躁うつ病(双極性障害)
BIPOLAR DISORDERBIPOLAR DISORDER
躁うつ病は、うつ状態と躁状態を
繰り返す病気です
躁うつ病(双極性障害)の多くは、20才頃からうつ状態と躁状態を繰り返し、人生の長い期間付き合うことになりやすい病気です。双極性障害1型と2型があり、症状は似ていますが、別の病気です。特に双極性障害2型は、症状がうつ状態から始まって長期間続くと、うつ病と見分けがつきません。また、抗うつ剤の効果が悪く、つらいうつ状態が続くことで「治りにくいうつ」と間違えられることがあり、躁状態が現れてから、初めて躁うつ病(双極性障害2型)と診断がつきます。躁うつ病は、うつ状態が先に発生(顕在化)することが多く、その時に病院に行ってもうつ病と診断されます。その後、躁状態が現れることで初めて躁うつ病と診断されることが多く、躁うつと診断されるまでに平均10年くらいかかると言われており、適切な治療を受けにくいところが患者様にとってもつらい病気です。
現に、初診でうつ病と診断された方の2〜3割が、後に、診断が躁うつ病に変わったという報告もあります。また、躁うつ病は、パニック障害や社交不安障害(あがり症)、強迫性障害、アルコール依存症、摂食障害、発達障害などの合併症も多いため、適切な診断と治療が必要です。
躁うつ病の
1型と2型の違い
THE DIFFERENCE
双極性障害1型(躁うつ病)
双極性障害2型(躁うつ病)
-
発症
男女に差はない女性に多い -
うつ状態
重症度はうつ病と同じ
重症度はうつ病と同じ
うつ状態の期間が長い
抗うつ剤の効果が低い
-
躁状態
入院が必要になるほど重い
躁の症状がはっきりわかる
炭酸リチウムが躁状態にも
うつ状態にも効果的1型よりも軽い
軽躁の症状が見逃されやすい
炭酸リチウムが効きづらい
-
発症時
うつ状態と躁状態が半々
多くはうつ状態から始まる
-
合併症
アルコール依存症など
パニック障害
社交不安障害(あがり症)
アルコール依存症
摂食障害・過食症
ラピッドサイクラー
-
治療方針
躁うつ状態に対する薬物療法と
治療教育と再発予防の3本柱長いうつ状態と合併症の治療
安定した対人関係等を練習
双極性障害2型(躁うつ病)
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発症
男女に差はない女性に多い -
うつ状態
重症度はうつ病と同じ
重症度はうつ病と同じ
うつ状態の期間が長い
抗うつ剤の効果が低い
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躁状態
入院が必要になるほど重い
躁の症状がはっきりわかる
炭酸リチウムが躁状態にも
うつ状態にも効果的1型よりも軽い
軽躁の症状が見逃されやすい
炭酸リチウムが効きづらい
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発症時
うつ状態と躁状態が半々
多くはうつ状態から始まる
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合併症
アルコール依存症など
パニック障害
社交不安障害(あがり症)
アルコール依存症
摂食障害・過食症
ラピッドサイクラー
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治療方針
躁うつ状態に対する薬物療法と
治療教育と再発予防の3本柱長いうつ状態と合併症の治療
安定した対人関係等を練習
こんなお悩み
ありませんか?
次のような症状は、
躁うつ病の可能性があります
-
人が変わったように気分が高揚する
怒りっぽく不機嫌になる
眠らなくても活動できる
自分が偉くなったように感じる
買い物やギャンブルに熱中する
何をしても楽しめなかったり、集中できない
-
憂うつで涙が出る
人と話すのが苦痛で、休日一人で過ごすことが多くなった
自分はダメだと責めたり、「死にたい」と思う
なかなか寝付くことができない
当院での治療法 -TREATMENT-
双極性障害1型(特に初めての躁状態)の場合、患者様本人は病気とは思っていないため、放置してしまうことで長年培った信頼や社会的な地位を失い、人生に大きなダメージを与えることがあります。そのため、双極性障害1型の躁状態の急性期は、専門医療機関での入院治療が勧められます。
躁うつ病の大変さは再発率の高さにあり、治療によって症状が落ち着いてきたら、しっかりと再発予防を行うことが大切です。再発を防ぐ大切な3本柱は、①服薬を中断しない、②対人関係のストレスを溜めない、③不眠など生活リズムの乱れに対処することです。当院では、この3本柱を中心に薬物療法を行います。
特に双極性障害2型は、長く続くうつ状態の治療が最大の課題であり、「難治性うつ病」「治療抵抗性うつ病」「治りにくいうつ病」などと呼ばれ、適切な治療計画と薬が処方されないまま処方薬が大量になる例も多々見受けられます。
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薬物療法
薬物療法
躁状態の急性期は、薬を処方することで安定してきます。炭酸リチウムは躁状態の治療にとても有効ですが、副作用などに注意しながら薬を有効濃度に維持する必要があるため、必ず「トラフ法」という方法で血中濃度を測定することが必要です。
躁うつ病の治療は、処方薬が多剤多量になりやすいため、上記の3本柱に則って薬の処方量を調整します。躁状態には有効な薬が多くありますが、うつ状態(特に双極性障害2型のうつ状態)の症状は患者様によって異なるため、目先の症状に振り回されて多剤大量の薬を処方することがないように、しっかりと治療方針を立てることが大切です。
なお、当院の院長である加藤正は、抗うつ薬の適正使用をテーマとした論文を発表し、2019年に日本うつ病学会から「下田光造賞」を受賞しています。 -
精神療法
精神療法
躁うつ病の治療においては、まずは、双極性障害という病気を受け入れることが大切です。「躁うつ病の大変さは再発しやすいところにある」ということを患者様が理解し、再発防止に向けた治療に取り組みます。
躁うつ病は、ストレスや不眠といった生活リズムの乱れなど、日常的なできごとがきっかけになって発症します。日本うつ病学会も推奨する「対人関係社会リズム療法(IPSRT)」などが効果があるとされているように、社会リズムを規則的に整えて対人関係ストレスを減らし、患者様が社会的役割の変化にスムーズに適応することが大切です。
ご家族・周囲の方へ -FAMILY-
躁うつ病は、うつ状態と躁状態を繰り返します。躁状態の時は、ハイテンションになるだけでなく、人が変わったように気が大きくなったり、眠らなくても活発に活動できるようになったり、ご家族や周囲の方を激しく罵倒したりしますが、患者様本人にはあまり病気の自覚がありません。逆にうつ状態の時は、憂うつで涙が出るほど落ち込み、このうつ状態に陥るときは自殺のリスクもあります。
患者様本人にとってはこのうつ状態がつらく、ご家族や周囲の方にとっては逆に躁状態の方がつらいため、病気に対する考え方にギャップが生じ、患者様は躁状態を軽視しがちで、ご家族や周囲の方はうつ状態を軽視しやすい傾向があります。ご家族や周囲の方が患者様と病気についてしっかりと話し合い、躁状態もしくはその前兆をしっかりと見極めて、早急に専門家の治療を受けることが大切です。
躁うつ病を発症している方は、次のようなサインを発するため、「以前と様子が違う」「何だか変だ」と感じた場合は、当院へご相談ください。
躁うつ病の人が発するサイン
- 人が変わったように周囲の人を罵倒するようになった
- 大きな買い物やギャンブルで散財するようになった
- 怒りっぽく不機嫌になる
- 寝ていないのに活発に活動している
- 夜になってもなかなか眠れていない
- いつもぼんやりしていて表情が暗い
- 日頃からイライラして、落ち着きがない
- 以前よりも涙もろくなった
- 仕事や家事などの作業が遅い、または些細なミスが増えた
- 会社を遅刻・欠勤することが増えた