認知症
DEMENTIADEMENTIA
2025年には65才以上の5人に1人が
認知症になると推測されています
脳の疾患や加齢などによって脳の働きが低下することにより、もの忘れや感情の起伏が増す傍ら、物事への興味・関心がなくなるなどの症状を引き起こす状態のことを認知症といいます。加齢とともに罹患率は急増し、60才の罹患率は約1%ですが、75才から急増し、85歳では約27%に達します。65歳以上の認知症患者は、2025年には700万人(5人に1人)に達すると推定されています。
認知症の中では「アルツハイマー型認知症」が最も多く、その前段階には軽度認知機能障害(MCI)があり、一見、MCIは加齢によるもの忘れに見えますが、年間で約12%、6年後には約80%が認知症へ進展します。憂うつ気分、外出を嫌がる、気力がなくなる、被害妄想、外で迷子になる、お金の勘定ができないなどの症状が起きます。海外の研究では、軽度認知機能障害を早期発見し、早期に治療介入することで発症を5年遅らせれば患者数は約50%減、10年遅らせれば約75%減らすことができるというデータもあります。
また、一見すると認知症に見える「仮性認知症」が予想外に多く紛れ込んでおり、治療することが可能です。「もの忘れ専門外来」を受診する方の約2割が認知症ではなく実はうつ病であったり、内科薬や睡眠薬など薬を6種類以上服用されている夛剤服薬(ポリファーマシー)のために認知症に似た状態になる方が2〜3割います。処方薬を整理するだけで元気に改善できることが多いため、しっかり見分けることが重要です。
認知症とうつ病の鑑別 DISCRIMINATION
高齢者のうつ病(仮性認知症)
認知症(アルツハイマー型)
-
発症
人間関係や大病などの
きっかけがあることが多いいつの間にか、ゆっくり発症
-
初期の症状
不眠
食欲低下
もの忘れ
-
もの忘れの
訴え方もの忘れの不安が強い
最近の記憶と昔の
記憶の差がない自覚がない
最近の記憶を忘れる
昔の記憶は比較的良好
-
問いかけへの返答
分からないと答える
つじつまを合わせようとする
話を作る(作話)
-
日常生活
記憶障害だけが強い
記憶障害と一致して困難
-
日内変動
朝に気分が良くない
時間による変動はない
認知症(アルツハイマー型)
-
発症
人間関係や大病などの
きっかけがあることが多いいつの間にか、ゆっくり発症
-
初期の症状
不眠
食欲低下
もの忘れ
-
もの忘れの
訴え方もの忘れの不安が強い
最近の記憶と昔の
記憶の差がない自覚がない
最近の記憶を忘れる
昔の記憶は比較的良好
-
問いかけへの返答
分からないと答える
つじつまを合わせようとする
話を作る(作話)
-
日常生活
記憶障害だけが強い
記憶障害と一致して困難
-
日内変動
朝に気分が良くない
時間による変動はない
こんなお悩み
ありませんか?
次のような症状は、
認知症の可能性があります
-
最近のことを忘れるが、昔のことはよく覚えている
家や駅などの場所がわからなくなる
人の名前を覚えられない、思い出せない
銀行通帳や財布など大事なものがなくなったと困る
予定があることを忘れ、二重で入れてしまう
-
睡眠リズムが乱れ、昼間によく寝て夜は起きている
好きなことに対する興味がなくなった
ドラマや小説などのあらすじを理解できなくなった
コンロを使っていたことを忘れ、火をつけっぱなしにしてしまう
物が盗られたと家族を疑う
当院での治療法 -TREATMENT-
認知症の治療法は、認知症を引き起こす原因となった病気や、症状の進行度合などによって異なります。特に、アルツハイマー型認知症は逆向性健忘とも呼ばれ、物事を新しい順に忘れていくため、過去の記憶を頼りに周りを見てしまうことで、自分がどの時間軸にいるのかがわからなくなり混乱していきます(見当識障害)。こういった認知症患者様の中にあるルールのようなものを理解することで、患者様本人だけでなく、家族の方の不安や苛立ちも軽くなります。
当院では、まず、ご本人やご家族の要望をお聞きした上で最適な治療法を実践していきます。
-
薬物療法
薬物療法
認知症は、認知症状の進行を遅らせる処方薬や、不安や妄想、不眠などの症状を抑えるための処方薬による治療を行なっていきます。
これらの処方薬は、記憶障害そのものを改善できるわけではありませんが、進行を少なくとも1年間程度遅らせることができるといわれています。イライラした感情を抑え、気持ちをおだやかにする働きがある薬を処方することで、患者様の感情が安定し、介護するご家族や周りの方にも余裕が生まれ、意思疎通が良好となることで認知機能の改善も期待できます。 -
精神療法
精神療法
当院では、現在、通院されている病気や服用されている処方薬をチェックし、医師の指示どおりに服薬できていなかったり、6種類以上の薬を服用されている多剤服薬(ポリファーマシー)の可能性がないかを確認します。薬を整理しただけで認知症が改善するケースも珍しくなく、認知症治療においては、まず最初に処方薬のチェックを行うことが大切です。
また、当院の院長である加藤正は、認知症サポート医として認知症初期集中支援チームに関わり、名古屋市瑞穂区地域包括支援センターと連携し、地域や家族の相談事業に携わっています。患者様やご家族の要望をお聞きした上で、いきいき支援センターなどの地域のサポート資源を最大限活用しながら、患者様の最適な治療とご家族のサポートを進めていきます。
ご家族・周囲の方へ -FAMILY-
認知症の患者様は、私たちから見ると不可解な行動でも、患者様本人なりの理由や思いがあります。認知症の患者様の中にある心のルールを理解したり、地域のサポート支援とつながることで、介護する側の家族や周囲の方が肉体的・精神的に余裕を持つことが大切です。患者様の失敗は、できるだけ指摘せずにさりげなくサポートしましょう。ご本人のプライドや価値観を尊重し、笑顔で接するだけでも、認知症の症状は改善します。
認知症は、本人では気が付きにくく、「ただ忘れっぽい性格なだけ」と思い込んでしまうことにより、悪化してしまうケースも少なくありません。また、早期発見・早期対応により、症状の進行を抑えることも可能なため、身近なご家族や周囲の方がいち早く変化に気づき、診療を促すことが大切です。
認知症を発症している場合は、次のようなサインを発するため、「以前と様子が違う」「なんだか変だ」と感じた場合は、当院へご相談ください。
認知症の人が発するサイン
- 財布や物を置いた場所が分からなくなった
- 昔のことはよく覚えているが、少し前のことを忘れるようになった
- 家や駅などの場所が、わからなくなった
- 今日が何月何日か分からなくなった
- 昼間によく寝て、夜は起きているようになった
- 好きなことに対する興味がなくなった
- 料理やドラマや小説などのあらすじを理解できなくなった
- コンロの火をつけっぱなしにしてしまうようになった
- 物が盗られたと家族を疑うようになった