適応障害はどんな流れで回復していくのか。3つの回復期とその過ごし方について。
適応障害は、最近ではよく耳にするようになり、身近な病気になってきました。逆をいえば、日常生活にさまざまにあるストレスの中で、誰にでもなりうる病気なのです。
本人だけでなく、家族や周りの友人など、もしも適応障害になってしまったら?
今回は、そんな時に少しでも参考にしていただけるように、適応障害はどのように回復していくかを解説していきます。
適応障害はどのように回復するの?
適応障害は、特定のストレスが原因で発症するため、まずは、ストレスの対象から離れることが大切です。そのうえで心身を休ませ、調子を整えていくことで、徐々に症状が回復していきます。
適応障害の治療に専念するために、人によっては休職をして、十分に休める環境をつくることも必要な選択です。休職することに悩んでいる方は、ぜひこちらの記事を参考になさってみてください。
関連記事:適応障害で休職してもいいの?と悩んでいる方へ。休職期間中の過ごし方や復職時に気をつけることをご紹介
適応障害が回復に向かう3つの時期とそれぞれの過ごし方
適応障害の回復には、大きく分けて以下の3つの時期があります。
- 休養期
- リハビリ期(回復期)
- 調整期
適応障害は、原因となるストレスがなくなれば6ヶ月以内に回復するとされていますが、「調子がいいからもう大丈夫」と、治療や通院を自己判断で中断するのは危険です。
それぞれの時期の過ごし方を理解しておくことで、回復の遅れや、適応障害の再熱を防ぐことができます。どの時期に、何をしたらいいかのイメージを、事前につかんでおくことが大切です。
休養期
適応障害になったら、まずはストレスの対象から離れて休むことに専念しましょう。ストレスにより心身が疲弊している状態のため、この時期は「何もしない」「動きたい時に動く」といったように、生活リズムを気にせず心身の調子を整えることが大切です。
休んでいることに罪悪感を感じてしまいがちですが、考えごとをせず、ゆったりした日々を過ごしながら、症状の改善を優先しましょう。不安症状や不眠などでゆっくり休めない場合は、一時的に薬で対処する場合もあります。
つらい症状は我慢せず、必ずかかりつけの医師や専門医に相談してください。
リハビリ期(回復期)
心身が安定してくると、徐々に活動の量を増やしていく時期です。まずはストレッチや散歩など、頭より先に体を動かすことからはじめていくことが大切です。
体を動かす際も、翌日に疲れを残さないくらいの負荷で慣らしていきます。自分が「楽しい」と思えることを中心に活動を増やしていくのが良いでしょう。
調子がいいからといって、油断して無理をするのは禁物です。主治医と相談しながら、活動量を増やしていくことが大切です。
調整期
調整期では、十分な睡眠とバランスの取れた食事、適度な活動で、生活リズムを整えていきます。適応障害の発症には、発症に至る行動のパターンや、考え方・物のとらえ方が狭く、固くなっている傾向が認められることが多くあります。
そのため、心身の調子が戻ってきたところで、その人自身の課題に取り組み、生活や仕事に復帰した時に乗り越えていく力をつけていくことが、適応障害を繰り返さない回復の道のりです。
こころの健康を取り戻す3つの「C」とは?
あらたまこころのクリニックでは、こころの健康を取り戻すためのキーワードとして、3つのCという認知行動療法の考え方を取り入れています。
<こころの健康を取り戻すために大切な「3つのC」>
- Cognition:認知
- Control:コントロール感覚
- Communication:コミュニケーション
適応障害の回復で大切なのは、ストレスを乗り越える力を身に着けるための取り組みをしっかり行うことです。生活リズムを整えたうえで、現実の問題と自分の大切にしている価値観とを、柔軟な考え方で受けとめ対処することが大切です。
1)Cognition:認知
ものの受け取り方や考え方のことです。私たちは自分のフィルターを通して、主観的な判断で目の前のものを見ています。
しかし、ストレスが強くなると、ネガティブな考えが頭に浮かぶようになり、必要以上に深刻に考えすぎてしまうこともあります。ストレスに適応したり上手く対処するためには、考え方のバランスが大切です。
2)Control:コントロール感覚
自分がどのような人間で、どのような生き方をしようとしているのかを、自分なりに理解して感情や行動をコントロールしている感覚です。
この感覚を持てるかどうかということは、心身の健康を大きく左右することが、さまざまな研究から明らかになっています。
3)Communication:コミュニケーション
考えを変えたり自分をコントロールしようとしているときに、コミュニケーションが役立ちます。親しい人に話を聞いてもらうだけで、それまでの思い込みから解放されて気持ちが楽になるということは、私たちが日常的に体験していることです。
参考・引用:大野裕著「うつ」を治す P96~152
まとめ
適応障害の回復には、以下の3つの時期があることを解説しました。
- ストレスの対象から離れ、こころと体を休める「休養期」
- 徐々に活動の量を増やしていく「リハビリ期(回復期)」
- 生活リズムを整え、自身の課題と向き合う「調整期」
回復の遅れや再熱を防ぐためにも、どの時期に、何をしたらいいかのイメージを、事前につかんでおくことが大切です。
適応障害になりやすい人は、真面目で責任感が強く、自分より相手を優先するといった傾向があります。無理をして周りに合わせて頑張っていると、踊り場のないラセン階段を上っているようなもので、いつか疲れて力尽きてしまいます。
踊り場で立ち止まって、一息ついて、これまでのワークライフバランスや自分にとって何が大事なのかを見直し、時には向きを変えることが必要です。
適応障害のさまざまな症状は、これまでの無理な生き方を変えるためのサインであり、チャンスになるかもしれません。
関連記事:適応障害とうつ病の違いとは?「原因」「ストレスから離れた時の症状」「期間」の3つのポイントで見分けよう
関連記事:適応障害で休職してもいいの?と悩んでいる方へ。休職期間中の過ごし方や復職時に気をつけることをご紹介
あらたまこころのクリニックでは、患者さまが自信を持って暮らしていくことができる治療を目指しています。適応障害に悩んでいる方は、ぜひ一度ご相談ください。
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監修
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【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。
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