を御覧ください。
まとめ
脱力感とは、体に力が入らなかったり力が抜けたような感覚をあらわし、以下の原因が考えられます。
- 脳神経伝達の異常
- 血流の低下
- ストレスなどによる自律神経の乱れ
- 栄養不足
瞬間的な脱力感や手足のしびれが伴う場合は、脳の疾患の可能性があるため内科や脳神経外科を受診しましょう。
また、ストレスから脱力感や何もする気が起こらない状態が長く続く場合は、うつ病などの精神疾患の可能性があるため心療内科や精神科の受診が適切です。
あらたまこころのクリニックでは、カウンセリングやグループ療法、マインドフルネスなど症状にあわせてさまざまな治療法を行っています。ストレスから脱力感があり何もやる気が起きず悩んでいる方は、一度お気軽にご相談ください。
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監修
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【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。
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