適応障害の症状とは?具体的な身体症状、精神症状を解説
春は進学や就職、異動や転職など、環境の変化が多い季節です。そんな時になりやすい病気のひとつに適応障害があります。軽度のものから日常生活に支障がでるほどの重症なものまで、人によって症状はさまざまですが、症状は一過性のものが多いため、なかなか本人が自覚しづらい場合があります。
放っておくと、重症化やうつ病など、他の病気を併発することもあるため、早めの対策が必要です。今回は、適応障害の症状と、治療までの流れについて解説しますので、何か不調を感じている方はぜひチェックしてみてください。
適応障害ってどんな病気?
適応障害は、強いストレスを感じた時にストレスに適応できず、こころや体に不調が出る病気です。特定のストレスが原因と明確なため、そのストレスから離れると、症状が改善するのがこの病気の特徴です。
例えば、仕事に行くと頭痛や吐き気、憂うつな気分でつらいのに、休日になると元気を取り戻して趣味を楽しむことができるなど、症状は一過性で、ストレスがなくなれば6ヶ月以内に回復するとされています。
適応障害については、こちらで詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:適応障害とは?症状・原因・治療法までわかりやすくお伝え
適応障害はどんな症状がでるの?
適応障害の症状には、大きく分けて以下の3つがあります。
- こころの症状
- からだの症状
- 行動面での変化
人によってあらわれる症状はさまざまで、いずれかの症状が目立つか、複数あらわれる場合があります。症状だけ見れば他のどんな病気とも似ているため、「この症状があれば適応障害だ」といった特有のものはみられませんが、よく見られる適応障害の症状の例としてご紹介していきます。
こころの症状
こころの症状は、抑うつや不安症状など、うつ病とよく似ています。憂うつで何をしても楽しめなかったり、やる気が出ないなどの意欲の低下、ストレスに直面したりストレスを感じる出来事について考えると、焦りや緊張、不安を感じ、涙が出てしまうこともあります。
<こころの症状の例>
- 抑うつ
- 不安症状
- 憂うつ
- 喪失感
- 絶望感
- 意欲の低下
- 焦り
- 緊張
- 神経過敏
- 涙もろくなる
からだの症状
からだの症状は、頭痛や吐き気、腹痛など、ひどい場合は活動を制限してしまうため、日常生活に大きく影響していきます。からだの症状が目立つ場合には、適応障害と気づかず内科の受診を繰り返すことも少なくありません。
学校や仕事を休まなくてはならないほどの症状が出てきた場合には注意が必要です。
<からだの症状の例>
- 不眠
- 食欲不振
- めまい
- 動悸
- 吐き気
- 頭痛
- 肩こり
- 腰痛
- 倦怠感
- 疲労感
行動面での変化
適応障害の症状の特徴として、こころやからだの症状だけでなく、行動面にも変化があらわれることがあります。遅刻や欠勤が増えるだけでなく、無断欠勤をするようになったり、飲酒の量が増えるなど、いつもと違う行動を取るようになります。
イライラが強い場合には、怒りっぽくなってしまったり、人によっては攻撃的な言動や行動に出てしまうこともあります。
<行動面での変化の例>
- 人によるが、飲酒や暴食など
- 人によるが、攻撃的になる
初診からの治療の流れ
適応障害は、周囲の理解の不足や、そのつらさが伝わりにくいため、患者自身でさえも「甘え」や「気持ちの問題」と捉えてしまいがちです。
しかし、れっきとした病気のため、治療をすれば改善することができます。当クリニックではどんな治療を行うのか、初診から治療の流れをご紹介します。
まずは、初診でヒアリング
初診でまずは現在の状況についてヒアリングを行います。
ご本人を知るために、生い立ち、強みや弱みをお聞きします。そして、現在どんな環境にいるのか?どんなことにストレスを感じているのか?など、患者さまとのお話しを通じて、なぜそのストレスに耐えられなくなったかの原因を探っていきます。
<主なヒアリング内容>
- 生い立ち(その人自身がどんな人なのか、強み、弱み)
- 現在どんな環境なのか
- 何をストレスと感じるか
心の整理面接で何が足を引っ張っているかを見つける
ヒアリングの次に行うのは「心の整理面接」です。
「心の整理面接」では、患者さまの本当の困りごとは何なのか、どんな悪循環のパターンがあり、何が足を引っ張っているのかを明確にしていきます。
<こころの整理面接の3ステップ>
- 今の困りごと、その経過、仕事、私生活、友人・家族関係、生まれてからのことなどを整理します。
- 今の生活(過去の生活)でストレスを感じた状況やその時の自分の反応を整理します。
- その状況下における考え方や行動のパターンを見つけていきます。
この心の整理面接で、患者さまの今の状態を整理し、これからの治療をよりよく進めていくための、「こころの地図」を作成していきます。
具体的な治療法を見つける
心の整理面接で今の状況を“整理”すると、患者さまの自己理解や、必要な治療の選択肢を絞ることができます。
適応障害の一番の治療法は「原因となったストレスから離れること」です。しかし、すぐに環境が変えられず病気が長引いてしまったり重症化してしまうケースや、環境を変えることができても、本人の悪循環な考え方や行動のパターンによって再発してしまうケースがあるのです。
そのため、対処的な治療だけではなく、適応障害に隠れた問題から、患者さまに合った具体的な治療法を見つけることが大切です。
治療法を練習し、適応できる力を見つける
適応障害の治療法には、薬物療法と精神療法があります。
抑うつ気分や不眠、頭痛が続くなど、症状がつらい場合にはまずは薬で症状を和らげます。しかしこれは対処的な治療のため、根本的な解決にはなりません。
原因となったストレスから離れるための環境の調整とあわせて精神療法を行うことで、ストレスに適応できる力を身につけることができ、再発予防や日常生活をより良く過ごすことができます。
精神療法には認知行動療法と問題解決療法があり、患者さまにあわせて選択していきます。
症状改善のために大事なことはすぐに安心しないこと
適応障害は、誰もが陥りやすい病気ですが、患者さまの5年後の状況を見ると多くの方が治癒しています。しかし、どんな病気にもいえることですが、治療によって症状が良くなったからといって油断は禁物です。
目立った症状が処方された薬によって改善されたり、休職などでストレスから離れたことで症状が改善されたとしても、ご自身の判断で治療を止めるのは絶対にやめましょう。
適切に治療を進めていくことで、目の前のストレスを回避せず、少しずつストレスを受け入れて問題解決ができるようになります。
よりよい治療を進めていくためには、患者さまと医師やスタッフが、一緒に地図を見て、一緒に進んでいくことが大切です。
まとめ
適応障害の症状と治療の流れについて解説しました。
適応障害には以下の3つの症状があります。
- こころの症状:抑うつ、不安症状、憂うつ、喪失感、意欲の低下、焦りなど
- からだの症状:不眠、食欲不振、めまい、動悸、吐き気、頭痛、腹痛など
- 行動面での変化:暴飲暴食、攻撃的な言動や行動など
症状が当てはまるようでしたら、早めに専門医を受診しましょう。
当院の適応障害の初診から治療までの流れです。
- 初診で患者さまを知るためのヒアリングと環境の調節(必要な方には症状を和らげるための薬を処方)
- 何が足を引っ張ってるかを見つける(心の整理面接)
- 具体的な治療法を見つける
- 治療法を練習して、適応できる力を身につける
治療を効果的に進めるためには、“整理”することがとても重要です。あらたまこころのクリニックでは、ひとりでは客観的に状況を整理することが難しいことでも、専門機関で専門的な訓練を受けたスタッフが患者さまの“整理”のサポートをおこないます。
適応障害で悩まれている方や、症状に当てはまる方は、ぜひ一度、ご相談ください。
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監修
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【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。
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