ADHDの特徴とは?衝動性、不注意、多動の3つのタイプの特徴と具体例をご紹介
ADHD(注意欠如・多動症)は、発達障害のひとつで、一度は耳にしたことがあるかもしれません。子どもの約5%にみられるとされていますが、その症状は一見「変わった子」として見過ごされることも多く、大人になってから初めて気づくケースも少なくありません。
ADHDの特性から、日常生活や社会生活に困難を抱える人も多く、周囲の理解とサポートが大切です。今回の記事では、自分や周りの人が「もしかしたらADHDかも?」と思った時に、まずは知っておきたいADHDの特徴についてご紹介します。
この特徴ってもしかしてADHD?
- 忘れ物が多い
- 集中力がなく飽きっぽい
- じっとしていられずよく動き回っている
- 静かにしていられない
日常生活や学校、社会生活で、このような困りごとを抱えていませんか?
ADHDは、「不注意」「多動・衝動性」を特徴とした発達障害のひとつで、子どもに多くみられます。しかし、大人になってから急に環境が変わることによりADHDの症状が出ることも珍しくありません。
これらの症状は、しばしば場に適さないふるまいから、周りから誤解を受けやすく、他者から指摘を受けることがあります。しかし、ADHDの症状は、しつけや本人の努力不足によるものではありません。原因ははっきりとはわかっていませんが、脳機能の障害だと考えられています。
まずは、ADHDの特徴を正しく理解し、どのような対策ができるかを考えていくことが大切です。ADHDについて、網羅的に解説した記事はこちらです。ぜひ、あわせてご覧ください。
関連記事:ADHD(注意欠如・多動症)とは?具体的な症状や特徴、診断の流れなど網羅的にご紹介
ADHD(注意欠如・多動症)の主な特徴とは
ここでは、ADHDの特徴について具体的な例を紹介しながら解説していきます。ADHD(注意欠如・多動症)の特徴は、主に下記の3つの症状にあらわれます。
- 不注意
- 多動性
- 衝動性
主な特徴1:不注意
活動に集中できない、忘れっぽい、物をなくしやすいなど、注意や集中ができず、年齢に見合わない「不注意」の症状が持続的にあらわれます。他の症状に比べて大人になっても「不注意」の症状は現れやすい傾向にあります
<不注意の具体例>
特徴 | 具体例 |
忘れ物やなくし物をよくする |
|
ひとつのことに集中できず、やり遂げられない |
|
順序立てて物事を考えたり、整理整頓ができない。 |
|
主な症状2:多動性
じっとしていられないなど、落ち着きなく動き回る症状に現れます。多動性は行動として現れるため、幼少期に気づくことが多いですが、成長するにつれておさまってくることが一般的です。大人になると、体を小刻みに動かしたり、そわそわする、といった落ち着きのなさとしてあらわれることがあります。欲しいと思ったら買ってしまう、我慢できない、上司やパートナーとの会話で、つい「余計」な一言を口に出して顰蹙(ひんしゅく)を買うなどです。
<多動性の具体例>
特徴 | 具体例 |
じっとしているのが苦手 |
|
手足をよく動かす |
|
主な症状3:衝動性
思いついたことや、外部からの刺激に対して、衝動的に反応や行動をしてしまう症状です。
<衝動性の具体例>
特徴 | 具体例 |
おしゃべりが過ぎる |
|
感情の抑制ができない |
|
衝動的に行動する |
|
ADHDの3つのタイプとは?
ADHDの特徴は人によって様々ですが、症状の組み合わせによって実は以下の3つのタイプに分けることができます。
- 不注意優勢型
- 多動性・衝動性優勢型
- 混合型
タイプ1:不注意優勢型
「不注意」による症状が目立ち、「多動性」や「衝動性」の症状はあまり強くないタイプです。うっかりミスや、忘れっぽいなどの特徴は、幼少期には問題が目立ちにくく、「ちょっとうっかりした子」として見逃されてしまうことも少なくありません。
そのため、大人になり社会に出てから、「仕事が期限内にできない」「ケアレスミスが続く」などの困りごとで症状が表面化し、初めてADHDに気づくケースがあります。
ADHDの不注意優勢型は女性に多く、さらに結婚や出産・育児などのライフステージでつまずきやすいため、大人になってからADHDに気づく割合は、女性の方が多いとされています。
タイプ2:多動性・衝動性優勢型
「多動性」や「衝動性」による症状が目立ち、「不注意」の症状はあまり強くないタイプです。じっとしていられず席を離れたり、しゃべり過ぎるなど、欲求や感情のコントロールが苦手であることが特徴です。
思ったことをすぐに口にしてしまったり、衝動的な行動によって、周囲との関係がうまくいかず、孤立してしまうことがあります。
こうした困りごとが続くと、こころのバランスを崩し、うつ病や不安障害に発展してしまうことがあるため注意が必要です。
タイプ3:混合型
「不注意」と、「多動性・衝動性」の特徴をあわせ持っているのが混合型です。
ADHDの診断と治療
ADHDの特徴に当てはまったからといって、すぐにADHDと診断されるわけではありません。同じ発達障害のひとつである、ASD(自閉スペクトラム症)の症状ともよく似ており、ADHDと併存することもあるため、診断は慎重に行わなくてはなりません。
ADHDの診断基準は、【不注意】と【多動性・衝動性】の症状をチェックし、どのくらいの期間持続しているかなどの条件に当てはまるかを見ていきます。さらに、問診や心理検査などを行い、医師が総合的に判断します。
ADHDは脳機能の障害のため、完全に治癒することはありません。しかし、「心理社会的治療」や「薬物療法」によって、症状の緩和や、ADHDの症状による困りごとに対処する能力を身につけていくことができます。
早期に治療や周囲がサポートをしていくことで、困りごとによる自尊心の低下や意欲の低下など、二次的問題を防ぐことができます。
また、ADHDでは診断テストも使用されます。具体的には以下の記事で解説していますので合わせて読んでみてください。
関連記事:【ADHDの診断テスト】DSM-5を元にした診断基準を解説
まとめ:正しい理解とサポートが大切
ADHDの主な特徴として、「不注意」「多動性」「衝動性」の3つの具体例をご紹介しました。
「もしかしたらADHDかも?」と思ったら、ADHDの特性をよく理解し、困りごとを少しでも軽減して生きやすくするための対策が必要です。ADHDの症状のあらわれ方は人によってさまざまなため、必ずしも治療が必要というわけではありません。
しかし、症状によって、日常生活や社会生活に困難を抱えているようでしたら、受診をおすすめします。成長とともに環境や状況も複雑になり、困る場面が増えてくると心のバランスを崩し、うつ病や不安障害などになってしまう人も少なくありません。
早期から適切にサポートすることによって、本人の自尊心の低下を防ぎ、社会生活の困難を起きにくくすることができます。少しでもお困りでしたら、ぜひ一度、ご相談ください。
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監修
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【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。
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