適応障害が仕事に与える影響や続けるための対処法とは?なりやすい人の特徴からおすすめの仕事までご紹介
適応障害になった人のよくある悩みに、「適応障害で休職してもいいのだろうか?」「仕事は続けたいけど仕事に行くのがつらい」といった悩みがあります。
仕事上のストレスは誰にでもあるため、つらい症状があらわれても「自分の根性が足りない」などと考えてしまい、誰にも相談できずに一人で苦しんでいるケースが少なくありません。
しかし、適応障害は甘えではなく病気です。そのため、仕事に行けない自分を責めるのではなく適切な休職期間をとり療養することも非常に大切です。
今回は適応障害が仕事に与える影響をはじめ、休職や仕事を続けるための対処法、仕事選びのポイントについて解説します。
適応障害で悩まれている方の参考になれば嬉しいです。
適応障害になりやすい人とは?
適応障害は、ストレスが本人の体制を超えたときにあらわれる心身の不調のことです。人それぞれストレスへの耐性は異なるため、一概になりやすい人という括りはできませんが、以下のような人は適応障害になりやすい傾向があると考えられます。
- 真面目で責任感が強い
- 几帳面で物事を徹底的にやらないと気が済まない
- 他人の目や評価が気になる
- 人から頼まれると断れない
- 心配症で傷つきやすい
- 気持ちの切り替えが苦手
- 人に頼るのが苦手で何でも自分で解決しようとする
- 繊細で変化に敏感
- 完璧主義で物事を白黒はっきりさせたい
- 自分より他人を優先してしまう
- 空気を読むのが苦手
これらに当てはまれば必ず適応障害になるというわけではありません。適応障害になりやすい人の特徴や仕事や生活で起こりやすいケースについては「適応障害になりやすい人ってどんな人?特徴やよくあるケースまでお伝え」の記事でも解説しています。合わせて読んでみてください。
適応障害が仕事に与える影響とは?
適応障害は、過度なストレスに対応できずに起こる病気です。就職、異動、進学、結婚や離婚など、きっかけは人によってさまざまですが、変化への適応の難しさによるストレスが原因とされています。
適応障害になると、精神面、身体面、行動面での変化があらわれるため、仕事に影響をおよぼすことがあります。
具体的には、憂うつな気分が続くだけでなく、思考力や集中力の低下、漠然とした不安などの症状から、今までしなかったような仕事のミスをするようになったり、食欲不振や不眠、頭痛や腹痛、倦怠感などの仕事を休まなくてはならないほど、つらい身体症状があらわれる場合もあります。
また行動面では、人によっては暴言を吐くなど、攻撃的になってしまうこともあります。そのため、職場での人間関係がスムーズにいかなくなったり、無断欠勤といった行動にもあらわれるめ、適応障害が仕事に与える影響は少なくありません。
適応障害に仕事でなるケースとは?
仕事で適応障害になった場合には、どのようなケースがあるのでしょうか?
適応障害は、ストレスが原因であるため、仕事上での何らかの出来事や環境が、本人にとって苦痛なほどストレスになっていることになります。
一般社員と、部下がいる管理職では状況が異なるため、それぞれのケースに分けてご紹介します。
一般社員の方の場合
一般社員の場合、上司との相性や、業務内容の適性、職場の人間関係が、主なストレスの原因となります。
また、学生から社会人になったばかりの就職による環境の変化や、転勤、異動による環境の変化も心理的負担になることがあります。
仕事面では、能力以上の仕事を任されたり、業務量が多く誰からのサポートを受けられない場合に、特に責任感が強く真面目な人は、ひとりで頑張ろうと無理をしていまい、適応障害を発症してしまうことが少なくありません。
具体的には以下のような状況により、発症することがあります。
- 上司や同僚との人間関係があわない
- 業務量が多く休めない
- 業務内容が性格や能力に合っていない
- 能力以上の仕事を任されている
- 就職や転勤による環境の変化
- パワハラやセクハラで苦しんでいる
管理職などの部下がいる人の場合
管理職の場合は、より求められる責任が大きくなると同時に、部下のマネジメントや意思決定など、仕事内容が大きく変わるため、その変化に対応できずに適応障害になるケースがあります。
今まで現場で成績もよく順調にやれていたのに、マネジメントがうまくいかず思った成果があげられないなど、責任が大きい分プレッシャーや責任感もより一層強くなり、ストレスも感じやすくなります。
管理職になると、その立場によって孤独になりがちです。誰にも相談できず、一人でトラブルを抱え込んでしまい、適応障害を発症してしまうケースもあります。
具体的には以下のような状況により、発症することがあります。
- 部下とのコミュニケーションがうまくいかない
- 重大な意思決定を任されている
- 大きな成果を求められている
- 過剰な期待をよせられている
- 会社の方針と意見の食い違いがある
適応障害で仕事を休職してもいいの?
仕事が原因で適応障害になった場合、仕事に行くことが苦痛に感じてくるようになります。無理に会社に行ったとしても、こころや体にさまざまな症状があらわれるため、仕事が手につかなかったりミスが増えたり、身体的に仕事を続けることが困難になってくることがあります。
しかし、これらのつらさは周囲の人には理解されにくいことが多いため、自分自身も「甘え」や「気持ちの問題」として、いっそう頑張ろうと無理をしてしまい、重症化や二次障害をひき起こしてしまうことも少なくありません。
適応障害は「甘え」などではなく、れっきとした病気です。原因はストレスと明確なため、仕事が原因でストレスを感じているのであれば、仕事と距離を取ることが回復のカギになります。
そのため、休職して悪いことはありません。しっかり原因と距離を取ることで、早めの回復が見込めます。
適応障害でも仕事を続けるための対処法
適応障害を抱えながら仕事を続ける選択もあります。適応障害でも仕事を続ける場合は、症状を無視したり、がまんをして無理を続けることはやめましょう。その上で、適応障害でも仕事を続けるための対処法を4つ、ご紹介します。
- ストレスの原因を明らかにする
- 環境を調整する
- 自分に合ったストレス対処法を見つける
- 周りに相談する
対処法1:ストレスの原因を明らかにする
適応障害はうつ病などとは異なり、原因がはっきりとしたストレスであることが特徴です。そのため、そのストレスとなった出来事や、ストレス原因を特定することがまず大切です。
「仕事がつらい」「仕事に行きたくない」など、こうした感情をないがしろにせず、感情と向き合って何がそう思わせるのか理由を分析することが大切です。
理由を特定することで、ストレスの対処法がより具体的になるため、適応障害と上手く付き合いながら働くことができます。
対処法2:環境を調整する
適応障害は、原因となったストレスから離れる、またはストレスを取り除くことが大事です。そのため、周囲の環境を調整し、ストレスから離れる環境を整える必要があります。
仕事の場合、業務内容や業務量を調整してもらえるよう上司に相談する、人間関係の場合、席の配置を変えてみる、業務内容が適性とあわない場合は、異動を願い出るなど、可能な範囲で行いましょう。
自分の適性や長所にあった仕事に転職する選択もあります。
対処法3:自分に合ったストレス対処法を見つける
適応障害は、ストレスに対処できずに発症する病気です。そのため、自分に合ったストレスの対処法を見つけることで、ストレスを乗り切ることができます。
仕事の休憩時間はしっかり切り替えて十分な休息をとる、休日は仕事を忘れて好きな趣味に没頭したり、外で気分転換をするなど、自分なりのストレスを発散できる方法を身につけましょう。
体とこころが良い状態であるためには、生活環境や生活習慣が整っていることが大切です。バランスのいい食事やしっかり睡眠をとる、運動をするなど、普段の生活習慣から見直してみると良いでしょう。
対処法4:周りに相談する
適応障害の人に多いのが、一人で悩んで、抱え込んでしまうことです。誰かに相談したり、助けをを求めることは、決して恥ずかしいことではありません。
誰かに話をすることで、気が楽になることもあります。人間関係が原因で上司や同僚に相談できない場合は、産業医やカウンセラーを利用しましょう。
また、適応障害の症状が長引くと、慢性化したり重症化するだけでなく、他の精神疾患に発展する可能性もあります。症状にお悩みの場合は、早めに精神科や心療内科などの専門医を訪ねましょう。
適応障害の人に向いている仕事とは?
ここまでは適応障害の人のストレスへの対処法や仕事に与える影響などを解説してきました。
逆に適応障害の人に向いている仕事にはどんな仕事があるのでしょうか?具体例を用いてご紹介します。
適応障害の人は、真面目で完璧主義といった特性を持った人が多いようです。そのため、コツコツと自分のペースで進めることができる仕事が向いているといえます。
仕事内容が頻繁に変わる仕事よりも、定型化された仕事がおすすめです。具体的には以下のような仕事があります。
- データ入力
- 経理
- 工場のライン作業
- 清掃員
- 警備員
また、人間関係にストレスを感じやすい場合は、個人の範囲でできる業務がおすすめです。具体的には以下のような仕事があります。
- システムエンジニア
- WEBライター
- WEBデザイナー
- ゲームクリエーター
- カメラマン
- 在宅ワーク
しかし、上記はあくまでも一例ですので、ご自身の特性やストレスの傾向にあわせて仕事を選ぶことが大切です。そのためには、どんな環境、きっかけが、自分にとってのストレスになるのかを把握したうえで、仕事選びをしましょう。
まとめ:適応障害は甘えではありません
今回の記事では、適応障害が仕事に与える影響についてご紹介してきました。
- 今までしなかった仕事のミスをするようになる
- 体の不調により仕事を休むようになる
- 人間関係がスムーズにいかなくなる
- 無断欠勤をする
このような変化があらわれた場合は、要注意です。仕事が原因でストレスを感じているのであれば、「休職する」のもひとつの選択です。
適応障害で仕事を続ける場合は、以下の対処法を意識してみてください。
- ストレスの原因を明らかにする
- 環境を調整する
- 自分に合ったストレス対処法を見つける
- 相談する
「誰にも相談できない」「症状に苦しんでいる」など、適応障害でお困りの方は、ぜひ、一度ご相談ください。仕事との距離の取り方や、治療法など、あなたに合った解決法を一緒に見つけていきましょう。
関連記事:適応障害になりやすい人ってどんな人?特徴やよくあるケースまでお伝え
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監修
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【出身校】名古屋市立大学医学部卒業
【保有資格】精神保健指定医/日本精神神経学会 専門医/日本精神神経学会 指導医/認知症サポート医
【所属】日本精神神経学会/日本うつ病学会/日本嗜癖行動学会理事/瑞穂区東部・西部いきいきセンター
【経歴】厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー(指導者)の経験あり。2015年より瑞穂区東部・西部いきいきセンターに参加し、認知症初期支援集中チームで老人、高齢者のメンタル問題に対し活動を行っている。日本うつ病学会より「うつ病の薬の適正使用」のテーマで2019年度下田光造賞を受賞。
【当院について】名古屋市から、「日本精神神経学会から専門医のための研修施設」などに指定されている。
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