不眠症とは?不眠の原因から症状、何科に行くべきなのかまで網羅的に解説
不眠症は、日本人の5人に1人は不眠の問題を抱えていると言われているほど身近な病気です。ひとことで不眠症と言っても、原因や症状は人によってさまざまで対象法が異なるため、自分の不眠がどのタイプなのかを知っておくことは大切です。
この記事では不眠症の原因や症状、治療法や受診する病院、自分でできる対処法など網羅的に解説していますので、不眠でお困りの方はぜひ参考になさってください。
不眠症とは
不眠症とは、睡眠の質が低下した状態が1ヶ月以上持続し、適切な睡眠環境にも関わらず症状があらわれることを言います。また、日中に下記の様な症状が最低1つ以上見られます。
- 倦怠感あるいは不定愁訴
- 集中力、注意、記憶の障害
- 社会的機能の低下
- 気分の障害あるいは焦燥感
- 日中の眠気
- 動悸、意欲の障害
- 仕事中、運転中のミスや事故の危険
- 睡眠不足に伴う緊張、頭痛、消化器症状(睡眠障害国際分類第2版(ICSD-Ⅱ)の基準より)
不眠が続くと、眠れないことへの恐怖や焦り、緊張が生じたり、睡眠へのこだわりが強くなるなど、さらに不眠が悪化してしまうため、悪循環に陥りやすくなります。不眠はうつ病や生活習慣病とも関係が深いため、早期の対策が必要です。
不眠症の原因
不眠症の原因は、人によってさまざまで以下の5つのタイプがあります。
- 身体的原因:何らかの病気の身体症状により寝付けないケース
痛み・かゆみ・頻尿・呼吸困難ををもたらす身体疾患、 人工透析など
- 生理的原因:睡眠環境や、生活習慣が原因となるケース
交代制勤務、短期入院、不適切な睡眠衛生など
- 心理的原因:精神的ストレスにより寝付けないケース
不眠恐怖、精神的ストレス、重篤な疾患による精神的ショック、生活状況の大きな変化など
- 精神医学的原因:うつ病などの精神疾患が原因となるケース
不安神経症、恐怖性障害、うつ病、統合失調症、アルコール依存症など
- 薬理学的原因:薬の副作用や、アルコール、カフェインなどの刺激物が原因となるケース
アルコール、降圧剤、カフェイン、ニコチンなど
不眠症は、原因によって対処法も変わるため、不眠の原因の診断がとても大切です。詳しい原因については、「不眠症の5つの原因とは?具体的な原因例から治療法まで解説」でも解説しています。合わせて読んでみてください。
不眠症は原因によって何科を受診するかが決まる
不眠症は、上記で紹介した原因のタイプによってどの病院や何科にかかるべきかが違います。
具体的には、不眠症の症状が不眠だけの場合は内科で診ることができます。
「生理的原因」の場合は、生活習慣や睡眠環境の見直しをするだけで、不眠が改善することもあります。
「身体的原因 」と「 薬理学的原因」に関しては、体の病気となるため、内科などのかかりつけの病院を受診してください。不眠の原因となっている身体的な病気や症状を治療することが優先となります。
「心理的原因」と「精神医学的原因」の場合は、精神症状や精神疾患が不眠の原因となっていますので、精神科や心療内科が適しています。
睡眠時無呼吸症候群など呼吸器系の症状に不眠の疑いがある場合は、耳鼻咽喉科や呼吸器内科を受診します。不眠の原因や症状にあわせて診療科を選びましょう。
不眠症の症状
不眠症の症状には4つのタイプがあります。症状が1つだけのこともあれば、複数あらわれる場合も多く、自分の不眠の症状がどのタイプなのか知っておくことが大切です。
- 入眠障害:寝床に入っても30分~1時間以上眠ることができなく、寝つきが悪い状態
- 中途覚醒:一旦,入眠した後に起床するまでに、頻繁に目が覚めてしまう状態
- 早朝覚醒:望む時間よりも2時間以上前に目が覚めてしまい、再入眠できない状態
- 熟眠障害:睡眠時間は十分に取っているにもかかわらず、眠った感覚が得られない状態
詳しい症状タイプについての解説は、「不眠症の4つの症状タイプについて。不眠症のチェックリストも合わせてご紹介」で解説していますので合わせて読んでみてください。
不眠症への対処法
不眠症は何気なくおこなっている習慣が影響している場合が多く、生活習慣の見直しが大切です。すぐにできる対処法として、よくある5つの習慣について触れていきます。ご自身の習慣と照らし合わせて、できることから改善していきましょう。
- 寝酒はだめ
- 就寝前のカフェイン/タバコはやめる
- 就寝前にスマートフォンなどのブルーライトを見ない
- 熱めの入浴は控える
- 太陽の光を早朝に浴びる
寝酒はだめ
寝酒をするとよく眠れるという人もいますが、それは勘違いです。飲酒後に眠くなり入眠を早めることはありますが、アルコールには眠りが浅くなる作用があるため、睡眠の妨げの原因となります。また、利尿作用もあるため、夜中に目が覚めてしまうこともあります。不眠解消のためにお酒を飲み続けていると、お酒の量が増えたり寝酒が習慣化し、不眠が悪化するなど悪循環に陥る可能性があるため、寝酒はやめましょう。
就寝前のカフェイン/タバコはやめる
コーヒーや紅茶などに含まれるカフェインには、覚醒作用と利尿作用があり、寝付きが悪くなったり、夜中に目が覚めてしまうなど、安眠を妨げます。タバコに含まれるニコチンにも覚醒作用があるため、快適な睡眠の実現には禁煙が望ましいでしょう。喫煙者は非喫煙者に比べて、寝付くまでの時間が平均5分長く、睡眠時間が14分短いといった報告もあります。
就寝前にスマートフォンなどのブルーライトを見ない
若者の不眠の原因に多いのがブルーライトの光です。スマートフォンやパソコン、ゲーム機の画面から出ているブルーライトは、脳や体を活性化する働きがあるため、夜に浴びると眠りにくくなります。現代では昼夜問わずブルーライトを浴びやすい生活環境にあるため、就寝前にスマートフォンは見ない、ブルーライトをカットする眼鏡やアプリを使用するなど、工夫が必要です。
熱めの入浴は控える
42度以上のお湯は交感神経が活発になり興奮状態になるため、就寝前の熱めの入浴はおすすめしません。体を休めるための副交感神経を高めるには、眠る時間の1~2時間ほど前に、40度程度の少しぬるめのお湯にゆったりつかることです。体内深部の温度を一時的に上げることでお風呂上りに体温が下がり、眠気を誘うことができます。
太陽の光を早朝に浴びる
太陽の光には、体内時計を調整する働きがあります。覚醒と睡眠を切り替える働きのある「メラトニン」という睡眠ホルモンは、太陽の光を浴びてから14〜16時間ぐらい経過すると分泌されると言われています。そのため、朝起きたら太陽の光を浴びることが大切なのです。曇りや雨の日でも、屋外や窓辺に長く滞在することで有効です。
不眠症の治療や治し方
不眠症の治療には「薬物療法」「非薬物療法」があります。まずは睡眠環境や生活習慣を整えることからはじまり、必要に応じて薬物療法や認知行動療法などを取り入れることがあります。疾患による不眠の場合は、疾患の治療を優先しておこなっていきます。
- 薬物療法
不眠症の薬物療法には主に睡眠薬が用いられます。睡眠薬を服薬すると、睡眠の質が改善されていきます。しかし、すぐに薬をやめてしまうと、また元に戻ってしまうため継続的な服薬が必要になります。症状が改善してきたら、医師と相談のうえ徐々に薬を減らしていきます。
睡眠薬の正しい服用方法については、「睡眠薬の正しい服用方法とは?服用の方法から、よくある睡眠薬の質問について」をぜひ読んでみてください。
- 非薬物療法
睡眠薬を使わない不眠症の治療は、生活習慣の改善と、考え方や行動を変えていく認知行動療法があります。睡眠日誌を記入して自分の睡眠リズムを把握したり、睡眠に関する正しい知識をつける睡眠衛生教育などで、質の良い睡眠が取ることができるよう生活リズムを整えていきます。あらたまこころのクリニックで行っている不眠症治療プログラムは、こちらの記事でご紹介していますのでぜひご覧ください。
不眠症ってどんな治療をするの?という方は「不眠症の治療や治し方」についてのブログ記事を参考にしてみてください。
不眠症は高齢者になるにつれて多くなる
不眠症は高齢になるにつれ多くなり、特に中途覚醒、早朝覚醒は若年者の2倍と言われています。60才以上の高齢者では約3割が何らかの睡眠障害を抱えており、加齢による身体能力の低下にともなう睡眠時間の減少や、睡眠の質の低下が原因とされています。
高齢になると早寝早起きになりますが、加齢による体内時計の変化によるものなので、早朝覚醒自体は病気ではありません。早く起きてしまったからといって、眠気がないのに無理に起床時間を長くとろうとするのはやめましょう。寝付きが悪くなったり中途覚醒が増えてしまいます。二度寝ができない場合は無理に寝ようとせず、寝室から離れ、朝の時間を有意義にすごしましょう。
高齢者の不眠については「不眠症と高齢者。年をとると眠れなくなるの?」でも紹介していますので合わせてご覧ください。
まとめ
ここまで不眠症について網羅的に解説してきました。不眠症は、睡眠の質が低下した状態が1ヶ月以上持続し、適切な睡眠環境にも関わらず症状があらわれることを言います。不眠症の症状には以下の4つのタイプがあり、1つだけのこともあれば、複数あらわれる場合もあります。
不眠症の症状
- 入眠障害:寝つきが悪い状態
- 中途覚醒:夜中に頻繁に目が覚めてしまう状態
- 早朝覚醒:望む時間より早く目が覚めてしまい、再入眠できない状態
- 熟眠障害:眠った感覚が得られない状態
不眠症の原因は身体的や精神的、睡眠環境などさまざまで、原因によって対象法が異なるため原因の診断が大切です。不眠症の症状が不眠だけの場合は内科で診ることができますが、疾患の症状による不眠の場合は、疾患の治療が優先されます。体の疾患であれば内科やかかりつけの病院を受診し、精神症状や精神疾患がある場合は精神科や心療内科を受診しましょう。
自分ですぐにできる対処法は生活習慣の見直しと改善です。生活習慣を改善しても不眠が解消されない場合は、不眠を悪化させないためにも早期に専門医を受診することをおすすめします。
あらたまこころのクリニックでは、不眠の成り立ちや解消法を、客観的な医学データに基づいた方法で見直す不眠症の治療プログラムをおこなっております。不眠でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
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監修
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【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。
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