適応障害で休職してもいいの?と悩んでいる方へ。休職期間中の過ごし方や復職時に気をつけることをご紹介
適応障害は、強いストレスにより心身に不調をきたす病気で、仕事を続けることが困難な場合があります。
そんな時には「休職」という選択肢がありますが、
- 休職期間中はどのように過ごしたらいいのか
- 復職した後はどのように働いたらいいのか
など、不安に思われる方も多いかと思います。
そこで今回は、適応障害と休職について、休職中の過ごし方のポイントや復職について大切なことを中心に解説していきます。休職を検討している方や、休職中の方に、少しでも参考になれば幸いです。
適応障害になったら休職しても良い?
適応障害と診断されて、休職を検討する時に、「適応障害で休職しても良いのだろうか?」「甘えていると思われないだろうか?」「周りに迷惑をかけてしまうのではないだろうか?」などと、悩まれる方は少なくありません。
適応障害は、ストレスが解決できたら回復できる病気と言われていますが、ストレスが取り除けず慢性化や重症化してしまうと、うつ病など他の精神疾患を併発してしまう場合があります。
そうならないためにも、適応障害になったら、まずは回復に専念しましょう。ストレスを減らし、治療への専念や心身を休めるためにも、「休職する」という選択は、いい選択です。
休職には医師の診断が必要なため、精神科や心療内科など、専門医を受診します。そのうえで、上司や人事労務担当、産業医などに相談し、休職から復職の手続や流れを確認しましょう。休職する前に、復職の条件を確認しておくと、復職までの手続をスムーズに行うことができます。
休職中の3つの時期と過ごし方
せっかく休職をしても、休職中の過ごし方によっては回復が遅くなり、休職の期間が思ったより長引いてしまうことがあります。いきなり「仕事に行かなくていい」状態になると、毎日をどのように過ごしていいのか、本当に復職できるのか、不安な気持ちが大きくなることも少なくありません。
休職から復職に向けて、「休養期」「リハビリ期」「調整期」と、大きく3つの時期があります。ここでは、それぞれの時期の過ごし方や意識しておきたいポイントをお伝えします。
休養期
適応障害の症状がもっとも強い時期です。まずは、ストレスの対象から離れて調子を整えることが大切です。
心身が疲弊している状態のため、無理に動こうとせず、「何もしない」「寝たい時に寝る」など、「休む」ことに専念しましょう。うつ状態や不安、不眠などの症状からゆっくり休めない場合は、必ず医師に相談してください。症状に合わせて一時的なお薬などで対処することができます。
具体的には休養期には以下のようなポイントを意識しましょう。
- 仕事のメールをチェックしたり業務連絡はしない
- 仕事からしっかり離れて”休む”ことを最優先にする
- 考えごとをせず、ゆったりした日々を過ごす
リハビリ期
休養によって適応障害の症状が少しずつ良くなり、徐々に活動を増やしていく時期です。休養期で体力も衰えているため、まずは散歩やストレッチなど、体を動かすことから慣れていきましょう。
一見安定した状態にも見えますが、ストレスへの敏感さや疲れやすさは残っているため、無理をすると再燃するリスクがあります。
主治医と相談しながらバランスをみて少しずつ活動量を増やし、復職に向けて適応障害の再発防止策やストレスに対する耐性をつけていきましょう。
具体的にリハビリ期では以下のようなポイントを意識しましょう。
- いきなり無理せず、負荷を「翌日に残らない」程度で増やし、慣らしていく
- 自分が楽しいと思えることを中心に活動を増やしていく
- 体が動くようになってから頭を使う活動へと段階を踏む
調整期
休養とリハビリを経て、いよいよ復職に向けて生活リズムを整えていく時期です。心身が安定し、ストレスへの耐性が戻ったうえで、具体的な復職の準備をしていきます。
復職後の適応障害の再発を防ぐためにも、会社と相談のうえ、時短勤務や業務量を調整するなど、無理のない範囲でスタートできる職場環境を調整します。
具体的には調整期には以下のようなポイントを意識しましょう。
- 睡眠のリズムを整えるなど、生活習慣を職場のリズムに戻す
- 通勤の練習や業務に近い内容の練習など、復職後を想定した訓練をする
- 復職後の職場環境や仕事内容など、会社とじっくり話合い復職の準備をする
休職後の復職時に気をつけること
復職が近づくにつれて不安になるのは無理のないことです。適応障害の人によく見られる真面目でがんばり屋といった性格から、「休職した分、挽回しないと」「休職前と同じペースで働こう」と、肩に力が入ってしまいがちですが、病気の療養期間を経ているため、以前のようにできなくても、あたりまえと割り切ることも大切です。
そのうえで、徐々に仕事のリズムに慣らしていくために大切なことを3つご紹介します。
- 規則正しい生活リズムになっている
- ストレス解消法を持っている
- 復職後は無理のないペースからはじめる
規則正しい生活リズムになっているか
休職期間中は「休む」ことに重点を置いているため、睡眠時間が長くなるなど不規則になりがちです。
復職すると、決まった勤務日や時間に継続して就労するため、仕事にあわせた規則正しい生活のリズムに戻す必要があります。以下の点をチェックしてみましょう。
- 昼寝をしなくても日中起きていられるか
- 十分な睡眠のうえ、決まった時間に起きられるか
- 適度な運動で、活動するための体力があるか
- 身だしなみを整えて外出ができるか
- 業務による疲れが翌日には回復しているか
自分に合ったストレス解消法を持っているか
ストレスが原因である適応障害の再発を防ぐためには、ストレスへの対処法を身につけることが必須になります。
復職すると、仕事や人間関係など、社会生活をおこなう上でのストレスを避けることはできません。
自分の考え方のくせを知り、ストレスを乗り越えるための対処法として、趣味や没頭できることなど、ストレスを溜め込む前に解消できる、自分なりの方法を見つけましょう。
具体的には以下のようなストレス解消法などがあります。ぜひ参考にしてみてくださいね。
- イライラしたらカラオケで大声で歌う
- 落ち込んだら美味しいものを食べる
- 気分転換に旅行をする
- 気持ちを切り替えるために運動をして汗を流す
復職後は無理のないペースからはじめる
復職と同時に大切なことは、復職後に再発をさせないことです。そのためには、復帰したからといって、いきなり以前と同じペースに戻すのではなく、無理のないペースからはじめることです。
勤務時間や業務内容など、復職前に会社と十分な話し合いの上で決まったことでも、実際に働き出してみると負担に感じることも少なくありません。
「つらい」と感じた時は、ひとりで抱え込まず、上司や人事労務担当、産業カウンセラーなどに相談しましょう。適応障害の再発を防ぐためにも、無理のないペースで徐々に慣らしていくことが大切です。
休職期間における経済的なサポート
休職する際に確認しておきたいことのひとつに、休職期間中の給与の支払いの有無があります。制度は会社によってさまざまですが、無給であることが少なくありません。
生活の不安を少しでも軽減し、療養やリハビリに専念するためにも、活用できる経済的なサポートを2つご紹介します。
- 傷病手当金
- 自立支援医療(精神通院医療)
傷病手当金
傷病手当金とは、病気やケガのために会社を休み、会社から十分な報酬が受けられない場合に受けることができます。ただし、業務外の理由であることや、会社を休んだ期間、仕事に就けない状態などの受給条件を満たした場合に支給されます。
傷病手当金の申請は、一般的に会社がおこなうため、詳細は会社の人事労務担当者や健康保険の窓口などで確認しましょう。
参考サイト:全国健康保険協会(協会けんぽ)
自立支援医療(精神通院医療)
自立支援医療(精神通院医療)とは、精神疾患の治療を目的とした通院が続く場合に、医療費の負担を軽減してくれる制度です。診察費、薬代、デイケア費などが、一般的に3割負担から1割負担までに軽減されます。
指定された病院・クリニックの診断書などの必要書類を揃え、お住まいの市町村の担当窓口(障害福祉課、保健福祉課)にて申請します。申請が認められると、「自立支援医療受給者証」が交付されます。当院は「指定自立支援医療機関」ですので、何かございましたらぜひご相談ください。
まとめ:休職してでも休養に専念しよう
適応障害になったら、まずは回復に専念しましょう。ストレスを減らし、治療への専念や心身を休めるためにも、「休職する」という選択は大切です。
休職中の3つの期間とそれぞれのポイントは以下の通りです。
- 休養期:ストレスから離れ、「休む」ことに専念する
- リハビリ期:徐々に活動量を増やし、ストレス対処法を獲得する
- 調整期:復職に向けて生活リズムを整え、会社と復職後の職場環境について話し合う
もし症状が良くなっても復職しても、すぐに前と同じペースで仕事をするなどの無理はしないようにしてくださいね。適応障害を再発させないためにも、以下のポイントからはじめていくことが大切です。
- 規則正しい生活リズムになっている
- ストレス解消法を持っている
- 復職後は無理のないペースからはじめる
いずれにしろ、主治医や職場と相談しながら、ご自身にあった復職の形を慎重に判断していきましょう。適応障害で休職に悩まれている方は当院でもお力になれることがございますのでぜひ一度ご相談ください。
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監修
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【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。
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