情緒不安定になるのはなぜ?原因や症状、対処法について解説
「イライラすることが増えた」
「気分の波が激しい」
「理由もなく涙が出る」
このように感情が自分でコントロールできなくなることはありませんか?情緒不安定な状態は、気持ちが落ち着かずいつもよりネガティブに捉えてしまうなど、気持ちが休まらないため辛い思いをしている人も少なくありません。今回の記事では情緒不安定になる原因から症状、情緒不安定になった時の対処法を解説します。
情緒不安定の状態とは?
情緒不安定とは、心が不安定で感情の起伏が激しい状態をあらわします。怒っていたと思ったら突然泣き出す、急に攻撃的になるなど、感情のアップダウンが激しくコントロールが難しくなります。感情の波は誰にでもありますが、情緒不安定は病気の症状としてもあらわれることがあるため、情緒不安定な状態が長く続いたり日常生活や仕事に影響が出る場合は注意が必要です。
情緒不安定な時にあらわれる主な症状
情緒不安的な時にあらわれる症状は個人によってさまざまですが、以下の主な3つの例をご紹介します。
- 気分に波がある
- イライラすることが増えたり怒りっぽくなる
- 特に理由もなく悲しくなったり涙が出る
気分に波がある
- 元気な時と不安で落ち着かない時の気分の浮き沈みが激しい
- 感情をコントロールできずネガティブな感情に振り回される
- ちょっとした刺激やストレスに敏感になる
- 突然感情が溢れ出しパニックになる
このように気分が落ち着かず心が安定しないため、感情の変化が激しくなります。
イライラすることが増えたり怒りっぽくなる
情緒不安定になると、普段は気にしないようなことでもイライラしやすくなったり、些細なことで怒りっぽくなることがあります。感情を抑えることができず怒りを人にぶつけてしまい、後で落ち込むなどストレスも溜まりやすくなります。
特に理由もなく悲しくなったり涙が出る
特に思い当たる理由がないのに悲しくなったり涙が出るのも情緒不安定の症状のひとつです。いつも以上に物事が悲観的に感じられ、ちょっとしたことでも「もうだめだ」というネガティブな気分になることがあります。理由もなく涙が出る時は、自覚がなくても日常のどこかでストレスや不安を抱えているのかもしれません。
情緒不安定の原因とは
情緒不安定になる原因はさまざまな要因が重なっていることが考えられますが、「精神的」な原因と、「身体的」な原因に分けられます。
精神的な原因
精神的な原因は、「ストレス」や「不安」が関係しているケースがほとんどです。ショックな出来事や環境の変化、人間関係や仕事など、日常生活を送る中で知らず知らずのうちにストレスや不安が溜まると、自律神経のバランスが崩れ情緒不安定の状態になることがあります。
また、うつ病などの精神疾患の症状のひとつとしても、情緒不安定があらわれることがあるため注意が必要です。
身体的な原因
身体的な疾患があり不安や痛み、眠れない日が続くと情緒不安定の原因となります。また、女性の場合は生理や妊娠、出産など、ホルモンバランスの変化によっても精神的に不安定になりやすいとされています。
日常においては睡眠不足、生活リズムの乱れやアルコール、カフェインなどの作用によっても自律神経が乱れやすくなるため、情緒不安定の状態を引き起こしやすくなります。
情緒不安定は病気なの?気をつけたい疾患とは
「情緒不安定」自体は病気ではなく、誰もがストレスや不安を抱えた時に経験する自然な状態です。しかし、情緒不安定が続き精神疾患につながるケースや、逆に精神疾患が原因で情緒不安定の状態になることがあるため、どのような病気があるのかを知っておくことは大切です。特に身近で気をつけたい代表的な疾患は、以下の3つがあります。
- うつ病
- 自律神経失調症
- 更年期障害
うつ病
うつ病は、気分が強く落ち込んだり意欲が低下するなどの状態が続き、日常生活や社会生活に支障が出る病気です。
症状は人によってさまざまで、気分の落ち込みや不安感、憂うつ、意欲の低下や集中力の低下などの精神症状だけでなく、頭痛や吐き気、めまいや不眠、食欲不振などの身体症状もあらわれます。こうした症状が、ほとんど毎日、2週間以上続く場合はうつ病の可能性が考えられます。
うつ病かも?と悩まれている方は「うつ病の診断テスト(チェックリスト)」も合わせて御覧ください。
自律神経失調症
ストレスや生活リズムが乱れると、自律神経のバランスが崩れ自律神経失調症を引き起こすことがあります。自律神経は体のさまざまな器官の働きと関わっているため、腹痛や下痢、動悸や吐き気、疲れやすい、不安感、情緒不安定など、症状は人によってさまざまで、複数あらわれるケースもあります。自律神経失調症は他の精神疾患の症状と区別が難しいため、関連する疾患について検査し、他の病気の可能性が除外された際に診断されます。
自律神経失調症について詳しく知りたい方は「自律神経失調症」を合わせてご覧ください。
更年期障害
更年期障害とは、女性ホルモンが急激に減り、情緒不安定や体にさまざまな不調が出る状態です。女性が閉経を迎える前後に起こり、のぼせや発汗、顔のほてり、息切れや動悸、イライラなど自律神経失調症に似た症状があらわれます。
症状は個人差があり、日常生活に支障が出る人もいれば、あまり不調を感じない人もいます。さらに女性ホルモンの低下はすべての女性に起こりますが、更年期障害はすべての女性に起こるわけではありません。更年期障害を引き起こす原因は、女性ホルモンの低下以外にも心的ストレスや性格的なものが影響しているといわれています。
情緒不安定を治すにはどうしたらいいの?対処法とは
情緒不安定は疾患ではないため、情緒不安定を治すための決まった治療法はありません。情緒不安定が病気に関連している可能性がある場合は、心療内科や精神科を受診し、何の病気が原因となっているかを診断した上で適切な治療を行う必要があります。病院に行くほどの症状ではない場合は、自律神経が乱れているケースが少なくないため、十分な睡眠や休息、生活リズムを整える、アルコールやカフェインは控えるなどで自律神経を整えましょう。
当院では薬物療法だけではなく、本質的な改善を目的とした精神療法を取り入れています。
認知行動療法
認知行動療法とは、人間の「気持ちや体」が「考えや行動」によって影響を受けるという理論に基づいています。考えを変え、問題に対処する行動をすることによって、気持ちや体を改善させていくことを目的とした治療法です。
認知行動療法では「3つのC(認知・コミュニケーション・コントロール)」を実践し、柔軟な考え方や問題解決力などを習得します。このことにより「薬や他人に頼らなくても自分の力でできる」という自己効力感(コントロール感)を養います。
認知行動療法について詳しく知りたい方は「治療法について – 認知行動療法」を御覧ください。
マインドフルネス
ストレスを感じると、頭の中で過去の嫌な記憶を思い出してしまいますが、過去の失敗に悩んだり未来を心配してしまうことで、自律神経失調症の症状はますます悪化していきます。
呼吸法や様々なエクササイズ、ボディスキャンなどを通して、過去や未来のことを考えて悩むのではなく、「今」の感覚に意識を戻していく治療を行います。今現在、自分が感じている感覚と丁寧に向き合っていくことにより、過去のトラウマ的記憶を避けるのではなく、上手く付き合っていくことができるようになります。
マインドフルネスについて詳しく知りたい方は「治療法について – マインドフルネス」を御覧ください。
まとめ
情緒不安定とは、心が不安定で感情の起伏が激しい状態をあらわします。情緒不安的な時にあらわれる症状は個人によってさまざまで、主に以下の3つがあります。
- 気分に波がある
- イライラすることが増えたり怒りっぽくなる
- 特に理由もなく悲しくなったり涙が出る
情緒不安定の原因は精神的理由と身体的理由がありますが、精神的理由の中でも精神疾患が原因で情緒不安定の症状があらわれることがあるため注意が必要です。万が一疾患の場合は、早期に発見することで適切に対処ができるため、どのような関連する病気があるのかを知っておくことは大切です。
<特に気をつけたい身近な疾患>
- うつ病
- 自律神経失調症
- 更年期障害
病院に行くほどの症状ではない場合は、自律神経が乱れているケースが少なくありません。自律神経を整える方法はさまざまあるため、十分な休息やリラックスができる自分に合った方法を見つけましょう。
<自律神経を整える方法の例>
- 十分な睡眠や休息
- 生活リズムを整える
- アルコールやカフェインは控える
- 朝日を浴びる
- ヨガや軽いストレッチ
- アロマを活用する
情緒不安定な状態が長く続いたり日常生活や仕事に影響が出る場合は、精神的な疾患の可能性があるため早めに心療内科や精神科を受診しましょう。情緒不安定で悩んでいる方は、ぜひ一度ご相談ください。
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監修
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【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。
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