何もしたくない… と感じるのは病気のサイン?無気力感の原因と対処法を解説
「今日は何もしたくない」と思うことは誰でもあっても、「何もしたくない」状態がずっと続くと誰でも不安になるものです。
「このままでいいのだろうか・・・」
「もしかしたら病気なのかも?」
そんな不安を抱えながらも、「甘え」と思わるのではと考えてしまい、誰にも相談できずひとりで悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、そんな「何もしたくない」状態が続いて悩んでいる人に知ってほしい原因と対処法、関連する病気について解説します。
仕事の「何もしたくない」は甘えなの?
仕事や日常生活の中でふと「何もしたくない」と無気力になることは、誰もが一度は経験があるのではないでしょうか。無気力感は、「仕事に行きたくない」「めんどくさくて動きたくない」「ずっと寝ていたい」といった現実逃避の感情がともなうことが多いため、「これは甘えなんじゃないか?」と考えてしまいひとりで悩んでしまう人も少なくありません。
実は「何もしたくない」と感じてしまう原因には、何らかの「疲れ」がたまっていたり、病気が隠れているケースがあります。放っておくと、体調を崩したり病気に発展してしまうことがあるため、まずは「何もしたくない」と感じる原因を知って、自分にあった対処法を試してみましょう。
仕事や日常生活で「何もしたくない」と感じる原因とは
「何もしたくない」と感じる時は何かしらの「疲れ」がたまっているケースが多く、主に以下のような原因が考えられます。
- ストレスや心の疲労がたまっている
- 頑張る目的がわからなくなっている
- 睡眠不足や肉体的な疲労がたまっている
- 何から手をつけて良いかわからない
- 環境の変化や生活リズムの乱れ
- 燃え尽き症候群
「何もしたくない」という気持ちは、「休みたい」という体や心からのサインとも言えます。特に性格が生真面目だったり頑張り屋なタイプの人は、無理をしてしまい体や心の状態に気づけないことがあるため注意が必要です。
ストレスや心の疲労がたまっている
「人間関係がうまくいっていない」「仕事でプレッシャーがある」など、ストレスや心の疲労がたまっていると、心を守るために周囲に無関心になったり意欲が低下して、無気力な症状があらわれやすくなります。また、過度なストレスは自律神経の乱れを引き起こします。自律神経が乱れると、体や心にさまざまな影響を与えるため、精神が不安定になったり無気力な状態を引き起こします。
頑張る目的がわからなくなっている
無気力になっている原因として「なんのために頑張るの?」と頑張る目的自体を見失っている可能性があります。これは根性論ではなく、日々の小さな不満や我慢の積み重ねから、無自覚に気力が削がれていくパターンです。
「頑張ったのに評価されない」「どれだけやっても認めてもらえない」など、報われない経験が蓄積し「どうせ何をやっても無駄だ」と諦めてしまうのです。まずは何に不満を感じているのか自分の感情を整理することが大切です。
睡眠不足や肉体的な疲労がたまっている
睡眠不足や肉体的な疲労がたまっている場合も、倦怠感から「何もしたくない」無気力な状態になりやすいです。仕事が忙しく、毎日残業が続いたり休日出勤が続くなどと、しっかり休む時間が取れていない人は要注意です。人は集中している時には疲労を感じにくいですが、そのために気づかないうちに限界を超えてしまうケースもあります。何かに打ち込んでいる時は、ときどき自分の体の声に耳を傾けることが大切です。
何から手をつければ良いかわからない
自分が感じている問題が山積みで「何からやればいいかわからない」という精神状態から気力が失われている可能性があります。具体的には以下のような思考になっていることが考えられます。
- 問題を大きく捉えてしまっている
- 問題解決方法がわからない
ひとつ目の「問題を大きく捉えてしまっている」というのは、周りからみたらシンプルな問題でも、自分の頭の中で過去の経験や未来の不安を一緒に考えてしまい、どんどん問題を大きく解釈してしまうケースです。
2つ目の「問題解決方法がわからない」というのは抱えてる問題に対して、いきなりすべてを解決しようとして何も行動が起こせずに気力だけが失われてしまうケースです。いずれの思考も「自分で解決しよう」と抱え込んでしまっている状態なので、まずは周りの人に相談しながらシンプルに考えることが重要です。
問題の整理方法から解決までの実践方法を「問題解決方法 カテゴリ記事」にまとめていますので是非参考にしてみてください。
環境の変化や生活リズムの乱れ
心や体の疲労だけでなく、就職や引っ越し、転職などの環境の変化によってもストレスを感じて「何もしたくない」と感じることがあります。環境の変化は昇進や結婚など、うれしい場面にもあてはまります。また、夜更かしが続いたり、食事を抜くなど、生活リズムが乱れることでも疲れが取れにくくなり、無気力な状態を引き起こす原因となります。心や体の疲れを引き起こす場面が思い当たらない場合は、まずは生活習慣から見直してみましょう。
燃え尽き症候群
これまで何かに集中して意欲的に取り組んできた人は、突然やる気がなくなるいわゆる「燃え尽き症候群」かもしれません。「何もしたくない」と感じている時は、一生懸命頑張ってきたからこそ力を使い果たしている状態なのです。無理に何かをしようとするのではなく、しっかり休んで息抜きをしましょう。気力を養うことで、また次の目標が見つかり意欲を取り戻すことができます。
「何もしたくない」は「うまくやりたい」の裏返し
何もしたくないと感じる人は、自分のことを「甘え」や「怠惰」だと評価してしまいがちですが、「何もしたくない」という心理の裏には「本当はうまくやりたい」という気持ちが隠れているのです。
「何もしたくない」と感じる人は優しい人が多い?
何もしたくないと感じる人の多くは、他人想いの優しい気持ちをもっています。無気力になってしまう前は「貢献したい」「この人のために頑張る」など、誰かの力になりたいという気持ちで溢れています。
しかし、その気持とは裏腹に「これだけ頑張ったのに見てくれない」と期待を裏切られるようなことが積み重なったとき、諦めにかわってしまうのです。
自分を犠牲にしてまで誰かのために頑張れる優しい人は、このサイクルに入ってしまうと「優しく振る舞っても、冷たくされる」「相手を想ってやったのに感謝されない」など、相手の言動や態度に敏感になってしまいます。そして傷ついた経験が無自覚に溜まっていくことで無気力になっていくのです。
「何もしたくない」と感じた時の対処法
「何もしたくない」と感じて何もせずにいると、「これは甘えなのではないか」「何もしていないのは怠惰ではないか」と、自分を責めたり何もしていないことに焦りを感じることがあるのではないでしょうか。そんな辛い状況を改善するためにできる、「何もしたくない」と感じた時の以下の3つの対処法をご紹介します。
- 休むことに専念する
- 心の整理をする
- 人間関係を見直してみる
- 生活習慣を整える
- 適度な運動や人と会ってリフレッシュする
休むことに専念する
どうしてもやる気が起きず「何もしたくない」と感じたら、まずは思い切って休みましょう。「休む」ことを決めて、しっかりと休息できる環境や時間をもつことが大切です。ストレスが慢性化して1日の休息だけでは気力が戻らない場合は、有給休暇を取って長期休暇を取るなど、状態に応じて期間を決めて休むことに専念しましょう。「何もしたくない」と感じる大きな原因は「心や体の疲労」です。この疲労をしっかり回復させることで、また少しずつ意欲を取り戻すことができます。
心の整理をする
これまで原因をいくつか解説してきましたが、まずは、どうして自分はやる気がでなくなってしまったのか考えてみましょう。いつから無気力になってしまったのか、何が原因でやる気が出なくなったのか。など1つずつ紐解いていきます。原因はひとつではない可能性もあるので、傷ついた経験はあったか、裏切られて悲しかった経験はないか、など直接関係していないと思っても振り返っておくことが大切です。
実際は、辛かった経験や傷ついた経験から無自覚にやる気を失っている可能性が高いです。その場合、自分ひとりで原因を探しても見つからない場合があるので、周りの友人や家族に相談しましょう。
当院では、一緒に振り返りながら気持ちの整理をする面談を行っております。詳しくは「心”整理”面接が役立つのはなぜ??」という記事をご覧ください。
人間関係を見直してみる
やる気がでなくなってしまう原因が、会社の同僚や家族、友人との人間関係の場合は、日々の対人関係について振り返ってみることをオススメします。
- どんな言動に傷ついたのか
- どんなことに不満を感じるのか
- 自分を犠牲にして我慢していることはないか
対人関係で抱えている悩みを振り返ることから初め、ストレスに感じている部分を探してみましょう。
そして、それらのストレスは「アサーション」というコミュニケーション方法を取り入れることで解決につながる可能性があります。相手を変えることは難しいですが、自分自身の考え方や振る舞いで緩和させることはできます。アサーションについては「アサーション~自分も相手も大切にするコミュニケーション」を参考にしてみてください。
生活習慣を整える
- 朝日を浴びる
- 決まった時間に起床・就寝する
- 栄養があるバランスのいい食事を心がける
- 湯船につかってリラックスする
など、日常のあたりまえのことですが、こうした良い生活習慣を毎日続けることで、疲れが取れやすい心や体の状態になります。仕事などで忙しいと睡眠時間が短くなったり、食事が偏ったり、入浴はシャワーだけで済ますなど、生活リズムも乱れるため心や体が休まる時間がありません。生活習慣を見直して、オンオフの切り替えを心がけましょう。
適度な運動や人と会ってリフレッシュする
適度な運動は、「幸せホルモン」とも呼ばれているセロトニンが増えるため、心と体を安定させてくれます。さらにセロトニンが分泌されると、交感神経が優位になるためポジティブな気持ちが湧き上がり、活動的になる働きがあるとも言われています。運動がどうしても苦手という人は、一人で悩んでいると気分が落ち込むなどの悪循環が生まれるため、親しい友人に会って話をする、好きなことに没頭するなどで気分をリフレッシュさせましょう。
「何もしたくない」と無気力感が続いた時はうつ病かも?
「しっかり休んだのに何もしたくない状態が続く」
「何をしても楽しめず憂うつな気分が続く」
こうした状態がほとんど毎日、2週間以上続いた場合はうつ病の可能性があります。
うつ病ってどんな病気?
うつ病とは、気分がひどく落ち込んだり何をしても興味が持てず抑うつ気分が続くなど、日常生活に支障をきたす病気です。症状は人によってさまざまで、精神症状だけでなく、倦怠感や吐き気、めまいや頭痛など、身体症状にもあらわれることがあります。原因はまだはっきりとは分かっていませんが、ストレスなどを背景に、感情や意欲に関わる脳の機能に何らかの不調が生じていると考えられています。うつ病についてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:うつ病はどんな病気?症状や回復過程の特徴についてわかりやすく解説。
新型うつ病の可能性がある?
新型うつ病は、従来のうつ病の人とは違い若年層に起こりやすく「マイナス思考」「他人の評価が気になる」「いわゆる良い子」という性格の方が多いです。
従来のうつ病は、やる気がでなくなる場合、生活すべてにおいて無気力になってしまう特徴がある一方で、新型うつ病は「好きなことは楽しめるが、仕事など特定の意欲がない」という特徴があります。
日々の生活の中で、どうしても他責思考になってしまい自分の感情がコントロールできない場合、この新型うつ病の可能性も考えられます。以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:「新型うつ病(現代型うつ・非定型うつ病)」
もしかしたらうつ病かも?うつ病のセルフチェック
自分の症状がうつ病かどうかが気になる人のために、自分で簡単にできる診断テストをご用意しています。こちらはセルフチェックになりますので、診断結果はあくまでも目安になります。うつ病は早期発見が早期回復のカギになりますので、結果には問題はなくても気になる症状がある場合は、心療内科や精神科などの専門医に相談してみましょう。
関連記事:うつ病の診断テスト(チェックリスト)|20個の設問に答えて自分の今の状況を把握してみよう
「何もしたくない」と無気力感が続いた時に考えられる、その他の病気
「何もしたくない」といった無気力感の症状は、うつ病以外にも以下の病気が考えられます。
- 睡眠障害
- 統合失調症
- 適応障害
特に適応障害はうつ病と似た症状があらわれることがあるため、個人での判断はとても危険です。不安に感じることがあれば、早めに心療内科や精神科を受診してください。
関連記事:適応障害とは?原因や症状から診断方法、セルフチェックまで網羅的に解説
まとめ
「何もしたくない」と感じる時は、何かしらの疲れがたまっている状態で「休みたい」という体や心からのサインです。まずは原因を把握し、しっかり休息を取って意欲が戻るのを待ちましょう。
<「何もしたくない」と感じる原因>
- ストレスや心の疲労がたまっている
- 頑張る目的がわからなくなっている
- 睡眠不足や肉体的な疲労がたまっている
- 何から手をつけて良いかわからない
- 環境の変化や生活リズムの乱れ
- 燃え尽き症候群
<「何もしたくない」と感じた時の対処法>
- 休むことに専念する
- 心の整理をする
- 人間関係を見直してみる
- 生活習慣を整える
- 適度な運動や人と会ってリフレッシュする
対処法を試してみても状況が改善しなかったり、他に気になる症状があらわれる場合は、何らかの病気が隠れている可能性があります。早めに心療内科や精神科などの専門医を受診することをおすすめします。「何もしたくない」気分が続いて日常生活に支障が出ている方は、ひとりで悩まずにまずはお気軽にご相談ください。
関連する情報
監修
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【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。
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